これからの経営者に求められる資質
これからの経営者に求められる資質は、「本質を見抜く力」「変化への柔軟性」「イノベーションの気概」「ビジョンを掲げる力」。一方で、「本質を見抜く力」、「イノベーションの気概」、「ビジョンを掲げる力」を自身の強みとしている役員・経営幹部は約0.5割~約1.5割にとどまる。
これからの経営者に求められる資質として28項目を提示し、特に重要であると思われるもの、自身の強みであると思われるものにつき、それぞれ3つを選択してもらった。
【図3-(1)】これからの経営者に求められる資質として、特に重要であると思うもの/自身の強みであると思うもの(上位10項目)(3つまで選択)
【図3-(1)】のとおり、特に重要であると思われる資質の第1位は「本質を見抜く力」(43.8%)、第2位は「変化への柔軟性」(30.6%)、第3位は「イノベーションの気概」(27.8%)となった。
これらの上位3項目は、昨年度の調査においても同様に第1位から第3位となっており、経営者として普遍的に求められる資質だといえそうだ。
【図3-(2)】役職別のこれからの経営者に求められる資質として、特に重要であると思うもの(上位5項目)(3つまで選択)
【図3-(2)】では、役職別に上位5項目を整理している。社長の回答では、「ビジョンを掲げる力」(38.1%)が第2位にランクインし、その回答率も全体の25.0%と比較して高い水準となっていた。
経営トップの視点からは、環境変化の激しい時代において、これからの経営者には、上記の3項目と同様に「ビジョンを掲げる力」も非常に重要な資質だと考えられているようだ。
【図3-(3)】これからの経営者に求められる資質として、特に重要であると思うもの/自身の強みであると思うもの(全項目)(3つまで選択)
また、自身の強みであると思う項目では、「本質を見抜く力」、「イノベーションの気概」、「ビジョンを掲げる力」で、自身の強みであるとの回答比率が低く、重要度との乖離(ギャップ)が大きい結果となった(それぞれ27.8%、18.2%、19.4%)。
一方、「論理的思考力」「人への興味・愛情」「国際的経験」「楽観性」などの項目は、これからの経営者に求められる資質としての重要度が低いものの、自身の強みであるとの回答比率が高くなっている。【図3-(3)】
上記の結果から、これからの経営者として求められる資質の多くは、従来の延長線上では身につけることが難しいものであると考えられる。そのため、意図的に強みとして身につけるための機会を用意することが必要だといえる。
強みとして身につけるための機会として、海外やグループ会社での経営を担うなどのタフアサインメントの経験や日常から他業界の経営者や経営幹部と交流する他流試合を行うケースがある。
役職就任前に身につけておけば良かった知識・スキル
現在の役職に就任する前にもっと身につけておけば良かったと思う知識やスキルの第1位は「会社法・税法などに関する法律知識」、第2位は「財務・会計に関する知識」。
また、これらの知識・スキルについて、「既に身につけている」との回答は約1割~約2.5割にとどまる。
【図4】経営者に必要な知識やスキルとしてもっと身につけておけば良かったもの/既に身につけているもの
経営者として必要と思われる知識やスキルに関して、就任前にもっと身につけておけば良かったもの、既に身につけているものを尋ねたところ、もっと身につけておけば良かった知識やスキルの第1位は「会社法・税法などに関する法律知識」(67.3%)、第2位は「財務・会計に関する知識」(65.1%)となった。また、既に身につけているとの回答比率は、それぞれ13.0%、26.9%だった。【図4】
上記の結果から、現在の役職に就任前に準備が不十分だっただけではなく、就任後にも身につけることが難しい知識・スキルであることが推察できる。
なお、この項目は昨年度の調査においても同様に第1位、第2位となっており、経営者として必須知識だといえそうだ。そのため、経営幹部候補の頃から時間をかけて計画的に習得することが望ましいと考えられる。
また早急な知識装備として外部研修を活用するケースも見られる。
卓越した経営者であると思われる人物
【図5】卓越した経営者であると思われる人物(上位10人)
もっとも卓越した経営者であると思う人物1名を挙げてもらったところ、第1位は松下幸之助氏(44票)となった。以下、第2位に稲盛和夫氏(43票)、第3位 スティーブ・ジョブズ氏(17票)、第4位 本田宗一郎氏(12票)、第5位 渋沢栄一氏(10票)の順となっている。【図5】
「トップマネジメント意識調査2023」実施概要
調査期間/2023年6月8日(木)~10月27日(金)
調査対象/2上記期間内に開催したJMAのトップマネジメント研修の受講者
調査方法/2質問紙法(研修初日に配布し、終了時に回収。オンライン参加者は後日メールにより提出)
回答数/2324名
構成/清水眞希