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【勝手にブック・コンシェルジュ】スピードワゴン小沢一敬さんに贈りたい一冊「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

2024.01.13

【勝手にブック・コンシェルジュ 第4回】小沢一敬さんに、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』を

『週刊文春』(2024年1月4・11日新年特大号)に松本人志氏による性加害疑惑の記事が掲載され、世間をザワつかせています。ご多分にもれず、下世話なトヨザキも記事を全文読んだのですが、そこにある人物の名前を見つけて「!」「?」となった次第なんです。

今から20年以上前、一度だけスピードワゴンの二人にお目にかかったことがあります。鶏頭(三歩歩くと忘れる、というやつです)なので詳細は覚えていないのですが、ラジオ番組に呼ばれて本の話をしたのでした。井戸田さんはあまり本は読まないということでしたが、小沢さんは読書が趣味だと話してくれて、わたしとのやりとりも気を遣って盛り上げてくれました。

その時、小沢さんに対して抱いた印象は「やさしそう」「シャイ」「当たりが柔らかい」「繊細」「文化系男子」。だから『週刊文春』の記事で、小沢さんが松本氏のために女の子を集め、太鼓持ちのような態度を取り、松本氏が女の子に性行為を無理強いするためのゲームの音頭取りをし――といった最低の所業に及んだ可能性を知り、それがもしも本当だとしたら、わたしがかつて抱いた小沢さんの印象をことごとくくつがえすもので心底驚いたんです。

わたしの勝手な印象にすぎませんが、小沢さんのようなタイプは、松本氏みたいなオラオラ系をもっとも苦手とするはずで、どうしてそんな人物の手下になったのか。小沢さんからすり寄ったのか。松本氏から都合のいい若手として命令されるようになったのか。大物芸人の知己を得て嬉しかったのか。本当はイヤだったけど怖くて言いなりになっていたのか。文春の記事が正しいとしたら、あんな非道に手を貸して良心は痛まなかったのか。かつての本好きでシャイで繊細そうな小沢さんはどこにいったのか。

そんなことを考えてしまった次第です。

「ジャニーズ問題では、2010年代半ばまで多くの方が性被害を受けていました。そして被害者が一斉に立ち上がり、大きな山が動いた。それを見て勇気をもらいました」と記事中で語る被害者の一人A子さんに対し、ネットでは「何年も前のことを今さら言うな」「本当のことなら警察に行けばいい」「金目当ての虚言」といった二次加害というべき酷い言葉をぶつける人が大勢いますが、言語道断です。この記事が事実かどうかはこれから明らかになっていくわけですが、だからこそ現時点ではA子さんに対してわたしたちは口を閉ざしているべきなんです。

個人的には、これまでの松本人志という人間の言動を参考にすれば「限りなく黒に近い」事件だと思っています。でも、わたしにとってはこの大物きどりのマッチョ野郎のことなどどうでも良くて、気になって仕方ないのが小沢さんのことです。小沢さん、今でも本は読んでいますか? わたしは本というものは、自我という小さな檻から己を解き放ち、今ではないいつか、ここではないどこか、自分ではない誰かに思いを寄せる助けになってくれる存在だと思っているのですが、小沢さんはどう思いますか? 小沢さんは飲み会に誘う女の子たちに、下心ではないジェントル・ハートを寄せたことがありますか?

さて、今回わたしが「乙女男子」を自認している小沢さんにおすすめしたい小説は、大前粟生『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(河出文庫)の表題作です。

『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』
大前粟生(著)
河出文庫(発行元:河出書房新社)

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