どんな場合に解雇できるのか
Q.
試用期間中の解雇って、どんな場合にOKになるんでしょうか?
A.
カンタンにいうと「キミ、そんな奴やったんや!」「それならウチでは雇えないよ」と客観的に判断されるケースです。会社の独断と偏見じゃなくて【客観的に】判断されます。
ザックリいうと最高裁は「以下のケースなら試用期間中の解雇はOK」と言ってます。
採用当初は知ることができずまたは知ることが期待できないような事実を、採用決定後の調査や観察によって知ることとなり、その者を引き続き雇用することが適当でない場合(三菱樹脂事件:最高裁 S48.12.12)
Q.
入社して2ヶ月。ミスばっかりしてて……。解雇されても仕方ないですよね?
A.
んなことありません!以下、解説します。
裁判例
▼ 解雇ダメと判断されたケース
こちらの事件は、会社が「この人、仕事ができない」と判断して試用期間中に解雇した事件です。裁判所は「解雇ダメ〜」と判断。会社に約700万円の給料の支払いを命じました。
■ テーダブルジェー事件:東京地裁 H13.2.27
「会長に挨拶しなかったから解雇!」という理不尽な事件もありました。もちろん裁判所は「解雇ダメ〜」と判断。こちらも会社に約700万円の給料の支払いを命じました。
■ ニュース証券事件:東京地裁 H21.1.30
「営業の成績が振るわない」との理由で解雇された事件です。社長が熱烈なラブコールを送ってきたのでXさんは転職したのですが、試用期間中に突然上記の理由で解雇されました。裁判所は「解雇ダメ〜」と判断。会社に約58万円の給料の支払いを命じました。あと、めずらしいですが慰謝料150万円も認められています。それほど理不尽な理由での解雇だったからです。
お次は「解雇OK!」と判断された裁判例です。社員がけっこうパンチ効いてます。
▼ 解雇OKと判断されたケース
経理の資質があるとのことで入社したのですが、フタを開けてみると、自分の認識について誤解がないかを確かめる前に「試算表や決算書が間違っている!」と発言したりしました。
裁判所は「Xさんの発言は組織的配慮を欠いた自己アピール以外の何物でもない」と、めずらしく毒を吐いて「解雇はOK!」と判断しました。
地裁では「解雇ダメ」と判断されたのですが、高裁でひっくり返って「解雇OK」となりました。裁判官によっても変わります。
■ 大宇宙ジャパン事件:東京地裁 R5.2.22
こちらも問題社員の事件です。以下のようなトラブルを引き起こしていました。
▼命令された業務に不満を述べて取り組まない
▼他の社員を批判する言動を繰り返す
▼コミュニケーション能力の不足を理由に配属先候補の顧客から不採用を突きつけられた
▼他の社員の行為について十分に事実を確認することなく関連部署に対し問題を指摘したりして他の社員との間で何度もトラブルを起こしていた。
裁判所は「解雇OK!」と判断。
さいごに
裁判例を見ていると、ちょっと仕事ができないくらいで解雇OKになることはありません。マジでポンコツな社員やキングオブ自己中社員であれば解雇OKになるようです。
もし試用期間中に解雇されそうな方は労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
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取材・文/林 孝匡(弁護士)
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