毎年12月は職場のハラスメント撲滅月間。厚生労働省主導で啓発を進めていることもあり、ハラスメントについて改めて考えるのに良い機会だ。
2020年6月1日に施行された労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)により大企業では職場のパワーハラスメント防止対策を講じることが義務化されたが、2022年4月1日から中小企業でも義務化の対象となった。
職場におけるパワーハラスメント対策一つ、パワハラ研修は、近年ユニークな形でも行われている。ヒントになる事例を知ると共に、成功のポイントを探った。
漫画によるハラスメント研修の効果
パーソルイノベーション株式会社は、コミック教材を活用した研修サービス「コミックラーニング」を提供している。ただ研修を漫画化するだけでなく、内製ではできないストーリー展開や企業に最適化された内容が好評だ。
パワハラ研修についても漫画で展開することで、一定の効果が見込めるという。すでに複数の導入事例がある。
●物流関連企業の管理職研修を漫画化
物流関連の株式会社関西丸和ロジスティクスは、無自覚なパワハラ撲滅のため、管理職向け研修に同コミック教材を採用した。
管理職にとっては悪気のない発言が、部下にとってはハラスメントに感じてしまうこともある。漫画でわかりやすく状況が伝えられ、これまでの研修よりもインパクトのある社内研修を行うことが可能となったという。
コミックラーニング事業責任者の仙波敦子氏は、この事例について次のように解説する。
「コミックの持つ共感性やわかりやすさといった利点に着目いただきました。加害者側になることが多い管理職にとっては、キャラクターに共感して読み進められるコミック教材が特に効果的で、部下とのコミュニケーションの行き違いの理解につながり自分事として捉えることができたと喜んでいただけました」
●ガソリンスタンドの現場のリアルなパワハラを漫画化
ENEOSのサービスステーションを運営することで知られる株式会社ENEOSフロンティアは、全従業員向けパワーハラスメント防止研修に同コミック教材を導入した。
特にアルバイトを含む部下が正当な指導をハラスメントと捉えてしまったり、上司がそうした状況を恐れてきちんと指導できていなかったりと課題が生じていたという。
そこで上司と部下のコミュニケーション課題を解決し、互いに理解して行動につなげることを目指して日常の業務シーンを漫画のストーリーに落とし込みながら、トラブル発生による会社への影響や、指導とパワハラの違いについて学べるコンテンツをeラーニング教材としてオリジナルで制作した。
●パワハラ研修を成功させるポイント
仙波氏は漫画がパワハラ研修を成功させる可能性について次のように語る。
「パワハラ研修のステップとして、まずパワハラの定義や類型などの基本知識を『1.認知』すること、次に自分が受けた扱いや過去に取った行動がパワハラに当てはまるかどうかを考えさせ、パワハラを『2.理解』し、さらに受講者それぞれの『3.行動』につなげることでゴールであるパワハラ防止を実現します。
コミックはこの3ステップにおいて優位にあります。わかりやすさで受講者の『1.認知』をより広げ、上司・部下の互いの立場や心情を描くことで『2.理解』をより深め、読者に共感させることで当事者意識を生み、次の『3.行動』を促進させることが可能です」
パワハラ研修に漫画を取り入れる効果は期待以上のものになる可能性があるようだ。