止まらない少子高齢化は、働き方を変えた。公務員の段階的な定年延長はすでに始まっており、一般企業でも65歳までの雇用確保が2025年4月から義務づけられる。定年が再定義された今、改めて〝働く〟ことの意義を見つめ直してみよう。
何歳になっても生き生きと働くために大切なのは
自分で自分の市場価値を高めること。
リポーター・コメンテーター
玉川 徹さん
1963年宮城県生まれ。89年にテレビ朝日に入社し、報道局の局員として『スーパーモーニング』などの制作を担当した。『羽鳥慎一モーニングショー』ではコメンテーターとしてレギュラー出演中。23年7月に退職し、現在フリー。
人生をかけて働くために自分の価値を高めよう
60歳を機に退職してフリーに転じた玉川徹さん。「仕事自体は実はあんまり変わってないんです。ただ、気持ちが自由になりましたね」とその心境を明かす。
「成果も失敗も、全部自分で責任を負える。これまでは囲まれた湾の中で穏やかに航行していたけど、今は広い外海に出た感覚です」
人生の大半を会社とともに過ごした人の中には、定年とともに何をしていいかわからなくなったり、待遇が下がることに不満を覚える人も多いだろう。だが、玉川さんはそうではない。
「フリーになった今の自分は、個人に対して値付けされる立場になるわけです。だから定年になる10年ほど前から、『会社にとって替えの効かない存在になろう』と。自分の市場価値を高めるよう意識して仕事をしてきました。〝テレビ朝日の玉川徹〟だけだと市場価値として足りないわけですよ」
そこで考えたのが、〝自分自身をコンテンツにすること〟だった。そこからテレビに出演する仕事も積極的に行なっていくようになったという。
「これまでのサラリーマンは終身雇用が前提で、会社の中で最適化するって考えが当たり前でしたよね。仕事のスキルよりも、人間関係の築き方が重要視される時代が長く続いてきました。
でも、今は個としての市場価値を追求することが、会社や社会全体の活力になると思います。会社の外で、会社と違うスキルを身につけるというのも別にいいとは思うけど、会社で仕事をして貢献する中で力をつけるのが一番スムーズじゃないでしょうか」
一方で、昨今多くの人がとりがちな「定年後の生き方」に玉川さんは首をかしげる。
「定年間際になって慌てて趣味を探すケースが、もったいないなと思うんです。趣味を探せる人はある程度、経済的に余裕があり時間も余っていると思うのですが、それなら仕事をすればいいじゃないか、と。
仕事って良いもので、他人から頼りにしてもらえるし、うまくいけば褒められて、お金ももらえます。これは社会的にも重要なことで、税金を納めることで社会に貢献しているし、元気に仕事をするってことは社会保障にかかる分も少なくてすみますよね。定年したって、死ぬまで仕事をすればいいと私は思います。
そのためにも、2024年以降の日本社会では、再就職や転職がしやすいように、これまで以上に人材の流動性を高めることが必要です」
定年後見つけた仕事が、職場で馴染めなかったり、思っていたものと違っていたりして後悔することは避けたい。そのために大事なことがふたつあると指摘する。
「ひとつは自分を客観視すること。自惚れたら失敗するし、過小評価してもいけない。外部の目っていうのがすごく大事なんですよね。もうひとつが、向き不向きを自分で決めつけないこと。自分はテレビ業界に憧れて入社しましたが、ワイドショーは志望していませんでした。でも配属された結果、一生の仕事になった。だから私にはこれしかないって思わないほうがいいですよ。行政サービスを使ったっていい。定年後の自分にどんな仕事が向いているのかを相談したっていい。自分の可能性を自分で狭めないことが大切です」