宣伝しないからこそ人々の興味・関心を惹く
従来のヒットコンテンツには、事前のPRや宣伝が欠かせないものだった。だが、エンタメ部門金賞の『VIVANT』も同様に、その常識を逆手に取った「事前情報を出さない」手法が、2023年のヒット商品の共通点に。
まず、井上雄彦氏の大人気漫画を映画化した『THE FIRST SLAM DUNK』も、宣伝は数種類のポスターと予告編公開程度で、あらすじを明かさなかった。検索でも明確な情報が出ない状況に、多くのユーザーが「内容を知りたい!」と映画館へ足を運んだ。
宮㟢駿監督による新作映画『君たちはどう生きるか』に至っては、宣伝は、ポスターとタイトルのみ。事前情報が最小限に抑えられる一方で、SNS上では作品の解説や考察に関する議論が過熱。575万人(※)の動員へと結びついた。
あえて情報を出さない宣伝を成功させたのは、エンタメ分野に限らない。サントリーから3月に発売された『こだわり酒場のタコハイ』も、あえて「味」の説明をしないことがヒットへとつながった。
「『タコハイ』はシンプルな焼酎のソーダ割なのですが、言葉で表現しようとするほどに、その味わいをうまく伝えられないことが、リサーチ段階で判明していました。ならば、逆に味を説明せず、謎を残す伝え方にと決めました」(同社 スピリッツカンパニー RTD・LS事業部・黒川郷さん)
宣伝も抽象的な言葉やイメージが残るように制作を進めたという。
「『タコハイって何味だと思う?』と、あえて問いかけるキャッチコピーを訴えることで、お客様の興味・関心を狙いました」(同)
事前知識を減らし、好奇心をあおる。情報過多な時代だからこその、画期的な新法則といえそうだ。
※11月27日時点。
あえて問いかけることでお客様の興味を誘いました
──サントリースピリッツカンパニー・黒川さん
ヒットの方程式「事前情報なし編」
事前に出す情報は少なく
ユーザーの心理は「気になる」から「知りたい」へ
SNSを中心に話題化されやすくなる
興行収入155億円突破!歴代13位に
映画『THE FIRST SLAM DUNK』
宣伝のテーマは「映画館で観たときの感動の最大化」。あえての戦略ではなく、事前情報で先入観を与えないための配慮だった。Blu-ray&DVDが2024年2月28日に発売予定。
© I.T.PLANNING,INC. © 2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners
576万人動員!宣伝はポスターとタイトルのみ
映画『君たちはどう生きるか』
スタジオジブリの宮㟢駿監督が、10年ぶりに世に送り出した長編アニメーション映画。鑑賞した人々の間ではSNSを中心に作品の謎解きが過熱し、リピーターも続出した。
©2023 Studio Ghibli
当初年間販売計画の2倍、500万ケースの販売を突破
サントリー
『こだわり酒場のタコハイ』
163円(350mL)
『こだわり酒場のタコハイの素』
715円(500mL)
『こだわり酒場のレモンサワー』新シリーズとして発売された、焼酎を炭酸で割ったプレーンサワー『タコハイ』。田中みな実さんと梅沢富美男さんが出演したCMも話題に。
取材・文/藤村はるな
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年11月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。
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