2枚のディスプレイを折りたたんで持ち運べる「Yoga Book 9i」
Lenovo Legion Goに並び登場したもう1つのデバイスが「Yoga Book 9i」。そもそもレノボのYogaシリーズは、一般的に2in1 PCと呼ばれる、キーボードが約360度回転することで、柔軟性のある使い方ができるシリーズ。今回のYoga Book 9iにて、より創造性を刺激する、新しいデザインへと昇華しています。
Yoga Book 9iは、閉じた状態では一般的なノートPCに見えますが、開くと2枚のディスプレイが連なっています。ディスプレイは13.3インチの有機ELを2枚搭載し、いずれも解像度は2.8K(2880×1800)と高精細。最大輝度は400ニトで、表示領域は約92%にも及びます。
実際に目にしても、ベゼルはほとんど気にならず、2枚の大きなディスプレイを並べているような感覚で使用可能。名前の通り、本のように見開くことができます。
近年はスマートフォンやノートPCにて、ディスプレイを折りたためる〝フォルダブル〟と呼ばれる製品が続々と登場しているのに対し、Yoga Book 9iはディスプレイを2枚搭載した、ある意味単純なデザイン。片側が13.3インチと比較的大画面であり、1つのコンテンツを2画面にまたがり表示する機会は限られると想定されるため、つなぎ目部分はあまり気にしなくてよいかも? と感じています。
1枚のディスプレイを折りたたむ方式を選んだ結果、故障のリスクが増えるのであれば、ディスプレイを2枚に分けることは有効だと思われます。
Yoga Book 9iを本体単体で使用する場合、物理キーボードの代わりに、片側の画面に仮想キーボードを表示して文字入力ができます。ディスプレイにキーボードが表示されているだけなので、一見打ちにくい印象も受けますが、実際に触ってみると、触覚フィードバックもあるため、想像以上にしっかりとタイピングできます。
それでも仮想キーボードには抵抗があるという場合、同梱されるBluetoothキーボードを使えばOK。Bluetoothキーボードは、ディスプレイの片側へ重ねるように配置できるほか、2枚のディスプレイを見開きにして、手前にキーボードを配置することで、モニターとキーボードのような距離感でも利用できます。購入時にはキーボードのほか、ディスプレイを立てかけるためのカバースタンド、専用のタッチペンも同梱されます。
搭載CPUは第13世代インテル Core i7-1355U、メモリは16GB、ストレージは1TB。スペック的には一般的な高性能ノートPCに近しい構成となっており、初期搭載OSもWindows 11であるため、ユニークな製品ながら、使い方に極端に迷う心配もほぼないでしょう。
ただし、指8本でタッチして仮想キーボードを表示、5本指でタッチしてアプリを全画面表示するといった、独自のショートカットもあるので、これらを〝完璧に〟使いこなすためには、ある程度の慣れが必要になりそうです。
販売価格は直販サイトで38万2800円~。特徴的なデザインの製品ということもあり、決して安価とはいえませんが、革新的な製品が好きな人、よりクリエイティブな作業をノートPC1台で行いたい人などには、ぜひ試してほしい製品です。
革新的デバイスの普及に期待
PCゲーム人気の中、徐々に製品数が増えているハンドヘルドゲーミングPC市場向けには「Lenovo Legion Go」を、参入メーカーがまだ限られていて、今後の展開を期待される折りたたみPC市場には「Yoga Book 9i」といったように、レノボは従来のPC市場とは一線を画す製品を2つ同時に発売したことになります。
PCでできることが多様化していく一方で、各メーカーから発売されるデスクトップPC、ノートPCがほとんど同じデザインになっています。「使いやすい、完成された形」ともいえますが、ニッチなニーズに特化した製品が登場してくることで、デバイス、コンテンツの双方がより進化していく可能性は大いにあります。また、各社から新しい製品が発売されることで、価格面でも競争が起きていくでしょう。
Lenovo Legion GoとYoga Book 9iは、どちらも万人におすすめできる製品ではありませんが、実際に触ると、完成度の高さや革新性を存分に味わえるデバイスになっています。ほかの人とはちょっと違う、こだわりのPCをお求めなら、ぜひ一度手に取ってほしいPCです。
取材・文/佐藤文彦