■連載/綿谷さちこのクレカの強化書
日本のキャッシュレス決済比率は36.0%(2022年)。政府が目標とする2025年までに4割達成という目標にも近づき、キャッシュレス決済が着実に普及していることを感じる。
今では友だちや家族など、個人間のお金のやり取りにもキャッシュレスが普及。その規模は年6兆円にも及び、送金回数は年6.2億回にもなる(「個人間送金市場調査」より)。
個人間送金でシェアを拡大するPayPay
個人間の送金は過半数以上が現金なのだが、その次にはコード決済が続く。今では多くのコード決済が個人間送金サービスを行なっているが、その中で圧倒的なシェアを獲得しているのが「PayPay」だ。コード決済における送金回数シェアでは、PayPayが92%にもなる(コード決済利用動向調査より)。
個人間送金のシェア。
個人間送金の用途としては、生活費の受け渡し、仕送りや小遣い、飲食代、物品購入などが多く、中でもPayPayが37%を占めるのが飲食代の割り勘。PayPayでは複数人の割り勘に便利な「グループ支払い」機能を用意していることも、この結果の理由であると思われる。
個人間送金の内容別のPayPayのシェア。
「グループ支払い」は割り勘メンバーでグループを作り、そのメンバーに対して支払い額を設定でき、どのメンバーが支払い済みなのかを視覚的に確認できる便利なサービス。誰がまだ支払っていないかが明確にわかるので、幹事は受け取り漏れを防ぐことができる。
「グループ支払い」画面(イメージ)。
「キャッシュレスお年玉に関する新たな取り組み」記者説明会に登壇したPayPayの藤井博文氏は、現在、約6100万人のPayPayユーザーをさらに増やす原動力になるのが個人間送金だと言う。
「今はPayPayを使っている人の方が多数派なので、割り勘などをきっかけに今まで使っていなかった人もPayPayを使い始めるきっかけが生まれます。PayPayの送金を使い慣れている人は、自分たちのコミュニティでのお金のやり取りをやりやすくするために、周りの人にも勧めたいと思っています。そういった推奨者の人がうまく背中を押してあげることで、コミュニティ全員がPayPayを使うようになるのが、今後、目指す姿だと思っています」。
PayPay 執行役員 事業推進統括本部 マーケティング戦略本部 部長 藤井博文氏。
藤井氏は現金とお金のやり取りにおいて、3つの違いがあると言う。その1つ目は現金では事前にお金を引き出す必要があるのに対して、PayPayはいつでも無料でチャージできること。そして2つ目が現金は会う必要があるのに対して、PayPayは会わなくても1円単位で送金できること。3つ目に現金は履歴が残らないのに対して、PayPayは履歴が残ることだ。
現金とPayPayのやり取りの違い。
PayPayには定期送金の機能もあり、設定した日に自動で送金することもできる。飲食代の割り勘だけでなく、子どもへのお小遣いや習い事の支払いなど、様々な用途で活用できるので、まだPayPayを利用していない約3500万人に、個人間送金を起点にしたユースケースをアプローチしていきたいという考えを示した。