半開きでの操作が便利、おサイフケータイ対応もうれしい
ヒンジは開閉の途中で止まる仕様になっているため、半開きのまま操作することもできる。例えば、YouTubeを再生している際に半開きにすると、上半分が動画、下半分が操作パネルに切り替わる。これによって、動画を一時停止したり、次の動画に飛ばしたりといった操作を行える。本体を机やテーブルに置いたまま視聴できるだけでも便利だが、操作性も向上するというわけだ。
YouTubeやカメラなどを起動している際に画面を半開きにすると、下半分が操作パネルに切り替わる
撮影時に、本体を置いたままにすることも可能だ。この場合も、上半分がファインダー、下半分がシャッターなどの操作パネルになる。テーブルなどに置いておけば、手ブレが発生せず、安定した状態で撮影できる。連写合成のため、数秒間本体を固定しなければならない「ナイトビジョン」は、特にそのメリットを生かしやすい。半開きの状態は、フォルダブルスマホならではの価値と言えるだろう。
一方で、このモードに対応しているアプリはまだまだ限定的。Zoomなど、サードパーティでも対応しているものはあるが、Google純正アプリの一部と、モトローラのプリインストールアプリ以外で利用できる機会は少ない。競合となるサムスンのGalaxy Z Flip5の場合、下半分を強制的にタッチパッドとして使う機能があったが、ああいった工夫もほしかった。
サードパーティアプリも一部この機能に対応している。画像はZoom
チップセットには、ミッドハイクラスのスマホに向けて開発された「Snapdargon 7 Gen 1」が採用されている。フラッグシップモデルが搭載する「Snapdragon 8 Gen 2」などに比べると、CPU、GPUともに性能は抑えめだ。ベンチマークで測ると、スコアには如実な差が出る。一方で、ブラウジングやSNSなどのアプリに関しては、とても滑らかに動く。合成などを必要とするナイトビジョンも、比較的スムーズに画像が生成される。3Dグラフィックスを多用したゲームでは差が出る一方で、普段使いでは、あまり気にする必要はないだろう。
「Geekbench 6」で計測したスコア。Snapdragon 8 Gen 2搭載のハイエンドモデルに比べると、シングルコア、マルチコアともに数値は低い
普段使いという意味では、上位モデルのrazr 40 ultraで搭載していなかったおサイフケータイに対応していることの方が利点は大きい。モバイルSuicaやiD、QUICPayなど、サービスはひと通り利用可能。しかもFeliCaの場合、コード決済と違い、閉じたままでも本体をかざすだけで利用でき、フォルダブルスマホと相性が抜群にいい。さすが、フィーチャーフォン時代に開発された機能なだけあって、折りたたみ端末向きだ。
モトローラのフォルダブルスマホとして、初めておサイフケータイに対応した
モトローラならではの、素のAndroidに近いユーザーインターフェイスも、操作感がいい。上位モデルの差分として、ディスプレイのリフレッシュレートが144Hzと低いことがあるが、これでも一般的なフラッグシップモデルより高いため、十分な滑らかさ。操作時のレスポンスは良好だ。こうした機能を考えると、razr 40sはフォルダブルスマホとして破格と言える。今まで価格で二の足を踏んでいたユーザーにも、自信をもってオススメできる1台だ。
【石野’s ジャッジメント】
質感 ★★★★
持ちやすさ ★★★★★
ディスプレイ性能 ★★★★
UI ★★★★★
撮影性能 ★★★★
音楽性能 ★★★★
連携&ネットワーク ★★★★★
生体認証 ★★★★
決済機能 ★★★★★
バッテリーもち ★★★★
*採点は各項目5点満点で判定
取材・文/石野純也
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。