日本はマイルドな生態系が進化してきた
外来生物も規制の目を潜り抜けて、どんどん入ってくる、でも、なぜ入ってくるのか。もっと根元から、現代日本の経済システムの不安定生・不確実性を考えるべきです。江戸時代には外来生物の持ち込みそのものは今よりずっと少なく、国内も自然生態系の割合が高く、外来生物が入り込む余地は少なかったと想像されます。現在は、国際的な輸入資源に依存し、多くの外来生物が高頻度で持ち込まれるようになり、なおかつ国内の土地開発も進み、在来の生態系が脆弱化していて、外来生物も容易に定着できるようになってしまった。外来種の問題では、日本の自然の利用の仕方の変化や社会システムの変容にまず目を向ける必要があります。
もともと日本人は花鳥風月など、自然および動植物を愛でる特性が特に際立つ民族でもあります。日本列島は大陸から離れて独自の生態系を進化させており、特に強烈な強さを持った生き物、例えばトラやライオンのような大型肉食獣やキングコブラやサソリのような猛毒生物がうじゃうじゃいることはなく、大陸と比較してもマイルドな種で生態系が構成されています。海に囲まれ、生息域が限られる島国ゆえに、資源消費もゆるやかに、適当なところで済ませられる生物種が進化して持続的な生態系が構築されたと考えられ、そうした生態系に順応して日本人も自然共生型の里山生活を発展させてきたと思われます。
外来種というバイオロジカルリスクはこれからもさらに高まると考えられます。輸入ルートは多岐にわたり、外来種に適した撹乱環境が広がり続く日本は、まさに、外来種のパラダイスといえるでしょう。
タフに生き残るには地方再生を
グローバル化は、大いなる経済発展をもたらしたが、実は良いことばかりが続くわけではなかった。今後、日本は少子高齢化の進行と、頭脳の国外流出が続くことで、国際競争力を失い続けると予想されます。優位だったテクノロジーも、外国勢がどんどん追い抜き、むしろ取り残されつつある。何よりも深刻な問題は、この国には地下資源もほとんどなく、多くの資源を海外からの輸入に依存しなくてはならないということ。今後は技術開発力強化だけではなく、いかにこの国が自立性を確保して、激動する世界の中でタフに生き残るかという点が問われるようになってくるのです。
タフに生き残る国家を構築するための一つの方法として、分散型社会への転換があります。地産地消という概念をベースとして、地方経済を復興させ、地域における資源およびエネルギーの持続的利用・サイクルによって地域社会の持続的発展を実現する方法です。この社会システムがいかに効率的で、日本という環境に適応的であるかは、歴史が物語っています。
日本の歴史を振り返ってみても、日本における唯一の持続的産業とは農業、林業、水産業という第一次産業しかありません。縄文の時代から江戸時代にいたるまでまで我が国は第一次産業を中心として、持続可能な社会を構築して、国内の自然資源だけで1万年もの間、生きながらえてきたのです。
テクノロジーが発達した今、農林水産業の自動化など、安心安全かつ安定した産業として第一次産業を進化させることも期待されます。第一次産業生産物を武器に国内のみならず、国際経済においても独自性を発揮して、自立性とともに新たな国際ステータスを確保する、これが日本の国際社会における有効な生き残り戦略となるのではないか、個人的に妄想しています。