DIME MAGAZINE
1&1創業の地でのイベントは予想外の連続
房野氏：イベントがあった街が思っていた以上に大変なところだったようですね。
石野氏：2泊4日で行ったんですが、空港に着いたら鉄道がストライキしているわ、駅に着いたらタクシーはいないわ、ホテルに着いたと思ったらフロントがないわ、部屋の中で携帯電話の電波は通じないわ、となかなか過酷でした（笑）
房野氏：なぜそんなところでイベントをやったんですか？
石川氏：モンタバウアーという町なんですが、1&1の創業の地で、本社があるところなんです。本当はフランクフルトとか大きな都市でやって、もっと人をいっぱい呼んで華々しくやろうとしたようなんですが、どうしても創業の地でやりたいというので、そうなった。本社社屋の会議室みたいなところでやったので、出席する人数が限られていたんです。
石野氏：モンタバウアーの駅前は1&1の建物がドーンと何棟も続いていて、アウトレットモール、城、以上……という感じの場所。線路の反対側は草原で。
房野氏：いかにもドイツ郊外の牧歌的な風景といった感じですね。ちょっと市街を離れると、携帯電話がつかまえる電波が2Gに落ちちゃうような感じですよね。
石野氏：2Gには落ちなかったですけれど（笑）
法林氏：サッカー観戦でドルトムントに行ったことがありますけれど、街中は駅の近くにモールやドルトムントのショップがあって、そこから離れるとスタジアムまで途中は普通の住宅街しかない。その先は畑と草原の世界。
石野氏：まさにそんな感じでしたね。
房野氏：モンタバウアーはどこに近いんですか？
石野氏：フランクフルトとケルンとデュッセルドルフの間くらい。Googleマップで見ると広大な緑色だった。
房野氏：車がないと困るところですよ。
石川氏：ほんと、そうです。
石野氏：1つのタクシー会社にタクシーが3台しかないんですよ。だから、予約しようと思って電話したら「その時間に車はない」と言われてしまって（笑）
石川氏：なので、しばらくドイツ出張はいいです（笑）
石野氏：フランクフルトかベルリンならいいかな……。タクシーアプリが使えないのって恐怖でしかなかったです（笑）
石川氏：今までタクシーアプリに甘えていたなと。喋らなくていいし、現金を持っていなくてもいいし。アプリさえあれば、どこでも行けるっていう状況に慣れていました。
法林氏：支払いはカード、使えたの？
石川氏：現金のみでした。
石野氏：僕、現金を持っていなかったので、石川さんと一緒にタクシーに乗っていなかったら、つまみ出されていたところでした。
法林氏：ドイツの郊外って、そんなに不便だったかなぁ。
石川氏：フランクフルトだったらタクシーサービスも4つくらいあるんですけれど。
房野氏：お疲れ様でございました。
石野氏：でも面白い街でした。
MVNOのサービスをMNOでもそのまま提供できるシステムを構築
法林氏：1&1は楽天モバイルMVNOと同じことをやって、これから苦しみが待っているんだろうね。
石野氏：そうですね。基地局はまだ1000局ですし。
法林氏：それはお話にならない。
石野氏：ドイツって基地局が少ないんですよね。
石川氏：もともと他社でも2万8000局ぐらいしかない。
法林氏：ドイツって以前は、電車に乗って移動すると、駅間は途中から2Gになっちゃうくらいだったしね。
石川氏：そんなところと日本の通信料金を比べて「日本は高すぎる」と言っているのはナンセンスだなと、改めて思いました。
房野氏：1&1は、周波数はどの辺を獲得したんですか？ プラチナバンドを取ったりはしていないですよね？
法林氏：調べてみると、5Gオークションが2019年に実施され、1&1は2.1GHz帯と3.6GHz帯を取ったみたいです。2023年から使えるのは3.6GHz帯で、2.1GHz帯は2026年以降だそうです。とりあえず3.6GHz帯でスタートして、後で足すって感じ。
石野氏：ただ、そんなにすぐ、自社だけのネットワークでやろうとしていない。欧州のキャリアはローミングをちゃんとしなさいと国から言われる。フランスで第4のキャリアとして立ち上がったfreeも、しばらくはローミング中心で運営していました。
法林氏：逆に言うと、ローミングを優遇するのって、新規事業者を育てる上では大事。
石川氏：1&1は、今は周波数が1波しかないけれど、もう1つの周波数でも使えるようにアンテナが大きめにできていて、後から入れられると言っていました。1&1が将来性を考えている。楽天モバイルはそれを考えていなかった。
三木谷さんが言っていたけれど、楽天モバイルが4Gのネットワークを国内で作った時には、まずシスコのネットワークシステムの仕組みを使った。5Gは楽天クラウドみたいな感じになったそうです。一方で、1&1に関しては、すべて楽天クラウドで運営しているそうです。楽天モバイルに関しては初めてのことなので、色々と無駄が多い部分はあると思います。
石野氏：1&1では、運営が洗練された感じがしましたね。
石川氏：洗練されたものを外販していて、たぶん、楽天モバイルをやっているよりも安く導入できるようになっていると思います。売りやすくなっている感じはしますね。
石野氏：日本から主要メンバーがみんなドイツに行っちゃっているんじゃないか、くらいの感じがしました。話を聞いていると「簡単に組み上げています」という感じに見えるけれど、楽天モバイルをもう1つ海外で立ち上げているような感じに見えます。サービスはもっと早く始まる予定だったんですが、できなくて、FWA（Fixed Wireless Access）、ドコモでいうと「home 5G」みたいな、端末があまり移動しないものから始めている。2023年夏ぐらいに始まるかと思っていたらまた遅れて、国から怒られ……
法林氏：どこかのキャリアと同じだ（笑）
房野氏：最初のサービスはどんな感じで始まったんですか？
石野氏：MVNOでやっているので、初期サービスというか、そのまま、なんですよ。
石川氏：MVNOで提供しているプランがそのままスライドされる。
房野氏：エリアの中でMNOの回線が整ったら、そこにつなげる、みたいな感じですか？
石野氏：そんな感じです。
法林氏：今の楽天モバイルのMVNOとMNOの関係よりも、より洗練されているというか、親和性が高い感じで作られている。作り方次第なんですよ。
石野氏：そこが大変だったようです。MVNOでたくさんやっているいろんなメニュー、オプションがある。
石川氏：それを全部、ソフトウエアを開発してMNOでも使えるようにしている。
法林氏：つまり、なんだろう……Webページを作るのにWordPressで作るんじゃなくて、全部自分でコードを書き起こすようなイメージ。でも、1回書いちゃえばそのフォームを使って他の会社にも流用できますと、となる。
石川氏：WordPressのプラグインを作るみたいな感じですね。
房野氏：楽天モバイルは基本的にワンプランじゃないですか。料金サービスがたくさんあると手間取りそうですね。
石野氏：まさにそこが大変だったそうです。
法林氏：昔の契約が残っていると、顧客システムの構築ってやっぱり大変なんですよ。
……続く！
次回は、CESについて会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之（ほうりん・ たかゆき）
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温（いしかわ・つつむ）
日経ホーム出版社（現日経BP社）に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ！ はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞（月額540円）」を発行中。
石野純也（いしの・じゅんや）
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』（ソフトバンク新書）、『1時間でわかるらくらくホン』（毎日新聞社）など著書多数。
房野麻子（ふさの・あさこ）
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成／中馬幹弘
文／房野麻子
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