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「お目通し」の意味は?
『お目通し』は、日常会話の中ではあまり見聞きしませんが、ビジネスシーンでは当たり前のように使われる表現です。お目通しの意味や混同しやすい言葉について理解を深めましょう。
■全体をざっと見ること
お目通しは、名詞の『目通し(めどおし)』に接頭辞の『お』が付いた敬語表現です。『おめどおし』と読むのが一般的ですが、人によっては『おめとおし』と読む人もおり、どちらの読み方でも間違いとはいえません。
目通しとは、全体をざっと見ること・最初から最後までひと通り見ることを意味します。漢字からも、大体の意味は把握できるでしょう。
ビジネスシーンでは、『お目通しください』『お目通しのほどよろしくお願いいたします』などの言い回しがよく使われます。
■「お目通り」「お見通し」との混同に注意
お目通しは、『お目通り(おめどおり)』『お見通し(おみとおし)』と間違えられやすいですが、意味や使い方が全く異なる点に注意しましょう。
お目通りの意味は、身分の高い人(貴人)にお目にかかることです。『拝謁(はいえつ)』と同義で、『国王にお目通りする』『大臣にお目通りがかなう』といった使い方をします。ビジネスシーンで使う機会はそれほど多くはないでしょう。
お見通しの『見通し(みとおし)』には、最初から最後まで見続けること・遠くまで見えること・目に見えない内面を見抜くこと・将来を予測することなどの意味があります。
「お目通し」はいつ・誰に使う?
お目通しは、いつ・誰に対しても使える万能な表現ではありません。使う相手やシチュエーションを間違えると、思わぬミスにつながったり、相手を混乱させたりする恐れがあります。
■目上の人やお客さまに使うのが適切
お目通しの『お』は、尊敬の意味を持つ接頭辞で、目通しする人への敬意を示します。ビジネスシーンでは、目上の人やお客さまに使うのがふさわしいといえます。
同僚や部下に対して、「お目通しいただけますか」と伝えるのは、やや違和感があります。上司でなければ、「目を通しておいて」と伝えるのが自然でしょう。
自分が目を通したことを相手に報告する際は、「確認いたしました」と伝えるのが一般的です。自分の行為には使えないので、くれぐれも「お目通しいたしました」と言わないようにしましょう。
■精読が不要なものが対象
目通しには、全体をざっと見るという意味があるため、契約内容や重要事項の確認といった精読が必要なものには使えません。相手にしっかりとチェックしてもらいたいときは、状況に応じて『ご査収(ごさしゅう)』『ご検収』『ご確認』などを使いましょう。
ご査収の『査収』は、金額や内容をよく調べてから受け取ることです。相手に「ご査収ください」と言われれば、内容をしっかりとチェックしてから受け取らなければなりません。
ご検収の『検収』は、納入品の品質・数量・仕様などが、発注内容と相違ないことを確かめた上で受け取る行為を指します。
ご確認の『確認』は、確かめて認めることです。ご査収やご検収は、相手が物を受け取ることが前提ですが、ご確認は受け取りの必要がありません。確認を依頼する際は、相手を迷わせないように目的や期日などをしっかりと伝えましょう。
「お目通し」を使う上での留意点
ビジネスシーンでは、正しい敬語を使う必要があります。相手に敬意を示したつもりでも、使い方が適切でなければ、敬語が得意でない人と見なされるでしょう。お目通しを使う上での留意点を解説します。
■「お目通しになられる」はNG
「その資料は、部長がお目通しになられました」という表現をする人がいますが、『お目通しになられる』は、『二重敬語』です。
『お~になる』『~になられる』は、どちらも同じ尊敬語であり、一つの語で同じ種類の敬語が重複すると、回りくどい印象になるでしょう。
用法上、二重敬語は使うべきではないとされていますが、ビジネスシーンでは、習慣として定着している表現もあります。例えば、『お召し上がりになる』『お見えになる』『お伺いする』などは、ごく当たり前のように使われているのが実情です。
■相手と状況に応じた表現を使う
お目通しを使った表現は複数あるため、相手と状況に応じて使い分ける必要があります。『お目通しください』『お目通し願います』は、敬語としては正しいものの、丁寧さに欠けると感じる人がいるようです。
特に、取引先やお客さまに対しては、『お目通しいただけますと幸いです』『お目通しいただきたく存じます』という表現を使うのが望ましいでしょう。
【例文】
- 明日の打ち合わせまでに、お目通しいただけますと幸いです
- 昨日の会議の議事録をまとめました。お目通しいただきたく存じます
「お目通し」の言い換え表現もチェック
お目通しは、上司をはじめとする目上の人に、全体をざっと確認してほしいときに使います。同じような意味を持つ言葉には、『ご一読』『ご一覧』があります。意味と使い方をチェックしましょう。
■ご一読
ご一読(ごいちどく)は、接頭辞の『ご』と名詞の『一読』から成り立つ言葉です。相手を立てる敬語表現であり、目上の人やお客さまに対して使います。
一読には、一通り読むという意味があります。『ざっと読む』のニュアンスが含まれているため、精読が必要な書類には適していません。
【例文】
- 4月からスタートする新サービスの案内書を添付いたしました。ご一読いただけますと幸いです
- 来週の商談に向けて、提案書を作成しました。ご一読いただきたく存じます
■ご一覧
ご一覧(ごいちらん)の『一覧』は、一通り目を通すことです。一般的に要点を分かりやすくまとめた表を一覧と呼びます。
『覧(らん)』には、全体を視野に収めて見る・広く見渡すという意味があります。お目通しと同じように、精読が必要な書類や重要事項の確認には適していません。
【例文】
- 人材採用の募集要項をまとめましたので、ご一覧のほどよろしくお願いいたします
- イベントの日程表は、ご一覧いただけましたでしょうか
■ご通覧
お目通しは『ご通覧(ごつうらん)』にも言い換えが可能です。一覧は通覧と同義ですが、厳密には以下のような違いがあります。
- 一覧:一通り目を通す
- 通覧:書物や書類などについて、最初から最後まで目を通す
『社内を一覧する』という表現は可能ですが、『社内を通覧する』という言い方はしないのが一般的です。
構成/編集部