調査結果から考えられる今後の日本医療への示唆
医療の満足度がCOVID-19パンデミック前後で変化がなかったことは、我が国における医療機関によるCOVID-19対応が評価された結果であると考えられる。
しかしながら、その内訳として医療へのアクセスに対する満足度が低下しており、COVID-19による受診抑制やそれに関する報道が意識されたことも影響している可能性がある。
今後日本の医療政策においては医師の働き方改革や、かかりつけ医機能の報告制度など、医療へのアクセスに関する状況が大きく変化する可能性も。
医療へのアクセスに対する満足度の低下が、今後我が国においても医療制度全体への満足度にどのような影響を与えるのか注視していく必要がありそうだ。
こうした現状の中、医療の効率化やサービスの向上に向け生成AIへの期待は高まっている。
生成AIは医療者が利用することによる医療サービスの改善や、患者が利用した医療情報へのアクセスの向上など幅広い医療への応用方法が模索されており、こうした生成AIの医療応用への関心は年齢に関係なく、今後の活用にむけた検討を進める必要がある。
一方、生成AIに対する印象は「どちらでもない」という回答が半数を占める現状において、技術の内容やその活用メリットに関するコミュニケーション不足が要因でデジタル技術不信や断絶を深めることは想像に難くない。
生成AIを利用した医療においては、医療事故時の責任の所在を明確にすることをはじめ、個人情報についてのルールづくり、運営主体の明確化等を通した制度整備を急ぎ、医療の効率化と信頼を両立した運用が求められていきそうだ。
■津川友介氏(日本医療政策機構 理事/カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部(内科)・公衆衛生大学院(医療政策学)准教授)のコメント
「日本人が日本の医療制度をどのように評価しているのかわかる貴重な調査結果だと思います。
特徴的だったのが、医療の質や安全性に対する満足度が4年前と比べて改善している一方で、医療機関へのアクセスや医療制度の平等性に対する満足度が大きく低下していることです。
待ち時間の長さや窓口負担などにより、医療機関にかかりたくてもかかれない人がいることを示唆していると思います。生成AIに関心はあるものの、実際に利用したことがある人が12%にとどまったのも特徴的だと思いました。
特に医療に生成AIを活用し医療事故が発生した場合の、責任の所在に関して懸念を持っている人が多いという結果でしたので、国民的な議論が必要だと思います」
関連情報
https://hgpi.org/research/hc-survey-2023.html
調査概要
調査期間:2023年12月4日から2023年12月7日
形式:オンライン調査
合計配信数:13,004名
調査回答者数:1,502名(回収率11.55%)
回収数:1,000名(有効回答者数が1,000名に到達した時点で終了)
対象:20歳以上の日本人
サンプリング:年齢階級、性別、居住地により調整
構成/Ara