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業績は安定、株式市場からの評価も高いオートバックスが希望退職者を募った理由

2024.01.10

カー用品大手のオートバックスセブンが、50歳から57歳、または勤続10年以上の正社員を対象とした、希望退職者の募集をかけました。同社の従業員数は2023年3月末時点で1,057人。1割の人員削減となります。

これまで、フジ・メディア・ホールディングスやワコール、クックパッドなどの名の知れた会社が希望退職者の募集を行っており、そのたびに会社員の間に動揺が広がりました。しかし、従来の人員整理の特徴は、業績が悪化したことでやむを得ず行うケースばかり。オートバックスの希望退職者の募集は、業績が堅調にも関わらず実施するところにポイントがあります。

昨年12月、オートバックスセブンは100人の早期退職を募集すると発表した

オートバックスはイエローハットよりも利益率が低い?

オートバックスの2023年4-9月の売上高は、前年同期間比4.5%増の1,118億円、営業利益は同1.5%減の34億円でした。増収減益で上半期を折り返しました。通期の売上高は前期と同水準の2,342億円、営業利益は前期比1.5%増の119億円を予想しています。通期では増益の見込みです。

2023年3月期の営業利益率は5.0%、2024年3月期は予想通りの着地で5.1%。営業利益率が5~6%台で推移していたのは、2011年3月期から2014年3月期まで。人件費の高騰や資源高の中でも利益率を高めることに成功しています。

オートバックスは、2022年に主力商品の一つであるタイヤの値上げを行っており、前期は値上げ前の駆け込み需要が起こりました。そのため、タイヤの売上は前年を下回っています。

しかし、エンジンオイルやバッテリーが好調に推移し、2023年4-9月の国内事業の売上高は、前年同期間比4.4%増の815億円、セグメント利益は横ばいの78億円でした。

国内店舗の分野別の売上高を見ると、中古品・燃料以外のすべての商品・サービスにおいて増収となりました。車買取・販売、車検・整備の売上は1割増と好調です。

決算説明資料より

オートバックスとよく比較される会社にイエローハットがあります。イエローハットの2023年3月期の営業利益率は10.4%。2024年3月期は10.3%を予想しています。

会社全体の利益率に注目すると、イエローハットは圧勝しているように見えます。しかし、イエローハットの利益率を高めているのは、賃貸不動産事業。2023年4-9月の賃貸不動産事業のセグメント利益率は24.6%。その一方でカー用品事業のセグメント利益率は7.0%でした。

オートバックスの国内事業の同期間のセグメント利益率は9.7%。イエローハットと比較すると2.7ポイントも上回っています。オートバックスは、競合と比べて決して低い水準ではありません。

株式市場からの評価も高い

オートバックスの業績の足を引っ張っている要因の一つは、Audiや電気自動車BYDなどを販売するディーラー事業。この事業は2023年4-9月に1億円のセグメント損失を出しました。業績不振を背景として、BMW/MINI正規ディーラー事業を行うアウトプラッツとモトーレン栃木の全株を譲渡しています。

もし、オートバックスが収益性を高めるための取り組みを本格化するのであれば、不採算事業の整理を行うのが本筋であり、オートバックスセブンの従業員をリストラするのは筋違いと言えます。

オートバックスは中期経営計画である「Beyond AUTOBACS Vision2032」の中で、目標を連結売上高5,000億円と設定しています。成長戦略の中で利益に言及する箇所は一つもありません。このことから、オートバックスはコスト削減ではなく、売上成長に目を向けていることがわかります。今回の希望退職者の募集が利益率向上を目的としたものではないことは明らかです。

市場からの評価も悪くありません。オートバックスのPBRはおよそ1倍。イエローハットは0.7倍です。PBRは株価純資産倍率のことで、株価を1株当たりの純資産で除したもの。値が大きいほど、市場から評価されていることを示しています。東証は1倍を下回る企業に対して是正を求めています。日産自動車は0.4倍、マツダが0.6倍、ホンダも0.6倍。名だたる有名自動車メーカーや競合他社が1倍を下回る中、オートバックスはその水準をクリアしているのです。

オートバックスの業績が堅調であることや、他社と比較しても競合をリードしていること、経営計画において売上成長を重視していること、市場から一定の評価をすでに得ていることなどを考慮すると、希望退職者の募集をかけるのが足元の業績改善を目的としたものではないことがわかります。

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