諦めず開発する執念とそれを支える企業風土が鍵
タイガー魔法瓶が2023年10月に発売した『魔法のかまどごはん』は、発売約1か月で通年販売予定数を超える4000台近い売り上げを記録した。3月に永谷園が発売した『パキット』は、シリーズ合計260万食を出荷し、年間販売目標を約7か月で達成した。
どちらの商品も、ひとりの社員の情熱が結実して誕生した。『魔法のかまどごはん』開発者の村田勝則さんは、70台以上の試作を経て完成に漕ぎ着けた。
「植木鉢やセメントなど様々な素材を使いました。セメントの扱いにも慣れました」(村田さん)
『パキット』開発者の三田友理恵さんは、東京都内のパスタ屋100軒以上を食べ歩きしたという。
「商品化までの試作回数も1000回以上です」(三田さん)
成功の背景には、いくつか共通点がある。まず、身近な課題や自身の体験がもとになっている点だ。村田さんは野外施設のアルバイトで新聞紙を燃やして炊飯した経験から着想した。三田さんは自身も思っていた「パスタは茹でるのが面倒」という顧客の声がきっかけだ。課題を自分事にできるかが、成功の要因かもしれない。
また、周囲の協力や会社としてのサポートも不可欠だ。村田さんは開発にあたり社内公募制度の「シャイニング制度」を活用した。
「3度目の応募で審査を通過し、開発が始まりました」(村田さん)
三田さんは開発が難航した時期も周囲が応援してくれたという。
「『商品化したらおもしろい。諦めずにがんばってほしい』と励まされ、勇気をもらいました」(三田さん)
何より大事なのが、壁にぶつかっても諦めない、ふたりの執念だ。彼らの情熱は、会社だけでなく消費者へと伝播し、ヒット商品を生み出すに至ったのだ。
都内のパスタを朝昼晩と100軒以上食べ歩く生活を数か月続けました
「社内公募制度」に応募し続け、今回が3度目の挑戦でした
ヒットの方程式「社員の情熱編」
自分の経験や身近な課題から商品のアイデアは生まれる
周囲の理解・協力や会社としてのサポート体制は不可欠
商品開発にかける情熱と執念を持ち続ける
発売から約1か月で通年販売予定数超え
タイガー魔法瓶『魔法のかまどごはん』
オープン価格(実勢価格約1万9800円)
左右2か所の投入口に新聞紙を順番に入れて火をつけることで、電気やガスを使わずに電気炊飯器のようなおいしいご飯が食べられる。アウトドア層を中心にヒットしている。
10月末現在、シリーズ累計260万食出荷
永谷園『パキット』シリーズ
希望小売価格約324円
パスタソース入りの調理パウチに麺と水を入れ、電子レンジで加熱するだけで、茹でたてのパスタが食べられる。女性はもちろん、簡便性が男性にも好評だという。
取材・文/桑元康平
※本記事内に記載されている商品やサービスの価格は2023年11月30日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。