デジタルオンリーの株主総会の実現はまだまだ先?しかし着実に進んでいる
株主総会の開催者側の視点でみると、物理的な開催場所を持たずバーチャル空間での株主総会の実現は難しいのだろうか。
■現行会社法の規定
前提として、現行の会社法ではバーチャル空間だけの株主総会の開催は難しい。一方、産業協商力強化法によってバーチャルオンリー株主総会の開催を可能にする条件を定めている。
■産業競争力強化法でのバーチャルオンリー株主総会の要件
上場企業で、定款の定めがあり、経済産業大臣・法務大臣の確認を受けている等の法的要件や、株主総会の招集や議事録等の記録要件を満たす必要がある。
引用元:経済産業省/バーチャルオンリー株主総会制度説明資料
■バーチャルオンリー株主総会の開催・定款変更の状況
2023年6月30日時点で、バーチャルオンリー株主総会の開催は52社なので、全上場企業約4000社のうちの1%程度である。またこれを開催できるように定款を変更したのは411と同じ10%程度である。ちなみに定款(ていかん)とは、会社設立時に作成する重要な書類の一つで、会社の目的や基本情報、規則などを記載したものである。
株主側、会社側双方に、デジタルオンリーで株主総会を行うために乗り越えなければならないハードルがあることがわかった。
モノ言う株主が増えてきた時代の株主総会の在り方はいかに?
三菱UFJ信託銀行の集計結果では、2023年6月に株主総会を行った企業90社に対し、株主からの議案提案が344件と過去最多を記録している。中には取締役の選解任による争いなど物騒な提案も含まれていた。
株主と会社とのコミュニケーションを活発に行い、企業の成長を促していくために、株主総会の在り方の理想形はどこにあるのだろうか。デジタル化の推進が、株主と会社との向き合い方を見直すきっかけになるとよいのだが。
文/久我吉史