「ご尽力」は「尽力」の丁寧な表現ですが、単語を使う上での留意点を例文とともに解説します。ビジネスシーンで使える類語も紹介します。
目次
「ご尽力」は「尽力」の丁寧な表現です。目上の人が自分に力を尽くしてくれた際は、「ご尽力いただきありがとうございました」と感謝を示しましょう。
ご尽力を使う上での留意点を例文とともに解説します。ビジネスシーンで使える類語もチェックしましょう。
「ご尽力」にはどのような意味がある?
「尽力」や「ご尽力」は、ビジネスシーンでよく見聞きする言葉です。どちらも、「力を尽くす」という意味がありますが、使う対象が異なります。
■「尽力」の意味と読み方
「尽力」の読み方は「じんりょく」。「尽」と「力」の二つの漢字で成り立ちます。
- 尽(じん):全てを出し切る・尽きる
- 力(りょく):力・働き・作用・勢い
漢字を見ても分かるように、「尽力」とは、自分の持っている力を出し切ることを意味します。似た言葉に「努力(どりょく)」がありますが、意味や使い方に若干の違いがあります。
- 尽力:主に他者や社会のために力を尽くすこと
- 努力:主に自分のために力を尽くすこと
■「ご尽力」の意味
「ご尽力(ごじんりょく)」は、「尽力」に接頭辞の「ご」を付けた言葉です。「尽力」は「自分が力を尽くす」ことであるのに対し、「ご尽力」は「相手が力を尽くす」ことを意味します。
- 自分が主語のとき:尽力
- 相手が主語のとき:ご尽力
相手への敬意が込められており、ビジネスシーンでは目上の人や取引先、お客さまに使用するケースが多いでしょう。「ご尽力いただきましてありがとうございます」など、感謝の言葉を伴うのが一般的です。
ご尽力は、精いっぱい力を尽くすことを意味するため、「ご尽力願います」と依頼するのは失礼に当たります。サポートや協力を依頼する際は、「お力添え」を使いましょう。
■「ご尽力」を英語にすると
「ご尽力」は、相手の努力や支援に感謝を示す言葉です。英語では「effort」や「assistance」などが対応する表現として使われますが、ビジネスシーンでは「Thank you for your efforts」や「We appreciate your assistance」が自然です。
また、「Thank you for your continued support」などと表現することで、より丁寧な印象を与えることができます。相手への敬意や努力に感謝する表現として適しています。
「ご尽力」の使い方と例文
仕事やビジネスシーンでは、「精いっぱい頑張ります」「努力します」と伝えるよりも、「尽力」を使った方がふさわしい場面があります。目上の人から力を借りたときは、「ご尽力」という表現を適切に使い、感謝の気持ちをしっかりと伝えましょう。例文と使い方のポイントを解説します。
■自分が尽力する場合
自分の意気込みや決意を伝える場合は、「尽力いたします」や「尽力する所存です」という表現を使います。「一生懸命頑張ります」よりもフォーマルな表現なので、ビジネスシーンにふさわしいでしょう。
【例文】
- 1日でも早く戦力になれるように、尽力する所存です
- お客さまのご期待に添えるように、尽力してまいります
自分の過去の努力に対して「尽力してまいりました」「尽力しました」と言うのは、適切ではありません。
また、「力の限り尽力する」「尽力を尽くす」「尽力を注ぐ」は、同じ意味の言葉が重複する『二重表現』で、相手に違和感を与えます。
■相手のご尽力に感謝する場合
上司や先輩、目上の人、取引先などからサポートを受けたときは、「ご尽力いただきありがとうございます」と伝えましょう。一方で、サポートをお願いするときには、尽力ではなく「お力添え」を使います。目上の人に「尽力」を強制しないように、表現には細心の注意を払いましょう。
【例文】
- プロジェクトの運営にご尽力いただきまして、誠にありがとうございます
- 展示会を無事に開催できたのも、皆さま方の並々ならぬご尽力のおかげです
- ご尽力いただいたにもかかわらず、失敗に終わってしまい、誠に申し訳ございません
■メールでの「ご尽力」の使い方のコツ
メールで「ご尽力」を使う際には、相手の働きや支援に対する具体的な感謝を示すと効果的です。「お忙しい中ご尽力いただき、誠にありがとうございます」とすることで、相手への感謝の意を強調できます。
また、取引先への挨拶文などでは「ご尽力に感謝申し上げます」としても丁寧です。相手の努力を尊重し、前向きな成果に対する期待を込めて表現することが大切です。
「ご尽力」の類語・言い換え表現もチェック
「ご尽力」の類語には、「粉骨砕身」「ご支援」「お骨折り」などがあります。相手や場面に応じて、最も適切なものを使いましょう。例文を挙げ、それぞれの意味と使い方を解説します。
■粉骨砕身
「粉骨砕身(ふんこつさいしん)」は、古代中国の書物『禅林類纂(ぜんりんるいさん)』に由来する四字熟語です。「粉骨」は骨を粉にすること、「砕身」は身を砕くことを意味し、転じて、骨身を犠牲にして一生懸命努力することを表す言葉になりました。
文面だけでなく、話し言葉としても使えるため、就任のあいさつや決意表明で使う人も少なくありません。
【例文】
- 市民の皆さんのために、粉骨砕身の覚悟で取り組みたいと思います
-
シェア拡大に向けて、粉骨砕身していく所存です
- 会社の発展のため、粉骨砕身の思いでまい進してまいります
■ご支援
「ご支援(ごしえん)」は、「支援」と接頭辞の「ご」から成り立ちます。相手に支援を受けたときは、「ご支援いただきまして、ありがとうございます」と感謝を伝えましょう。相手に力を借りたいときは、「ご支援のほどよろしくお願いします」と表現します。
なお支援とは、活動の一部を支えることであり、全面的な援助ではありません。ビジネス上の支援には、融資や資金提供といった金銭面のサポートも含まれます。
【例文】
- 平素よりご支援を賜りまして、誠にありがとうございます
- 今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます
- 皆さまからの温かいご支援は、私たちの大きな励みとなりました。心より感謝申し上げます
■お骨折り
「お骨折り(おほねおり)」は、「骨折り(ほねおり)」に接頭辞の「お」を付けた表現で、苦労することや努力することを意味します。ご尽力とほぼ同じ意味と考えてよいでしょう。相手が自分のために時間や手間をかけてくれた際、感謝の気持ちを込めて、お骨折りという言葉を使います。
また、相手のサポートもむなしく、結果的にうまくいかなかったときは、謝罪の気持ちを込めて「お骨折りいただいたにもかかわらず…」と表現します。
【例文】
- お骨折りいただいたにもかかわらず、結果を出せずに終わってしまい、申し訳ございません
- 私のためにお骨折りくださり、ありがとうございました
- 師匠のお骨折りのおかげで、公演が実現しました
■お力添え
「お力添え」は、相手が支援やサポートをしてくれることに対する感謝やお願いを、親しみを込めて表現する言葉です。「ご尽力」に比べて柔らかい印象を与え、特に協力依頼や感謝の場面で用いられます。
取引先や同僚との関係性を考慮しつつ、改まった依頼の際にも効果的です。依頼や感謝を伝える際に、「お力添えいただけますと幸いです」などの表現で、相手への配慮を示すことができます。
【例文】
- この度は多大なお力添えを賜り、誠にありがとうございました
- お力添えいただきましたおかげで、無事に業務を完了できました
- 今後ともご指導とお力添えのほど、よろしくお願い申し上げます
- 新しいプロジェクトにおいても、変わらぬお力添えを賜りますようお願い申し上げます
■ご協力
「ご協力」は、相手の協力に対して感謝や礼を表すため、依頼やお礼のシーンで幅広く用いられる一般的な言葉です。特定の業務やプロジェクトの遂行にあたり、スムーズな進行を可能にするために、相手の支援に敬意を込めて使われます。
「ご協力いただけると助かります」などで、相手への負担を考慮しつつ協力をお願いすることも可能です。依頼時や感謝の表現として汎用性が高い言葉です。
【例文】
- ご協力いただき、無事にイベントを成功させることができました
- 本日はお忙しい中、ご協力いただきまして、誠にありがとうございます
- プロジェクトの進行にあたり、多大なご協力を賜り、心より感謝申し上げます
- ご協力のおかげで、スムーズに業務を進めることができました
構成/編集部