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クリスマスが過ぎると世間は年末モードに突入する。師走の忙しさも終わりを見せ、今年はのんびりと年越しができるかなと思いを巡らせる季節だ。同時に、ふと「最近、少し疲れているかも?」と感じるタイミングでもある。
イライラ、睡眠不足、肩こり……症状は人それぞれだが、病院に行くほどでもない「ちょい不調」。小さな症状でも自分の体調にきちんと向き合わないと40代、50代と年齢を重ねるにつれて頑張りが利かなくなるという。今回はこうした「ちょい不調」への向き合い方と漢方薬にまつわる素朴な疑問を慶應義塾大学医学部漢方医学センター医局長の堀場裕子先生に話を聞いた。
なかなか治らない「なんとなく疲れている」に漢方薬がいい?
日本人の9割が「ちょい不調」を感じている
実際に「ちょい不調」を感じている人はどれくらいいるのだろうか。総合医薬品メーカーの全薬工業が2022年に実施したストレス調査によると、約9割の人が日々の生活の中でストレスによる「ちょい不調」を感じているという結果が出ている。症状としては「イライラする・怒りやすい」「疲れやすい」「不安になる・気分の落ち込み」を感じている人が多い。
あいまいな体調不良に対応できるのが漢方薬の強み
今回、話を聞いたのはこの方
堀場裕子(ほりば・ゆうこ)先生
慶應義塾大学医学部 助教・漢方医学センター医局長。 日本東洋医学会専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。日本漢方生薬ソムリエ。女性ヘル スケアアドバイザー。2003 年、杏林大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部・産婦人科学教室入局。大学病院並びに関連病院勤務を経て、2011 年より慶應義塾大学医学部漢方医学センターへ。 現在は、同センター医局長として外来や、研修医の指導に携わりながら、慶應義塾大学病院の婦人科外来も担当している。
――早速ですが、「ちょい不調」へのアプローチとして漢方薬はひとつの選択肢になるのでしょうか
堀場先生:はい。そうなんです。
みなさんが普段飲んでいるお薬(西洋医学の薬)は、ある症状に対してピンポイントで治療することを目的としています。一方で、漢方薬は、その症状がどこから来るのか原因を探ります。例えば、「頭痛」でも冷えから来るものもあればストレスが原因のものもあります。あるいは血行が悪いからかもしれません。
漢方では、こうした症状の原因に対して治療を行ないます。一人ひとりに合わせて症状の根本にある体質を治療するという考えなので、いろいろな症状がちょっとずつ出ているような「なんとなく体調が悪い」という場合にも治療のアプローチができるんです。
――確かに、頭が痛いときに市販の鎮痛薬を飲みますが、またすぐ再発することがありますよね
堀場先生:もちろん、それも病気に対するアプローチの一つとしては正解です。でも、根本原因を治療しないとずっと同じ症状に苦しむことになりますよね。
また、漢方薬では「頭痛」「胃もたれ」「便秘」など複数の症状が出ている際にも1種類の漢方薬でアプローチができる場合があります。西洋医学では複数のお薬を飲む場合がほとんどですよね。
――とはいえ「ちょい不調」で病院に行くのは少し抵抗感がありますが……
堀場先生:そのようにおっしゃる患者さんはすごく多いです。あとは「何科に行けばいいのか分からない」とかも多いです。漢方は、診断名がつかない症状でも処方することができるので、「ちょい不調」でも相談していただければと思います。漢方専門医のいる病院、クリニックであれば問題ありません。
また、最近はドラッグストアでも市販の漢方薬が購入できます。ご自身で調べて漢方薬を試してみるのもいいと思います。
若いころは少し体調が悪くても寝てれば治るかもしれません。しかし、年齢を重ねると体力や免疫力も低下するので放っておいて治すのも難しい。そういった時に、漢方薬というアプローチがあると知ってもらえれば幸いです。
――ありがとうございます。年末年始は普段とは違う生活リズムや行動が増え「ちょい不調」が増える時期です。この時期におススメの漢方を教えてください。
堀場先生:そうですね。年末年始はお酒の量も増え、二日酔いに苦しむ方も多いと思いますが、そんな時には「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」がいいと思います。二日酔いになってからでも効果はありますが、なる前に飲むと二日酔い予防になります。
初詣で夜中に長時間、外出するという場合は「葛根湯(かっこんとう)」を飲んでから出かけるのがいいでしょう。体がポカポカして、風邪の予防になります。
寝正月になってしまい腰が痛いというときには「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」という漢方があります。これは関節痛のほか、泌尿器科系のトラブルや耳鳴り、眼精疲労にも効果があり人気の漢方薬です。
親戚一同が集まる場所に行くのは緊張してしまうという方は「抑肝散(よくかんさん)」がおすすめです。抑肝散は過緊張に効く漢方なので、大事なプレゼン前に飲むビジネスマンも多いんです。
漢方は予防的にも飲むことができます。症状が出てから飲んでも効果がありますが、つらい症状が出る前に飲むことを私はおすすめします。
――ありがとうございました