【コレが廣津留流ヒットメソッド】
作りたいものをどれだけ忠実に作れるか
ニッチでも共感力でヒットは生まれる
バイオリニスト
廣津留(ひろつる)すみれさん
高校在学中にNY・カーネギーホールでソロデビュー。ハーバード大学、ジュリアード音楽院を経て、米国にて演奏活動を拡大。現在は音楽活動のほか、大学講師、テレビのコメンテーターと幅広く活躍。
マルチプレーヤーやニュートロがヒットを連発
「音楽業界はジャンルを超えた表現力を持つアーティストが話題です」
そう話すのは廣津留すみれさん。中でも今年「爆速で売れた」と一番に挙げたのが、アイスランド出身のシンガーソングライター・Laufey(レイヴェイ)。
「アイスランドチャイニーズのジャズシンガーですが、チェロやピアノなど様々な楽器をこなすマルチプレーヤー。多様なバックグラウンドも影響してか、カテゴライズできないニュータイプのアーティストです」
彼女が世界中にリスナーを増やしている理由のひとつには、表現者としてのスタンスが、今の流れにうまくマッチしている点が挙げられる。
『雑誌のインタビューで『今の若い世代はジャンルで選ばず〝何を伝えたいのか〟を敏感に感じ取るから、自分が思ったことを素直に曲に乗せるようにしている』と話していたのですが、まさにサブスクでボーダーレスに音楽を聴く今のリスナーの心をうまく捉えていると思います。楽器もこう弾かなきゃならない、という固定観念に縛られず、ツールとして、その可能性を広げているのも魅力です」
ひと昔前のCD全盛期なら、CDショップに行けばジャンルも、メジャーorインディーズもコーナー分けがされていたが、音楽配信が主流の今は、メガヒット曲も数千回再生のニューカマー曲も、同じプレーリストに並ぶ。
「いわゆるZ世代にあたる大学の教え子たちに自分の好きな音楽をプレゼンしてもらうのですが、人気のありなしや周りの人に関係なく自由に自分の視点で、音楽を選んでいるのが印象的です」
こうしたニュートラルに音楽をチョイスする流れとして「ニュートロ」もムーブメントのひとつとか。
「いわゆる〝ニュー〟と〝レトロ〟を合体した造語で、今年は私自身、昭和・平成ポップスをたくさんリアレンジして演奏しました。わかりやすいメロディーライン、ストレートな歌詞が新鮮で、今どき風に昔の良さをリバイブするのが新しいんです」
垣根なく音楽を選び取る若い世代によってレトロポップが再注目され、リアルで聴いていた世代も巻き込んで再ブームを呼んでいるというのだ。
そんな廣津留さんが考えるヒットのメソッドは2つあるそう。
「ひとつは商業的にお金をかけ、ビジネスとして狙いにいくもの。もうひとつは、Laufeyのように『届けたい人に届けたい』というまさにボーダーレスで自由な姿勢が結果としてヒットにつながるもの。自分がいいと思ったものをいかに忠実に作品化できるか、そこにフォーカスできたアーティストが跳ねる。今はメディアが多様化しているので、質のいい作品ができれば、たとえニッチでも、共感力でファンを呼べると思います」
これは音楽だけでなく、社会やビジネスにおいても同様かもしれない。
廣津留さんの2023注目トレンド【01】Laufey
2021年デビューの中国系アイスランド人アーティスト。現在24歳で、ロサンゼルスを拠点に活動する。最近ではノラ・ジョーンズとの共作も話題に。
注目トレンド【02】ボーダーレス
リスナーの聴取傾向に合わせておすすめを提案する音楽サブスクの「ディスカバー機能」が情報源。固定観念にとらわれないジャンルレスな選曲に新発見のヒントが!
注目トレンド【03】ニュートロ
廣津留さんも、松田聖子さんの『渚のバルコニー』や井上陽水さんの『少年時代』など、昭和・平成ポップスのリアレンジ動画をSNSに投稿。幅広い層からの反響を得た。
取材・文/坂本祥子
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