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「あらゆる個人の生きた証が蓄積、活用される場に」Web3が変えるアイデンティティの未来

2024.01.05PR

「Web3」とは、暗号資産やNFTにも用いられているブロックチェーン技術を活用した、次世代の分散型インターネットだ。2022年ごろから急速に話題になったものの、現在その勢いは落ち着いている。Web3の現状、そして未来にもたらす、新しいインターネットのあり方について、電通イノベーションイニシアティブプロデューサーの鈴木淳一さんに聞いた。

株式会社 電通グループ
電通イノベーションイニシアティブ(DII)/プロデューサー
鈴木淳一さん
Innovators Under 35 Japan | MIT Technology Review Advisory Board、放送大学客員准教授、ブロックチェーン推進協会(BCCC)理事など兼務

Web3はインターネットにおける‶中央組織〟から‶個〟への主権移譲

――2022年ごろから話題になったWeb3ですが、現在その勢いは落ち着いているように感じます。Web3の現状について教えてください。

鈴木:特に暗号資産やNFTに対して、保有して値上がり益を獲得するという投機的な一面に対して過剰に注目されていたのですが、それが少し落ち着いてきました。一方で、ブロックチェーンを分散型の台帳技術と捉え、新しいインターネットのあり方と捉えている人たちが技術発展を牽引しています。

――Web3によるインターネットとは、従来のものとどういった点で異なるのでしょうか。

鈴木:Web2においては、プラットフォーマーと呼ばれている大手のサービス提供事業者がその中心でした。ユーザーはプラットフォーマーが発行・管理するIDを使わせてもらうという立ち位置でした。これまでは好意的に受け止められてきましたが、受け手のリテラシーが高まった現在は、Cookieによる画一的なデータマーケティングに反発する形で、もっと自分自身のものの見方や趣味嗜好に寄り添ったものを求める人が生まれてきています。

また、最近ではGoogleが休眠状態のアカウントを削除するというニュースが話題になりました。自分が獲得した「休眠していたい」というアイデンティティも、プラットフォーマーの事業合理性との兼ね合いが問われますし、自身ではどうにもなりません。こうした背景から、プラットフォーマー主導のWeb2を脱却し、個々のアイデンティティをインターネット上でも確立したいという需要が芽生え、その手がかりとしてWeb3が注目されています。

Web2ではプラットフォーマーのサービスを享受する一方で個人の権利主張はままならない

Web3では、IDをはじめとしたアイデンティティを形成する様々な情報はウォレットに蓄積されます。Web3におけるウォレットはインフラにあたるため、プラットフォーマーも個人も平等にそのインフラに乗っかる形で情報のやり取りを行います。また、ウォレット内の情報に関しては、使用できる範囲や権限を事前に細かく設定できるため、相手に応じて使用する情報を選ぶことも可能です。つまり、〝個〟が〝中央組織〟と対等な関係になり、自分自身の権利を主張していいのがWeb3になります。

小学生でも使える技術に

――Web3に対する認知度や信用度は、一般層まで広く浸透していないというのが現状だと思います。その認識が広まるために、どのような課題と解決方法があるのでしょうか。

鈴木:そもそもNFTなどブロックチェーンを使ったサービスを日常生活の一部として受け入れてもらう必要があります。そのためにも、UXを親しみやすいものにすることが一つのアプローチだと考えています。

毎年、小学生を対象にしたサマースクールを実施しているのですが、生徒にウォレットを持たせて、修了時に卒業証明書をNFTの形で配る取り組みを行っています。一部の保護者からは、NFTなどクリプト(暗号技術を用いたデジタル資産)に対して、子供にはまだ難しいという意見をいただくことがあります。また、ある程度知識のある方だと、NFTのやりとりにガス代と呼ばれるブロックチェーンの利用料が発生することを知っていらっしゃる。100円単位でお小遣いを管理されているご家庭だと、暗号資産なら好きに利用していいとはなりませんよね。

こうした課題を解決するために、2022年からはソニーさんの協力を得て、FeliCa技術を応用したICカード型のハードウェアウォレットを採用しています。たとえばスクール修了時、各生徒が持っているICカードを、先生役のスマホにかざすだけでNFTを貰えるという直感的な仕組みにしました。

ソニーが開発したICカード型ハードウェアウォレットを先生役のスマホにかざす生徒

さらに生徒のICカードには、自身が所持しているNFTの情報を相手に教えるというだけの権利が付与されます。その他の権利、たとえばNFTを他人に譲渡するといった権利には鍵がかかっているんです。これは鍵分散、マルチシグネチャーという技術を応用したものですが、この技術によって、親御さんが子供に必要な権限だけ付与することができます。こうすれば、クリプト技術がより親しみやすくなります。毎年予定しているサマースクールの同窓会では、会場の入り口にある端末にICカードをかざすだけでNFT認証されます。

また、ウォレットには外部所有アカウント(EOA:Externally Owned Account)とコントラクトアカウントの2種類が存在するのですが、現在主流のウォレットはEOAなので、文字通りブロックチェーンの外にあるため、発生するガス代はウォレットの所有者が自ら暗号資産を用意して支払う必要があります。でも小学生に自由に暗号資産を使わせることを躊躇する家庭も多い。そこで私たちはコントラクトアカウントを用いています。技術の進展によりブロックチェーンの中にウォレットを作れるようになったことで、プロトコルで条件を定めておくことにより事業者などがガス代を肩代わりできるようになりました。これらの手法を活用することで、ブロックチェーン技術を使う障壁はグッと下がると思います。

サマースクールの先生役は落合陽一氏が務める

Web3で「自分自身と向き合う」手助けを

――今後、Web3技術が発展していくなかで、事業者が活用したいと思ったときはどうしたらよいのでしょうか。事業者がWeb3を活用するための取り組みを教えてください。

鈴木:現状として、NFTなどのトークンを用いた解析は難しいので共同研究などご一緒させていただければと思いますが、仮に正しく解析できたとしても、事業者としては本当に消費者がトークンを参考にしたインセンティブの提案に反応してくれるのかという懸念もあるのではないでしょうか。従来のWeb2におけるCookieは、良くも悪くも目に見えないため、勝手に利用しても通用していた部分がある。しかし、トークンに基づき保有者の価値観や社会関係資本の蓄積状況といったものが可視化され、それに応じてインセンティブがたくさん出てくるようになると、多分そのトークンの持ち主たちは情報の多さに辟易しかねません。本当はその人が欲しているインセンティブがその中に紛れているかもしれないのに、そこにたどり着くために多くの時間を割いてしまうのでは本末転倒です。

そこで、TOPPANホールディングスとの共同研究として、23年12月より個人向けのエージェンシー機能を持つサービスの実証試験を始めました。ウォレット保有者のものの見方や趣味嗜好に寄り添い、NFTの保有状況に基づいて権利行使が可能なインセンティブを自動抽出し、自然言語による対話でインセンティブ利用に関する案内を行なうというものです。

NFTとして蓄積できるものは、これからより幅広く、数多くなるでしょう。消費活動にとどまらず、あらゆる生活の履歴が情報として蓄積されるようになります。それらをもとにして、様々なインセンティブが降ってくる中、中長期的な視点も含めて最適な選択を提案してくれます。それはきっと、単純なコンシェルジュサービスにとどまらないと考えています。その提案を通じて、自分が本当はこんなことが好きだったんだとか、こういう生き方を選ぼうとしていたんだとか、自分のことを改めて知るきっかけになりうる可能性を秘めています。

Web3とWeb2は住み分けされる

――非常に面白いサービスだと思う反面、事業者が個人のサービスを幅広く収集した結果、それをもとにして提案するインセンティブが一元化され、結果的に今のマス向けサービスと似たものになってしまうという懸念があります。

鈴木:それは従来のWeb2で事足りるのではないかと思います。大衆が合意して、その代わり一番安く作る事業者が勝つというゲームルールの上なら、Web3である必要はない。むしろ相補的同調がもとめられる共感の時代にあって、自身の個体性を失うことなく、もっとこうして欲しいという細かいニーズが反映されたマーケットが個別に作られていく状況こそがWeb3の強みをいかせるだろうと思います。一つ一つの事業構造としての規模は小さいけれども、それを寄せ集めていくとマスマーケットに匹敵する規模になりえます。

価値観が多様化した現代では、その価値観に応じてコミュニティも細分化されています。それが大きなコミュニティやマスマーケットに対して、個として対等に対峙できる情報環境をWeb3はもたらしてくれるのです。

――これまでは主にマーケット面でのWeb3がもたらす恩恵についてでしたが、それ以外でも応用可能なのでしょうか。

鈴木:Web3の本質は「インターネットにおけるアイデンティティの確立」です。集団の中にあって、その当人たりうるために必要な情報の抽出手法が今後実装されると、Web3の存在は社会の諸相にも反映されてくるようになると思っています。

例えば、スイスやエストニアなどでは、ブロックチェーンベースでの選挙権付与などの実証試験が行われており、Web3の社会実装に向けて動いています。また、国連もブロックチェーンベースのIDを発行するという動きを見せています。世界にはまだ基本的な人権すら満足に与えられなかったり、自由が制限されている場所が存在します。そんな人達に対して、国連が後ろ盾となり、分散された安全な方法でその人を証明することで、あらゆる支援がよりしやすくなる。Web3は、その鍵になりえる技術なのです。

***

Web3関連技術は、活用に向けて本格的に議論がなされはじめてまだ日が浅い。いまだ発展段階にある技術だ。しかし、活動履歴や思想、権利など、これまで形に残らなかったあらゆる個人の〝生き様〟を蓄積できる媒体としての可能性が期待されている。Web3がもたらす新しいインターネットのあり方に注目したい。

取材・文/桑元康平(すいのこ)

1990年、鹿児島県生まれ。プロゲーマー。鹿児島大学大学院で焼酎製造学を専攻。卒業後、大手焼酎メーカー勤務などを経て、2019年5月から2022年8月まで、eスポーツのイベント運営等を行なうウェルプレイド・ライゼストに所属。現在はフリーエージェントの「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズのプロ選手として活動中。代表作に『eスポーツ選手はなぜ勉強ができるのか』(小学館新書)。

撮影/篠田麦也

発売中!ビジネスの核心を司る「デジタルアイデンティティ」の指南書

「デジタルアイデンティティ」と言われても、ピンとくる人は少ないのではないでしょうか。『DIME』では、2022年に「メタバース」や「Web3」といったバズワードとなっているトピックを特集してきました。ただ、その特集を製作している過程で、何だかしっくりこない部分があることに気づきました。何か根本的なことを見逃しているのではないかと。

 その中で浮かび上がってきたキーワードが「デジタルアイデンティティ」でした。

見落とされているビジネスの核心

 安心・安全なデジタル社会を実現するうえで、サービス利用時にユーザーひとりひとりを識別したり、認証したりすることは必要不可欠なこと。そうでなければ、顔の見えない相手と安心して取引することはできませんし、本人かどうかも確認できません。これからますますデジタル上での経済活動は活発になるでしょうし、すでに住む場所を選ばず、ITを活用して仕事をしながら旅をする「デジタルノマド」という人々も増えています。コロナ禍で2拠点で生活する人、都市部に住みながら地方の仕事を副業で受けているビジネスパーソン、逆に地方に住みながら都市部の仕事をリモートでこなす人なども増えてきています。そういう意味でも今後のビジネスだけでなく、国や我々の未来を考えるうえでも重要なキーワードと言っても過言ではないでしょう。

 人口減少、高齢化、地域格差が待ったなしで進む日本において、DXによる社会の生産性の向上は喫緊の課題です。それを解決するうえでもデジタルアイデンティティの活用に関する議論がもっと盛り上がってもいいはずなのですが、いまひとつ注目されていません。

 では、日本におけるデジタルアイデンティティ活用のあるべき姿とは?

 そんな疑問からスタートしたDIME発の書籍「日本が世界で勝つためのシンID戦略」が発売!これは社会的にも経済的にも他人事ではないトピックです。

 今回、こういったデジタル分野のトレンドに詳しい4人の識者の方々に、それぞれの視点でデジタルアイデンティティの活用、背景にあるトレンドなど、ご自身の考えを交えて語っていただきました。当然ながら現段階で、正解はわかりませんが、その中で新たな視点を示し、問題提起をしてくれています。

「デジタルアイデンティティ」と聞いても、まだ自分ごととして捉えられないかもしれません。ただ、これは皆さん自身の話でもあり、今後のビジネスに必ず関わってくる根本的なキーワードであることはまぎれもない事実なのです。是非お近くの書店などで手に取ってみてください!

https://www.shogakukan.co.jp/books/09389106

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INDEX

「個人が複数のアイデンティティをポートフォリオ運営していく時代へ」 尾原和啓 

Web3時代のデジタルアイデンティティとは? 

「正解主義」から「修正主義」へ。アイデンティティの作られ方が変わってくる 

Web3ではすべてのトランザクションが可視化される 

可視化された信頼を検索できるしくみも生まれる 

日本は複数のIDを使い分ける「複垢先進国」 

今スキルがなくても個人の成長そのものが投資の対象になる 

競争社会では将来へのポテンシャル投資が重要になる 

属性ではなくIDに対する信頼でローンが組める 

Web3がもたらすアイデンティティのグローバル化 

マイナンバーが果たすセーフティネットとしての役割 

人が国を選べる時代。国が優秀なWeb3人材の集客合戦をしている 

日本と日本人がデジタルアイデンティティを活かすためには? 

ポートフォリオ運営でWeb3を生き抜く方法 

「 揺らぐアイデンティティを取り戻し、新しい公共圏を構築するヒントは日本の『間』の文化にあり」 武邑光裕 

アイデンティティの活用で問われる、公共圏とプライバシーの行方 

デジタルアイデンティティ=自己表現 

大量発生した「作家」、編集者の不在 

「ChatGPT」の不気味さ 

アイデンティティの分有と、分散ドロップアウト

プライバシーとコモンズの間で 

利便性や利益を追求して、束縛される逆説 

公私混同が是とされる個人主義 

コモンズとしての公共圏 

欧、米、中国の狭間で日本の進むべき道 

日本文化にあったコミュニティ 

「木と蜂」で考える官民連携 

中世化する社会の中で求められる公共圏の再構築 

やはり大切な公共圏 

「現実世界を前提とした議論の限界とその先を行く仮想世界」 岡嶋裕史 

デジタルアイデンティティはすでに日常に遍在している 

 デジタル空間では「私を私だと証明すること」が現実世界より難しい

アイデンティティ管理には大きく3つの種類がある 

人間の意思決定とAIの意志決定のどちらに従うのが正しいのか? 

Web3の中核技術である「ブロックチェーン」は記録システムにすぎない 

Web3に夢を見すぎてはいけない 

結局は第2のGAFAを生むだけ 

ブロックチェーンに付きまとう「オラクル問題」 

生活の中心は現実世界であるという前提はいつまで続くのか? 

よき「デジタルビーイング」はどうあるべきか? 

正解のない世の中だからこそ選択肢が必要 

「デジタルアイデンティティを安心して預けられるのは行政だという信頼を」 沢しおん 

安心して行政にデジタルアイデンティティを預けられるのか? 

ふるさと納税、2拠点生活とデジタルアイデンティティ 

広がる自治体のサービス格差 

デジタルアイデンティティのコントロール問題 

メタバースでも現実世界同様のルールメイキングが求められる 

アバター同士のトラブルをAIが解決する?

アバターのアイデンティティをどう扱うか? 

AIにどこまで代理をさせるのか? 

デジタルアイデンティティ=国民 

「おぎゃー」と赤ちゃんが生まれたら、フルオートでライフステージを支援 

「自分が自分である」ということを担保してくれるのは誰か? 

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