3)「農業×ワーケーション」~実作業を通じて旅先で社会貢献
コロナ禍で注目を集めたワーケーションが、新たな展開を見せている。農業支援とワーケーションを組み合わせた新たな旅の形が、「JTBアグリワーケーション」として株式会社JTBより展開されている。
ワーケーションと農業を組み合わせることで、農業人手不足と新たな働き方をマッチングし、将来の新規就農、移住定住、二拠点居住など、地域における関係人口の拡大に貢献する。
同社は2021年にJA全農と連携協定を結び、2022年9月より旅行商品として販売スタートした。
同社の農業支援事務局の浅沼元気氏は、提供背景を次のように語る。
「農業においては、人手不足と農業を目指す人材が不足していることが大きな課題と感じています。作物はモノごとに収穫時期が決まっているため、ピンポイントで人材が確保できるかどうかが最大の課題。また地方の過疎化により、農業の関係人口が減り、農業を目指す人材も不足してしまっているため、まず農業のお仕事を旅行とともに体験いただき、その上で農業やその土地に愛着を持っていただくことを目的とし、当商品を展開しています」
農業とワーケーションをかけあわせることにより、参加者はただの旅行では得られない農作業の実稼働を通じてメリットが得られる。
「農業にすでに興味をお持ちの方が、実際に農業で稼ぐ体験をしていただくことで、農業へ踏み出す一歩のきっかけとしていただければと思っています。また、各地域に興味を持っていただくことで、将来の移住定住につながる方との出会いも目的にしています」(浅沼氏)
2023年5月には企業版をリリース。農作業と企業研修を組み合わせることで、農業の人手不足と企業の抱える経営課題の両方の解決を目指す。当初はJA全農山形と連携し、山形県の農業生産者と全国で農作業研修に参加したい企業をマッチングする新たな農業支援に取り組んだ。
浅沼氏は企業版のメリットとして「参加企業の従業員の皆様へ、非日常の空間である農場、農作業の体感、地域との交流などを通じて、心身のリフレッシュ、チームビルディング、食農に対するリスペクト、参加者同士の交流から生まれる新たな価値観の醸成など、オフィスでは得られないさまざまな機会をご提供します」と話す。
●取り組みへの思い
「JTBアグリワーケーションは第一次産業を救うこと、地方の経済を立て直すこと、農業の関係人口を増やすことなど、今の日本が抱える社会的課題の解決策としては非常に有効。新たな農業人材を確保するために、今後もJA全農様と連携しながら地域を元気にしていきたいです」(浅沼氏)
旅行では観光として収穫体験はよくあるが、ワーケーションは実作業を通じて実際に農業を支援できる点で大きく異なる。本気の実稼働からは、何か大切なことが学び取れるだろう。
農業と何かを巧みにかけあわせることで、新たな価値を生み出しながら、農業課題の解決へつなげる試みを紹介した。いずれもアイデアに富んだ取り組み。今後のさらなるイノベーションに期待したい。
【参考】
ONENOUEN
ファームシップ
JTBアグリワーケーション
文/石原亜香利
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