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対応カードの発行枚数が1億枚を突破、Visaのタッチ決済は決済市場の勝者になれるのか?

2024.01.14

主役の決済システムになるための3つの戦略

キャッシュレス化が急速に進む日本。キトニー氏は5年後の目標として、「日本の決済エコシステムが世界で最もスマートでパーソナルなものとなり、消費者の日常生活の主役となること」を掲げる。そのために取り組んでいる戦略が次の3つだ。

1.市場の成長や機会創出
2.人生をより豊かに充実させるよう寄り添って支援
3.将来性のある事業展開

Visaが取り組む3つの戦略的柱。

1.市場の成長や機会創出

Visaのタッチ決済は2017年にインフラを整え、2020年からの3年間で急速に発展。2021年と2023年を比較すると、コンビニやスーパー、ドラッグストア、飲食店など、主な日常使いの加盟店で4~9倍という伸びを示し、その利用範囲は公共交通機関にも拡大している。2023年には実店舗でのVisa利用の25%をタッチ決済が占めるほどになった。

Visaのタッチ決済の拡大。

「これは4回に1回はタッチ決済が利用されているということです。タッチ決済は日常の買い物でよく使われていましたが、最近ではより高価な買い物にも利用されるようになってきました。このことは大きな市場の転換を意味していると思います」とキトニー氏。

タッチ決済が飛躍的な進歩をする一方で、クレジットカードの不正利用は増え続け、2022年にはその被害額が437億円にも及んでいる。そのためスマホでタッチ決済を利用してもらい、トークン化を進めていきたい考えだ。

不正利用の増加とトークン化のメリット。

トークン化とはクレジットカード番号を悪用されないように、別の数字や文字列に置き換えることで保護する仕組み。このトークン化によって世界の不正取引金額の28%が減少し、eコマース取引での承認件数を3%向上させているという。「トークンはeコマース市場を拡大するツールになります。eコマースにおいてトークンが必要なインフラであるように、今後のイノベーション全ての基盤になるでしょう」と語る。

2.人生をより豊かに充実させるよう寄り添って支援

消費者がシームレスに安心して決済ができるよう、様々なサービスを提供している。その1つが「Real Time Visa Account Updater」だ。これは有効期限が過ぎたり、交換されたカードを簡単に更新できるもの。これにより利用者は様々なECサイトでカード情報を改めて登録する必要がなく、加盟店の支払いでエラーする確率も低くなる。このサービスは北米から開始して欧州にも拡大しているが、11月8日にアジア太平洋地域(一部除く)にも提供することが発表された。

「Real Time Visa Account Updater」の仕組み。

そのほか、決済後でも変更できるより柔軟な分割払いプランや、カードを利用することでの優待や特典を提供するなどの取り組みによって利用を促進する。

3.将来性のある事業展開

Visaは安全に利用してもらえるよう、過去5年間にグローバルで100億ドル(約1兆4000億円)以上を投資。組織犯罪の脅威から守るため、不正利用の削減やセキュリティの強化など、リスクマネジメントを行なってきた。決済インフラはいつも最新の状態にアップデートする。

Visaのセキュリティ対策。

また、法人市場においても力を入れ、法人クレジットカードの発行枚数は2014年に639万枚だったのに対して、2023年には1201万枚と約2倍に増加。企業間の決済におけるデジタル化を加速し、効率的な決済システムや便利なソリューションを用意する。

法人決済における様々なサービスやソリューション。

最後にキトニー氏は、日本の決済ビジネスにおいてさらなる可能性を実現するため、次の点を強調した。「日本は世界的に見て、最も安全で革新的な決済システムを持つ国になろうとしています。日本市場のようになりたいと思う国が出てくるのではないかと期待しています。今後も新しい法人市場などにアタックしていくために、パートナーとの密な連携が必要だと考えます」。

日本の決済ビジネスにおける3つの重要なポイント。

“世界で最もスマートでパーソナルな決済になる”という5年後の目標に向けて、今後の動きにも注目していきたい。

取材・文/綿谷禎子

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