AI与信管理クラウドサービス「アラームボックス」を提供するアラームボックスでは、2022年12月1日~2023年11月30日の期間に収集された1万3496社・24万4689件のネット情報等から、1年以内に倒産する危険性がある〝要警戒企業〟を分析して抽出。「倒産危険度の高い上位10業種」として発表した。
本稿では、その概要をお伝えしていく。
倒産可能性の高い業種ランキング
調査結果詳細
■1位 農業:84社に1社が倒産する危険性あり
これまでの調査でも何度か1位になった農業だが、今回は業歴の長い企業や新興企業でも倒産と支払い遅延が発生しており、倒産危険度の高い業種となった。
コロナ禍の業務用需要の減少や、高騰した飼料の影響により資金繰りが悪化した企業が息切れ倒産を起こしていると考えられる。
コロナ禍による需要減少に落ち着きは見えたものの、飼料穀物の海外依存度の高さや燃料費高騰による生産コストの増加、過剰生産といった業界課題は依然として残っており、引き続き警戒が必要だ。
■2位 繊維・衣服等卸売業:92社に1社が倒産する危険性あり
アパレル業界の商社部門である繊維・衣服等卸売業が前回の8位から順位を上げ2位となった。倒産や事業停止が発生したほか、粉飾決算の情報が数社出ていた。
コロナ禍の長期化による衣料品の需要低下や海外企業との競争激化により収益が低下したことで、資金繰りが悪化した企業が新たに資金を調達するために粉飾決算を行なったと考えられる。
業況が芳しくない企業と取引する際は、決算書以外にも評判などの情報を加味した与信管理が重要だ。
■3位 職別工事業(設備工事業を除く):98社に1社が倒産する危険性あり
前回の調査でも7位だった職別工事業が3位に。主に下請けとして内装工事や塗装工事を行なう事業者に倒産が発生していた。
昨今は、円安やウクライナ問題により燃料費や建築資材の仕入れが高騰しており、元請業者との価格交渉ができない企業は採算性が低下している。
また、業界内の人手不足が進んでおり、外注費による利益低下や受注量の減少も影響。さらに2024年4月からは働き方改革関連法の時間外労働規制が適用開始になることで人手不足が進行して、倒産リスクが高まる恐れがある。
■4位 電気業:104社に1社が倒産する危険性あり
2022年6月から開始した本調査で常にランクインし続けている電気業が、今回も4位となった。
2016年の電力自由化により発電所を持たない新電力と呼ばれる電力小売り会社が多く台頭。大手企業の出資により設立された企業もあったが、原油や液化天然ガスなどの燃料費が高騰した結果、電力の仕入価格が高騰し採算性の取れない事業者が倒産に陥るなど、電気業でも円安による燃料費の高騰が倒産リスクを高める要因となっている。
■5位 繊維工業:107社に1社が倒産する危険性あり
前回の調査で1位だった繊維工業だが、今回は5位となっている。コロナ禍により収益が低下していたなかで、円安によって輸入コストや海外工場の製造コストが上がったことで、資金繰りが限界に達した企業で倒産が発生していた。
また、アパレル業界全体の業況が厳しい中で、小売りや卸などの関連会社が倒産したことで連鎖倒産した企業も見られた。
倒産した企業の中には、支払い遅延の情報が発生後数か月で倒産した例もあり、取引先の支払い情報や関連会社の倒産には注意が必要だ。
■6位 総合工事業:108社に1社が倒産する危険性あり
2021年3月頃から始まっている木材価格の高騰「ウッドショック」の影響や、円安による関連資材の高騰を理由とした資金繰りの悪化による倒産、支払い遅延や連絡難など倒産リスクが高まっていることを示唆する情報が多く発生していた。
また、不正会計や反社会的勢力との関与といった不祥事が報じられたのち倒産している企業が散見され、今後はコンプライアンス面での与信チェックも重要と考えられる。
■7位 運輸業:119社に1社が倒産する可能性あり
洗濯・理容・美容・浴場業と同数で、運輸業が7位にランクインした。燃料費や人件費の高騰などの理由から以前より不安視されていた運輸だが、価格転嫁できなかった中小規模事業者で倒産が発生していた。
また、運送業の給与未払いや倉庫業の家賃滞納など、資金繰りの悪化を示唆する情報が散見された。運輸業では、2024年に働き方改革関連法により、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限され、ドライバー不足がさらに加速する「2024年問題」が差し迫っている。
■7位 洗濯・理容・美容・浴場業:119社に1社が倒産する危険性あり
運輸業と同数で、洗濯・理容・美容・浴場業が7位にランクイン。昨今は美容サロンの競争が激化しており、倒産やサービス停止の情報が発生していた。
美容エステや脱毛サロンは契約時に高額な料金を前払い、もしくはローンを積み立てることが多く、突然のサービス停止により金銭トラブルになっているケースが散見された。
新規会員の受け入れ停止や返金トラブルに関する書き込みなど、ネット上に発生する倒産の予兆と考えられる情報を常にウオッチして、トラブル回避につなげることが重要になる。
■9位 印刷・同関連業:131社に1社が倒産する危険性あり
印刷業や出版業、それらを補助する企業が属する同業界だが、近年は紙媒体に対する需要が低下しており市場規模が縮小している。
今回の調査では経営基盤が盤石ではない中小企業のうち、取引先を一部の業界に特化していた企業に倒産が発生していた。
取引先企業が同グループ内や一部の業界に集中している場合、取引先企業の影響を大きく受けることから、取引先企業の重点顧客情報なども収集することが未回収リスクを抑えることに繋がってくる。
■10位 金融商品取引業,先物取引業:132社に1社が倒産する可能性あり
投融資に関連する企業で倒産が発生していた。また、関連企業に訴訟や詐欺の疑惑があるといった警戒すべき情報がある企業もあった。
証券会社や投資会社は関連企業を持っていることも多く、直接取引のある企業だけでなく、子会社や同代表者の法人の情報を収集することで正しく与信を管理することが重要だ。
調査結果まとめ
前回の調査でもランクインしていた6業種が、今回も10位以内にランクインした。
これらの業種は、コロナ禍で悪化した資金繰りが物価高や人手不足などの影響でさらに悪化した結果、倒産リスクが高止まりしている。
コロナは5類感染症に移行され、社会は脱コロナの動きが加速化している。一方で、ゼロゼロ融資によって過剰債務を抱えた企業は新たな資金調達が困難な中、ゼロゼロ融資の返済本格化や「2024年問題」の影響を受けることで、息切れ倒産が増加していくことが予想されている。
このような不安定な市況において、企業は、取引先の継続的な与信管理を行うことが経営を安定化させる上でも重要となる。
なお、本調査で上位にランキングされた業種の企業の中にも財務状況や企業体質が良好な企業はあるため、あくまで適切な個社ごとの判断をするためにも、動向や倒産リスクをタイムリーに把握できる与信管理体制や仕組みを整えた上で取引することを推奨したい。
調査概要
調査期間/2022年12月1日〜2023年11月30日
対象企業/アラームボックスでモニタリングしていた企業のうち1万3496社
対象データ/アラームボックスで配信されたアラーム情報24万4689件
構成/清水眞希