男性は女性ほど着圧ソックスになじみがないが、現在ある男性用着圧ソックスが好調に売れている。段階着圧ソックスブランド『メディキュット』から発売された『メディキュット for MEN 着圧ナイトソックス ショート』(以下、メディキュット for MEN)のことである。
2023年2月に発売された『メディキュット for MEN』は、男性の脚の悩みに特化して開発。履いて寝るだけでよく、朝起きたときには脚のケアができてしまう。
サイズはMサイズとLサイズの2つで、カラーはブラック。発売から約3か月(2月13日〜5月31日)までの累計出荷本数が10万本を超えた(レキットベンキーザー・ジャパン調べ)。
重ねに重ねた消費者調査
『メディキュット』といえば女性向けの印象が強いが、2012年11月に初の男性用『メンズメディキュット リフレッシュソックス』(以下、メンズメディキュット)を発売している(現在は終売)。『メディキュット for MEN』はこれに続く男性用になる。
『メディキュット for MEN』が企画されたのは、発売の3年近く前のこと。なぜ企画・開発されることになったのか? 『メディキュット』ブランドの商品を企画・開発・販売するレキットベンキーザー・ジャパンの鈴木涼平氏(マーケティング本部 アシスタントブランドマネージャー)はその理由を、「新たな需要を開拓し新しいユーザーを獲得するため」と話す。
レキットベンキーザー・ジャパン
マーケティング本部
アシスタントブランドマネージャー
鈴木涼平氏
『メンズメディキュット』は販売が時期尚早だったところがあり、終売になってしまった。しかし、時が進むにつれて男性の健康意識が向上。コロナ禍で生活習慣が変わり、脚に不快感を感じる男性に脚ケアニーズが高まってきていた。
開発に当たり同社は、消費者調査を繰り返し実施する。商品コンセプト、消費者コミュニケーション、価格……などとテーマを設定し、10回は実施した。
男性用着圧ソックスに関し、これほど消費者調査を実施した例はなかった。「過去にチャレンジしたことがあるとはいえ、消費者に直接聞いてみないとわからないことがいろいろありました」と鈴木氏は振り返る。
消費者調査から得た気づきの1つが、男性にとって脚のケアの優先順位は低いことだった。鈴木氏は次のように説明する。
「女性は美容意識が高く、脚を細く見せたり不快感をなくしたりすることへの意欲が旺盛です。履いてスッキリ美脚に見えるよう着圧アイテムを活用していただけるのですが、男性は脚の太さなどほとんど気にしていません」
男性が気にするのは主に不快感。だからといって、不快感を取るために何かをするわけではなく、脚をケアすることについての熱量は女性より低いという。
そこで『メディキュット for MEN』は、履いて寝ると脚がスッキリするという観点から開発を進めることにした。
厳しかった男性モニターの反応
『メディキュット』では、足首からふくらはぎにかけてかかる圧力を徐々に変えていく段階着圧をコア技術に採用している。『メディキュット for MEN』では段階着圧に加え、ふくらはぎの筋肉に沿ってテーピング加工を施し筋肉をホールドするUカーブテーピングも併用。筋肉をホールドしつつ着圧をかけた。
さらに、アーチサポート着圧を採用。足の甲から土踏まずの部分を囲むようにして着圧がかかるようにした
ふくらはぎの筋肉に沿ってテーピング加工を施したUカーブテーピング(左)と足の甲から土踏まずの部分を囲むようにして着圧がかかるアーチサポート着圧(右)
このほか、男性は足の臭いを気にする人が多いことから、かかと部分を除く足のところだけ抗菌防臭加工を施すことにした。寝ている間に履くものなので、蒸れにくくなるよう薄くてストレッチ性の高い素材を採用し通気性を担保した。
このような工夫が盛り込まれた『メディキュット for MEN』だが、開発ではR&Dチームと協力工場が連携し試作を無数に制作。社外モニターを交えて検証した。検証で長さや圧力、装着感などを確かめ、得られた結果をR&Dチームにフィードバックし素材や編み方の調整を繰り返した。
男性モニターの反応には、厳しいものがあったという。鈴木氏はこう振り返る。
「男性は女性に比べ着圧ソックスに親しみがないこともあり、履いて寝るだけでいいことに対し期待値が高いところが見受けられました。締め付けが強すぎたり弱すぎたりしないか、暑くて寝苦しくならないか、寝ている間に脱げないか、といった点で厳しく評価されました。とはいえ、想定していたよりは良く評価していただけました」
立ち食いそば店とのコラボ
販促では、商品の存在を知ってもらうためにテレビCMの放映や交通広告の出稿、X(旧Twitter)を活用したキャンペーンを実施。加えて、コアターゲットとした30代、40代のビジネスマンが利用しやすいスポットとコラボした。
そのスポットとは、飲食店が集まる東京・渋谷の『渋谷横丁』と、首都圏を中心に店舗展開する立ち食いそばチェーンの『名代富士そば』(以下、富士そば)の2つ。どちらも2023年4月から期間限定で実施した。
コラボでは、『メディキュット for MEN』の公式キャラクター『メディキュットGメン』を活用。渋谷横丁では卓上に『メディキュットGメン』が登場するポスターを掲示したり店内のデジタルサイネージに広告を流したりした。富士そばでは店内に『メディキュットGメン』が登場するポスターを掲示した。
コラボの手応えとして鈴木氏は、「発売から間もない段階での商品認知度の拡大に寄与したと捉えています」と明かす。