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こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
宇宙イチ分かりやすい法律解説を目指しています。
裁判例をザックリ解説します。
社員のXさんが社長に呼ばれてデスクに行ったところ、バンっ!離職票を机の上に置かれました。社長はそのまま社長室に閉じこもります。
なんじゃコイツ……。Xさんは解雇予告手当を求めて提訴。解雇予告手当とは、ザックリいうと、いきなり解雇された時にもらえるお金のことです。
裁判で、社長は「Xさんは自主的に退職しました」と主張しましたが、裁判所は「いや、コレは解雇だね。「会社は解雇予告手当23万円を払え」と判断。
以下、事件とともに解雇予告手当とは何かを分かりやすくお届けします(アサヒ三教事件:東京地裁 H6.6.30)。
※ 争いを一部抜粋して簡略化
※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
登場人物
▼ 会社
・英会話学校を経営(8校)
▼ Xさん
・アルバイト(カウンセラー業務)
・基本給 約20万円
どんな事件か
▼ 経営悪化
会社は経営状態が悪化し、従業員への給料遅配が続いていました。Xさんについては、入社当初から給料遅配がありました。そしてついに2回目の不渡り手形を出し、銀行取引停止処分を受けました。ビジネスとして試合終了です。
▼ 従業員がブチギレる
給料の遅配に、ついに外国人の従業員がブチギレます。彼らが組合を結成してストライキなどを行なったため、英会話学校すべてが休校となりました(当時の従業員数は約37名)。
▼ 社長に呼び出される
―― Xさんは「解雇された」と主張されていますが、社長に呼ばれた時の状況は、どんなものでしたか?
Xさん
「その頃は出勤しても仕事がほとんどない状態でした。ある日、出社してタイムカードを押そうとしたところ、社長に手招きされたんです。社長のところへ行くと、彼は、机の上に私の離職票を叩きつけるように置いたんです」
―― 何たる仕打ち!そのあとは?
Xさん
「社長はそのまま社長室に閉じこもってしまいました……」
▼ 訴訟を提起
Xさんは「この社長の行為は即時解雇だ」と主張して、解雇予告手当を求めて提訴しました。
▼ 解雇予告手当とは
会社は、解雇するには30日以上前に解雇を予告しないとダメなんです。
労働基準法 20条
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない
Q.
「チミ、今日で解雇ね!」と言われた場合は?
条文のつづき
30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない
A.
即時解雇と呼ばれるものですね。ザックリいうと会社は1ヶ月分の給料を払う必要があります。これが解雇予告手当です。