街乗りにも自在に使えるお気軽さが心地いい
2021年3月、ここに来て順調な成長を続けてきているロイヤルエンフィールドは、日本初となるブランドショールームを東京都杉並区に開設している。現在では正規販売店が全国に20店舗ほどあり、2023年にはJAIA(日本自動車輸入組合)に加盟して日本のマーケットにしっかりと根付こうとしているのだ。その積極策のお陰だろうか、JAIA加入後の1月にはいきなり100台ほど販売し、輸入バイクのシェアの4%を獲得。その人気を支えていたのがハンター350、メテオ350、クラシック350といった中型ライセンスでも乗れるモデル。メーカーによれば今年1、2月の販売台数は、強力な輸入車ブランドが揃う中で5位といったポジションにあるというのだ。ライバルとなるホンダGB350やヤマハSR400といったクラシカルの雰囲気を活かしたネイキッドバイクが人気であると同時に、在庫が品薄という現状が影響した結果だろう。やはり若者たちを始め、こうしたクラシカルな雰囲気のバイクをファッションアイテムのように考える人たちにとって、さらりと英国風味を味わうことが出来る点は大きな魅力なのだろう。
確かに今年3月から日本での販売がスタートした「ハンター350」は、クラシカルなスタイルと新鮮さを感じさせる鮮やかなカラーリングをバランスさせて独特の存在感を完成させている。単に渋さを売り物にするのではなく、古典と最新の融合を狙ったところに“肩肘張らないバイクライフ”をさりげなく演出できている。バイクというとどうしても一部のマニアだけの世界観で語られたり、ことさらに特別な存在としての主張が多くなり、敷居の高さがある。だが、このハンターを見ているとラーダーのファッションも乗り方もライフスタイルもなにも規定しない、フリーダムを感じる。
実は感覚こそ、バイクが根本的に持っている最大の魅力なのです。思い立ったらお気に入りのファッションに身を包み、ヘルメットをポンと被って、気軽に走り始める。排気量1000ccを越えるビッグバイクにありがちな“ある種の心構え”も“出掛けるための理由付け”も不要。ちょうどいいサイズのちょうどいい排気量のバイクは、そんな軽い感覚にぴったりのまさにファッションアイテムとしてピッタリだ。
さらにその感覚を増幅しているのが350ccクラスという排気量。最近ではハンター350だけでなく「メテオ350」や「クラシック350」といったニューモデルを投入し、ブランド人気の中心的ラインナップとなっている。3モデルともに排気量349cc空冷単気筒SOHCエンジンとフレームを共有しながら、一見古そうに見える外観のディテールを少しずつ変えることで、それぞれの個性を創り出している。
実際に走り出しても軽快で細身のボディ、そして軽やかにして穏やかなパワーの出方をする単気筒エンジンのフィールと、トコトコトコと言った適度な鼓動感を感じながらの走りには、のんびりという表現がぴったり。その上でイザとなればトルクフルに加速していく感じは、ストレスを感じることもなくスムーズだ。パワーの出方が自然なため、アクセル操作で神経質になる場面もない。ちょっとした近所の散歩、自転車でいうところのポタリングのような使い方から、思い立てば高速のクルージングを楽しみながらロングツーリングのパートナーまでも十分に努めてくれる。まだクルマも持てずに過ごしていた学生時代、バイクだけが自由への足がかりのように感じて頼りにしていた頃の、なんとも懐かしい感覚が蘇ってくるのである。そして、その頃に憧れたトライアンフ、ノートン、BSAといった英国車の味をこんなにも簡単に、気軽に楽しめる存在をとても愛おしく感じたのである。
ガソリンタンクのカラーリングによって華やかさを加えることで、クラシカルなバイクにありがちな重々しさは希薄になる。お尻がちょっと持ち上がったスタイルは軽快感あり。
神経質な操作性はほとんど不要で、マイルドな出力特性が心地いいエンジン。また単気筒独特の鼓動感も楽しめる。
シート高790mmで、前方に行くほどシートは絞り込まれている。見ただけでも足つきの良さが理解できる。
アナログの丸型メーターは中央にデジタルディスプレイをレイアウトし、必要な情報を分かりやすく伝えてくれる。
ニーグリップ部分を凹ました容量13リットルの燃料タンクが目をひく。
(スペック)
モデル名:ハンター350
価格:664,400円~(Rebel Blue/税込み)
ボディサイズ(mm):全長×全幅×全高:2,100×800×1,055
シート高:790mm
ホイールベース:未公表
車重:181kg
駆動方式:チェーン駆動
トランスミッション:5速MT
エンジン:空冷4ストローク単気筒SOHC 349cc
最高出力:14.9kW(20ps)/6,100rpm
最大トルク:27Nm(2.8kgf・m)/4,000rpm
燃費:未公表
問い合わせ先:各ディーラ宛
URL:https://www.royalenfield-tokyoshowroom.jp/dealers/index.html
TEXT : 佐藤篤司
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。