一般社団法人日本能率協会(JMA)は、社会や経営環境の変化が激しい時代において、組織の先頭に立って変革を牽引していく経営者として認識すべき経営課題や、これからの経営者に求められる要件、経営者・役員のためのトレーニングのあり方等を明らかにすることを目的に、JMAが開催している役員・経営幹部向け研修プログラムの受講者を対象として、『トップマネジメント意識調査2023』を実施。結果をグラフと図表にまとめて発表した。
経営の見通し・経営戦略への影響が想定される関心が高い項目
今後の日本の産業界および自社の競争力・成長に対する評価では「不安」が「自信」を上回る。そのような中で、経営戦略への影響が想定される関心が高い項目の第1位は「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」であり、「デジタル技術の活用、DXの推進」を抑えてトップとなる。
【図1ー(1)】日本の産業界の今後の国際競争力・持続的成長/自社の今後の成長や競争力への自信 (n=321)
日本の産業界の今後の国際競争力・持続的成長、ならびに、自社の今後の競争力・成長に対する評価を尋ねたところ、日本の産業界の今後の国際競争力・持続的成長については、「不安である」の合計(「やや」~「かなり」)が約8割に達した。
また、自社の今後の競争力・成長についても「不安である」の合計が過半数となっている。【図1-(1)】
【図1-(2)】自社の今後の成長や競争力への自信(業種別)
業種別の回答を確認すると、大きく製造業と非製造業では、いずれも自社の今後の競争力・成長に対して「不安である」の合計が過半数近くとなり、同様の傾向であることがわかる。【図1-(2)】
多くの役員・経営幹部が、今後の日本の産業界および自社の成長に対して厳しく捉えているようだ。
【図1-(3)】今後の経営戦略に影響すると想定される項目についての関心度合い
このように今後の先行きが不安な中で、今後の経営戦略に影響すると想定される項目についての関心度合いについても尋ねた。その結果、「大いに関心がある」との回答率の高い第1位は「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」、第2位「デジタル技術の活用、DXの推進」、第3位「テクノロジー動向の把握と対処」となった。【図1-(3)】
昨年度と比較すると、「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」(昨年度第2位)と「デジタル技術の活用、DXの推進」(昨年度第1位)の順位が入れ替わる結果となった。
この1年間で内閣官房による「人的資本可視化指針」の公表(2022年8月)や有価証券報告書における人的資本、多様性に関する開示の義務化(2023年3月期より)等の人的資本をめぐる動向があった。こうした背景もあり、役員・経営幹部にとって「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」に対する関心が高まっていると考えられる。