管理職にとして部下の成長を促す上でかかせないフィードバック。どれくらいの頻度で行うか、ネガティブとポジティブのバランスをどう配分するか、どのような伝達手段を用いるかなど、人によってさまざまな工夫をしていることだろう。
では、部下の成長を実感している管理職ほどフィードバックで心がけていることとは、いったい、どのようなものなのだろうか?
ラーニングエージェンシーおよびラーニングイノベーション総合研究所はこのほど、484名の管理職を対象に「管理職意識調査」を実施し、その結果を発表した。
1.フィードバック後の部下の行動に対して、約4割の管理職が「行動に繋がらない」と悩んでいる
前回のレポート*1では、7割の管理職が「部下に成長してほしい」と願う気持ちでフィードバックしていることがわかったが、実際に部下は管理職の願い通りに成長しているのだろうか。まずは、フィードバック後の部下の行動について、どのような悩みがあるか質問した。
結果、43.6%の管理職が、部下に対して「自分の課題を認識してはいるが、すぐに行動につながらない」ことに悩みを抱えていることがわかった。(図1)
*1 管理職意識調査 第1弾(部下へのフィードバックの実態編)
2.部下の成長を感じている管理職ほど、「即時フィードバック」を実践している
次に、フィードバックの違いにより、管理職の感じる「部下の成長度合い」に差があるのかを明らかにするため、フィードバックの頻度・場所・手法・内容と、管理職が感じる「部下の成長度合い」の関係を調査した。
まずは、「フィードバックの頻度」と「部下の成長度合い」の関係について見ていく。結果、部下が「非常に成長している」と回答した管理職は、44.4%が「即時にフィードバックをしている」ことがわかった。その割合は、「成長してない」と感じるにつれて低くなり、部下が「成長していない」と感じている管理職は14.3%で、「非常に成長している」と感じている管理職より30.1ポイント低い結果となった。
また、部下の成長度合いについて「成長していない」「わからない」と回答した管理職は、フィードバックの頻度を「特に決めていない」と回答する割合がそれぞれ28.6%、34.5%の結果となり、「非常に成長している」「成長している」と回答した割合に比べて高くなった。(図2)
3.部下の成長を感じられない管理職ほど「ネガティブフィードバックの場所」を気にする傾向あり
次に、フィードバックの場所について見ていく。フィードバックする場所を気にかけているか質問したところ、「常に最適な場所を選ぶようにしている」と回答した割合が全体的に高くなった。
特徴的だった項目は、部下が成長していないと感じる管理職ほど、「ネガティブフィードバックの環境」を気にする傾向にある点だ。部下が「成長していない」と感じている管理職は、「非常に成長している」と感じている管理職より、「ネガティブフィードバックの際に場所を選ぶようにしている」割合が15.1ポイント高くなった。(図3)
4.8割以上の管理職が「対面・口頭」でのフィードバックを実施
次に、フィードバックの伝達方法について見ていく。結果、「対面で、口頭伝達している」と回答した管理職が8割以上の結果となり、大部分の管理職が「対面&口頭」を意識していることがわかった。(図4)
また、部下が「非常に成長している」と感じている管理職は、94.4%が「対面で、口頭伝達している」結果となり、部下への成長を感じることが出来ている管理職ほど、この割合は高くなった。また、「非常に成長している」と感じている管理職の61.1%が、「チャットやメールなどで文書伝達している」と回答。
その割合は「成長していない」と感じている管理職よりも46.8ポイント高くなった。「非常に成長している」と感じている管理職は、図2からも「即時フィードバック」する割合が高く、チャットやメールを使用してでも即時にフィードバックすることを意識している傾向がわかる。(図5)
5.フィードバック時、部下から「意見を傾聴すること」「納得感を醸成すること」を意識している管理職ほど、部下の成長を実感
次に、フィードバックで気を付けていることを見ていく。部下が「非常に成長している」と感じている管理職の6割以上が「部下の意見を傾聴すること」「部下の納得感を醸成すること」を意識していることがわかった。一方、「成長していない」と感じる管理職は「部下の意見を傾聴すること」は14.3%と低く、「部下の納得感を醸成する」には回答が集まらなかった。(図6)
6.部下の成長を感じている管理職ほどポジティブフィードバックが多く「フィードバックの意図」や「求める人材像」、「日頃の感謝」も伝えている結果に
最後に、フィードバックの内容について見ていこう。まずは、フィードバック時のポジティブとネガティブの割合を質問した。結果、部下が「非常に成長している」と感じている管理職は、55.6%が「ポジティブが多く、ネガティブが少ない」と回答した。この割合は、部下の成長を実感しているほど高く、「成長していない」と感じている管理職はわずか28.6%となった。
一方、「ポジティブが少なく、ネガティブが多い」と回答した割合は逆の結果となり、部下の成長を実感していない管理職ほど高い割合となり、「非常に成長している」と「成長していない」の差は23ポイントも広がる結果となった。さらに、部下の成長について「わからない」と回答した管理職は、フィードバックのポジティブ・ネガティブの割合も「特に決めていない」と回答する割合が44.8%と最も高くなった。(図7)
さらに、フィードバックで“心がけて伝えていること”を質問した。結果、「事実や結果に基づく具体的な内容」を伝達する割合が、部下の成長実感に関わらず高いことがわかった。
特徴的だった結果は、部下が「成長している」と感じている管理職は「事実や結果に基づく具体的な内容(72.2%)」の次に、「フィードバックの意図や理由(66.7%)」「目的・目標や求める人材像(55.6%)」、さらに「日頃の感謝や努力への労い(50.0%)」を伝える割合が高いという結果だった。(図8)
構成/こじへい