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トルコの政策金利40%、債券の利回り20%超に飛びついてもいいのか?

2024.01.03

なぜトルコリラはなぜこんなに金利が高いのか?

トルコ中央銀行は11月23日に政策金利を40%まで引き上げた。なぜここまで政策金利を上げたかというと、慢性化しているインフレのせいだ。

トルコは、エネルギーを輸入に頼っていることから、石油価格が上がると輸入金額が増え経常赤字となってしまう。輸入には現地通貨をドル等に交換して支払っていることから、その赤字分はトルコリラを売っている金額となるためさらなる通貨安を招く。

トルコの最近のインフレの原因の一つとして、エネルギー価格の高騰が挙げられる。

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー価格は急激に上がった。その後少し下がったが再び今年10月にイスラム組織ハマスのイスラエルの大規模攻撃により上昇した。12月に入って落ち着いてきたもののまだ高い水準のままだ。

さらに、インフレであるところに金融緩和を行ったことも大きい。これが、さらなるインフレを招き、2022年にインフレ率は70%までに達した。

通常インフレのときには、中央銀行がインフレを抑えるために政策金利を上げてお金があまり出回らないようにする金融引締めを行う。金融引締めを行い市中にお金が出回らないようにすることで、インフレを抑えるのだ。そこに、逆の利下げを行う金融緩和をしたことで、さらにお金が出回り、株式市場は大幅上昇した。インフレが起こっていると、モノの価格がどんどん上がっていくため、値段が上がる前に買おうと考え、さらなるインフレとなる。早めにインフレを抑えておかないとハイパーインフレのような急激なインフレとなる。

なだらかなインフレは賃上げも起きるため経済成長に良い影響を与えるが、急激なインフレはモノの価格が急激に上がるため生活が苦しくなってしまう。例えば、今日100で買っていたパンが次の日120、翌月に140とどんどん上がっていく。家賃が10万であったのが翌年17万、翌々年25万、車や住宅であれば、その影響はさらに大きく、400万で購入できた車が翌年には680万になっている、3,000万で購入できた住宅が翌年5,100万になっている・・・当然、急激なインフレに賃金上昇は追いつかないため、一般家庭の生活はどんどん苦しくなる。

モノの価格がどんどん上がっていくということは、裏を返せば通貨の価値が下がっていることを指す。100で買えていたものが、100で同じものを買えなくなるということは、その通貨に100の価値がなくなってしまったということだ。

通貨の価値が下がることにより、対外的には自国通貨の為替レートは安くなる。

もし、この場合日本人がトルコリラに投資している場合は、円に交換するときに損をしてしまうことになる。

金利が高い国は為替に特に注意が必要

今年の7月に入ってトルコリラは、1トルコリラ=5円近辺を推移しており、12月に入って5円を割り込んだ。2023年はじめには7円近辺まであったから、3月から約32%値下がりしたことになる。そのさらに前の2022年には8円近辺、2021年には12~15円、2019年には20円近辺だったことから2019年からは76%下がっていることになる。

上記は、10年前の為替レートで、トルコリラ建ての債券を20%の利回りで運用した場合の損益を表した。利回りは20%あり為替の影響を受けなければ利息は元本の5倍超が受け取れる。しかし、10年前から現在までのような為替変動が起きた場合には、元本が大きく欠損し、さらに利息もトルコリラで受け取るためその時点の為替レートで円換算すると、大幅に少なくなってしまう。このように、利回りがどんなに高く多くの利息の利益を入れても、元本が半分以下になってしまうことになる。

ドルなどの先進国通貨であれば為替レートが一時的に円高であるから待っていればそのうちドル高円安に転じることもあるが、このような新興国通貨の場合戻るかどうかわからない。

さらに、最悪の場合通貨切り下げ(デノミ)が行われる可能性がある。デノミとは、通貨を切り下げて新紙幣を発行することである。ハイパーインフレーションが起こると、パン一つとってもたくさんの枚数の紙幣が必要となってしまうため、生活に支障が出ないよう切り下げするのだ。

現にトルコは2005年に100万分の1のデノミを行っている。デノミ自体は通貨単位を形式上切り下げるだけであるため、経済に影響を与えるわけではないが、それだけハイパーインフレが起きていて、その通貨の価値が大きく下がっている状況だといえる。

そして、通貨安になると対外債務の支払いが多くなる。自国通貨をドルで返済するのに、自国通貨がこれまでより多く必要になってしまう。新興国のなかでも対外債務が多いトルコはドルなどの外貨準備額に対する債務率が高く、返済に行き詰まる可能性がある。

インフレ、円貨決済型に注意

債券は発行体が倒産しない限り、満期に元本が償還され、その間決まった利息が受け取れる、初心者で投資しやすいリスクの低い商品だ。

しかしながら、10%を超える利回りの債券に投資する場合は発行体に倒産リスクがある、投資している通貨の国がインフレとなっているという高リスクの債券であることが多い。

そのため、10%を超える債券に投資するときは、通常の債券に投資するよりもリスクは大きいと理解の上投資する必要がある。インフレであるということは通貨が下がりやすいため、高利回りの債券に投資するときはその通貨のインフレ率にも注意が必要だ。インフレを抑えることができていれば、通貨安にならない可能性はあるが、トルコのようにインフレ率見通しが50%となるような通貨では通貨は必ず下がるという見通しをもって投資しなければならない。

もし、外貨建て債券に投資して、円高になってしまった場合にはその通貨を円に替えずにそのままその通貨建ての債券に再投資して利息を増やし、再びその通貨が上がるのを待つこともできる。

しかしながら、新興国通貨建ての債券のなかには通貨取引の規制上、償還金と利息の受取が必ず円貨決済されてしまうものがある(「円貨決済型」という)。例えば、ブラジルレアル、インドルピー、インドルピアなどだ。

このような円貨決済型は、満期のときにたまたま円高のところで円換算してしまい、為替差損が大きくなってしまう可能性がある。

外貨のまま運用できれば再度同じ通貨で債券に投資するときに、為替手数料がかからず済むが、円貨決済型ではそれができない。

1通貨あたり円の価格が低い新興国通貨は為替手数料の金額が大きくなり、片道2~3%もかかってしまうことが少なくない。このようにできるだけ満期時外貨で償還できる債券の方がリスクは低いため、円貨決済型はそのリスクに十分注意して投資する必要がある。

(参考)
トルコ基礎データ|外務省 (mofa.go.jp)
原料供給問題が続くも、自動車生産は回復傾向、輸出総額は過去最高(トルコ) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ (jetro.go.jp)

文/大堀貴子

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