1月14日の初戦・ベトナム戦から幕を開けたアジアカップ2023(カタール)。92年広島、2000年レバノン、2004年中国、2011年カタールと過去4度アジア王者に輝いている日本代表は5度目の戴冠に挑むことになる。
同大会の日本戦全試合のパブリックビューイングを大々的に実施する場所が東京都内にある。12月23日に東京ドームシティ・クリスタルアベニュー内にオープンしたJFAサッカー文化創造拠点『Blue-ing!』。日本サッカー協会(JFA)肝入りの施設である。
コア層からライト層まで楽しめる充実の展示内容
JR・都営地下鉄の水道橋駅、東京メトロ・後楽園駅、都営地下鉄・春日駅など複数駅からアクセスできる同施設は、有料ゾーン「DISCOVERY」、大型ビジョンを備えた人口芝生エリア「PARK」、飲食エリア「CAFE&BAR」、代表グッズなどが置かれる「SHOP」の4領域から構成される。
特に力が入っているのが「DISCOVERY」。JFAは昨年6月まで本拠を置いていた旧JFAハウス内に日本サッカーミュージアムを設置。そこに過去の代表関連の展示品などが数多く収蔵されていた。その一部を移し、さらに新たな展示物も用意。カズ(三浦知良=UDオリヴェイレンセ)、中田英寿、本田圭佑、三笘薫(ブライトン)といった看板ビッグスターのユニフォームが掲げられるなど、ライト層も楽しめる内容になっている。
さらに目玉と言えるのが、筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター長・落合陽一氏監修の体験型コンテンツとデジタル展示。選手のポジションに入って実際にプレーしている感覚を味わえたり、選手目線でサッカーを見る体験ができたり、ボールやトロフィーを3Dで立体的かつより鮮明に見ることができるなど、最新テクノロジーを駆使した空間を堪能できるのだ。
「旧JFAハウスの売却に伴って、併設されていたミュージアムもクローズすることになったのですが、新たなミュージアムを作ろうとすると5~10年はかかります。そこで今回の『Blue-ing!』を創るに当たって実物展示数を絞り込んで残し、落合先生の協力を得ながら、サッカーの未来を感じられる設計を進めることになり、現在に至っています。
実際、デジタル技術を使えば旧ミュージアムの収蔵品を数多く取り込むことが可能。今後、その数を増やしていく方向です。体験型コンテンツのブラッシュアップやリニューアルも徐々に進めていく計画になっています。
オープンから半月ほどが経過し、実物展示を見た方からの反響の大きさ、インパクトの大きさも再確認したので、そちらも充実させることを考えていくつもりです。この施設は『何がベストかを検証する場』でもあるので、多くの方にご意見をいただきながら、よりよい形を追求していきたいと思っています」と同施設の企画立案から携わってきたJFA戦略企画部の岡村諭シニアオフィサーは前向きに語っていた。
有料ゾーンの料金は大人1800円、中高生1500円、小学生800円、未就学児無料。ただし、JFA公式アプリ「JFA Passport」をダウンロードして会員になれば、大人300円・小中校生は200円オフになる。
落合氏は12月21日の開業イベント時に「映画1回分」と話していたが、「それでも大人550円だった旧ミュージアムに比べると高い」という声も報道陣や関係者から聞こえてきた。
これに対し、岡村氏は「狙いや展示内容がこれまでのミュージアムとは違いますし、新たな感覚を提供する場」だと強調する。
「東京ドームシティ周辺のアミューズメント料金なども比較検証しましたが、アトラクションズのジェットコースターが1500円、フリーパスが4200円。東京タワーにある同種の施設であるRED TOKYO TOWERなどと比べてもそこまで高くない設定にしています。JFAと東京ドームシティの運営主体である三井不動産が街づくり協定を結んでいて、一緒に『Blue-ing!』の設置を進めてきたこともあり、通常よりも割安の賃料でスペースを借りられていることも大きいと思います」と岡村氏は説明する。
確かに前例のないデジタル体験ができるという意味では、足を運んでトライしてみるのも一案だ。一方でJFA側も、2度3度と通ってくれる顧客を増やすべく、内容面の充実を図っていくことが肝要だろう。実際に、旧ミュージアムのような大会成績の展示、特別企画展などを計画。多彩な顧客層をイメージしたイベントやスタグルフェア、トークイベントなどの実施も視野に入れているという。
「有料エリアの集客目標は、平日が1日最低150人、週末が同200~300人。ここまでの年末年始期間は平均120人で、最高300人入った日もありました。
東京ドームシティはイベントが非常に多く、常設イベントとしてはちびまる子ちゃん、戦隊ヒーローものなどがあります。期間イベントとしてはウルトラマンやファイナルファンタジーなどのイベント、年末にはSMILE-UP(旧ジャニーズ)のコンサートもあり、人出の多い日は『Blue-ing!』の来場者も増える傾向にあります。今後はこういったイベントとコラボしながら、施設の魅力を広く伝えていく必要があると考えています。
コア層はもちろんのこと、ライト層でも楽しめるということをしっかりアピールしていきたいですね」と岡村氏は力を込めていた。