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企業が人事領域において「賃上げ」「リスキリング」「人材獲得競争の再激化」に注目すべき理由

2024.01.10

2023年は、コロナ禍の収束によりインバウンドや国内消費も回復の兆しを見せ始め、企業は人材の確保を加速させた年だった。一方で、急激な円安や物価の高騰、海外情勢の緊迫化などにより外部環境は大きく変化している。

このような社会背景や雇用状況、労働市場の変化を鑑みてパーソル総合研究所はこのほど、人事担当者へのアンケートやインターネット調査などのデータをもとに、2023-2024の人事領域において注目されるトレンドワードとして、「賃上げ」、「リスキリング」、「人材獲得競争の再激化」の3つを選定した。詳細は以下の通り。

ソーシャルメディア、Webメディアにおけるトレンドワードに関する言及数も2022年比で急増

2023年10月までの言及数は2022年同期比で、「賃上げ」(180%)、「リスキリング」(1049%)、「人材獲得競争の再激化」(168%)。ソーシャルメディア上でも関心の高まりがうかがえる。

1.賃上げ

2023年は、政府による賃上げの必要性、インフレ率を超える賃上げに向けた後押しによって、賃上げムードが高まり、大手企業における賃上げ率は2022年の実績を1.72ポイント上回る3.99%※1でこれまでのピークであった1993年の3.86%を上回った。賃上げ幅は、5800円上昇し、1万3362円となり、およそ30年ぶりの高水準となった。

とはいえ、実質賃金は、前年比マイナスが続き物価上昇には賃上げが追い付いていない状況だ。またグローバルな人材獲得競争における待遇面での競争力強化の面でもまだまだ物足りない賃上げ率となっている。

日本では、良質なサービスを提供するために労働者が長時間労働を行い、やり繰りする経営を行ってきたが、そのシステムにも限界がきている。長時間労働の解消には、職場の管理職の意識改革、非効率な業務プロセスの見直し、取引慣行の改善が欠かせない。長時間労働をなくしていきながら、賃金を上げていく、この両輪が我が国の経済成長に不可欠だと考える。

※1日本経済団体連合会「従業員500人以上の大手企業136社を対象とした2023年春季労使交渉・大企業業種別妥結結果(最終集計)」(2023年8月)

2.リスキリング

政府は、2022年に個人のリスキリング支援に5年間で1兆円を投じる方針を発表した。それを受けて、2023年は厚生労働省が資格学習の費用を助成する「教育訓練給付」の補助率を引き上げ、デジタル人材の増加を促進。また経済産業省は、リスキリングを経て再就職できた場合に、講座の受講費用などの支援を受けられる制度を導入するなど、2023年は「リスキリング元年」といってもよい様相だった。

生産年齢人口が今後も減り続け、深刻な人材不足の解消が喫緊の課題である日本にとって、リスキリングは他国以上に取り組まなければならない緊急かつ重要な課題とも言える。国や企業が学びの機会だけをつくっても、学ぶ側の就業者が一部にとどまっている現実において、リスキリングを学習機会の提供にとどめることなく、具体的なポストへのキャリア・パスや処遇の提示、配置転換の施策との紐づけがカギとなってくる。

3.人材獲得競争の再激化

2023年は例年以上に人材獲得競争が激化した年だった。特に10月に施行された「インボイス制度」に対応するための業務のデジタル化やDX化を推進するニーズが高まり、求人数が増加した。※2またインボイス制度対応にとどまらず、社内育成だけでは、質量ともに人材確保が追い付かず、外部から採用する人材獲得競争が激化している。「人材が不足している」と回答した企業の割合は正社員で51.4%、非正社員でも4年ぶりに3割を超えた。※3

労働市場において長期的に見渡すと景気連動だけによらない、生産年齢人口の減少といった構造的な問題や失われた30年の反動、そこにコロナ後の景気回復が重なる複合的な要因が生んだ人材不足現象が、2023年に一気に表出したと言える。

現在の日本は、生産年齢人口の減少とともに、デジタル領域で欧米に遅れをとっており「人口減少」と「競争優位産業不在」の二重苦の状態にある。売り手市場が続く見込みの中で、企業は求職者とのベストマッチングを図るためにも、人的資本経営に関する取り組み状況を誠実に伝えていくことが求められている。

※2パーソルキャリア株式会社「doda転職求人倍率」(2023年8月)
※3株式会社帝国データバンク「人で不足に対する企業の動向調査」(2023年7月)

出典元:株式会社パーソル総合研究所

構成/こじへい

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