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株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)、株式会社電通デジタル、イグニション・ポイント株式会社は、経営戦略と人事戦略をつなぎ、企業の人的資本経営を支援するトータルHR(データドリブン人事)ソリューション「HUMAnalytics(ヒューマナリティクス)」を提供しています。このソリューションは、人事システム基盤、コンサルティング、データ分析の全てを包括しており、人事部門の課題に一気通貫で対応することができます。
なぜ今、三位一体のトータルHRソリューションが求められているのでしょうか。プロジェクトに携わったISIDの二ノ宮雄将氏、電通デジタルの山田健氏、イグニション・ポイントの福井雄貴氏にインタビューを実施。「HUMAnalytics」の開発経緯や、その独自性について話を聞いていきます。
データドリブン人事への変革を目指し、PDCAをしっかり回す
Q.「HUMAnalytics」は、ISID、電通デジタル、イグニション・ポイントの3社が提供するトータルHRソリューションとのことですが、どのような課題から「HUMAnalytics」の開発に至ったのでしょうか。
二ノ宮:私はISIDに入社後、業務効率化を図る基幹人事システム「POSITIVE」を担当し、2023年からは新サービスの企画も兼務していました。ですが、「POSITIVE」のご提供を行う中で、クライアント企業さまのマネジメント層は従来型のオペレーショナルな人事よりも、もっと経営と一体となった人事戦略の推進や、データドリブンで実現する人事に関心があるように感じていました。そこで、「POSITIVE」をベースとしたシステム開発とプロジェクト全体統括をISIDが、データアナリティクスを電通デジタルが、人事課題の抽出・戦略策定をイグニション・ポイントが担い、3社で新たなソリューションを開発することになりました。
株式会社電通国際情報サービス
二ノ宮 雄将氏
HCM事業部ビジネスデベロップメントユニットHCMサービス企画開発部/シニアプロデューサー
Q.「HUMAnalytics」は、既存の基幹人事システムとどのような点が違うのでしょうか。
山田:ISIDが開発した統合HCMソリューション「POSITIVE」は、人事・給与・就業管理やワークフローに加え、タレントマネジメントの管理ができる基幹人事システムです。既に2,700社を超える企業に導入され、非常に有用なシステムとして広く活用されています。
一方、昨今ではHR(人的資源)データを用いて人事業務をより高度化しようという動きが高まっています。AIやデータドリブンなビジネスへの変革が加速する中、より高度な意思決定、最適化された人事のためにデータを活用する。そんな新たなフェーズに差し掛かっているのです。こうした背景を受け、「POSITIVE」やその他人事システムに格納されたHRデータを活用し、もう一歩先の提案を行うのが「HUMAnalytics」です。
最近は、タレントマネジメントツールなど、一部の機能に特化したツールの普及も進んでいます。ただ、こうしたツールは特化している分、限られた領域を対象としている印象です。その点、「HUMAnalytics」は、戦略・基盤・データ分析をメニューとして備えており、人事部門の課題に一気通貫で対応できるのが特徴です。
株式会社電通デジタル
山田 健氏
データ&AI部門 / 部門長補佐、プロダクトマネジメント事業部 / 事業部長
Q.「HUMAnalytics」は、戦略型コンサル、データビジュアライゼーション、データアナリティクス、伴走型コンサルという4つのサイクルを回していくのが特徴だとうたっています。それこそが、このソリューションの大きな強みということでしょうか。
山田:そうですね。人事データを活用し、PDCAをしっかり回せる点が特徴です。従来の人事システムでは、このサイクルが分断されていました。例えば「タレントマネジメントを高度化したい」という場合、人事評価システムなどを導入することは可能です。しかし、そこからデータをどのように検証し、どうやって施策に落とし込むかは、あらためて自社で検討したり、コンサルティング企業に依頼したりする必要があったのです。また、人事データを収集・可視化できても、分析を深めていくためには、外部のデータベンダーの力を借りることが必要になります。人事領域においては、さまざまなプレーヤーの得意分野が細分化されているため、人事部門は複数のプレーヤーと向き合わなければなりませんでした。
そこで「HUMAnalytics」では、4つのサイクルをひとつながりにしました。基幹人事システムとして実績のある「POSITIVE」やその他人事システムに格納された人事データを収集・可視化し、人事課題と照らし合わせてデータプラットフォームを作る。そして、電通デジタルが得意とするデータ分析を行う。さらに、イグニション・ポイントがクライアント企業さまの人事課題について目標やKPIを設定し、どのような手を打つか戦略を立てる。この3社が協働したことで、4つのサイクルを実現できたのです。
人事部門の高度化に対応できる人材育成もサポート
Q.「POSITIVE」をベースとした人事システム基盤をISID、データ分析は電通デジタル、人事戦略の課題抽出やロードマップ策定はイグニション・ポイントが担っているわけですね。このソリューションにおいて、イグニション・ポイントのコンサルティング力はどのように発揮されているのでしょう。
福井:人事課題のコンサルティングでは、データ活用の“前”と“後”に課題があるというのが共通認識です。何のために、何をゴールとして人事データを活用するのか。そして、データの分析結果をどのようにして人事施策や実行できる仕組みに落とし込んでいくか。今、多くの企業では採用時の適性検査の結果に基づき、新卒社員を何パターンかのペルソナに分類したり、ハイパフォーマーを分析したりしています。ですが、表に出ている成功事例の裏には、データ分析したもののそこで終わっているケースもたくさんあります。
そのため、「HUMAnalytics」では、何のために人事データを活用するのか、人事部門の何を高度化したいのかという課題を見つけるところから、データの分析結果に基づく施策の提案・実行・改善までサポートします。このように、今まで手が届き切っていなかった領域までカバーするのが、イグニション・ポイントの役割です。
さらに、こうしたソリューションでは、データ分析や人事施策の提案・実行ができる人材を育てることも重要なので、人材育成のサポートにも対応しています。
イグニション・ポイント株式会社
福井 雄貴氏
コンサルティング事業本部 ワークデザインユニット
人的資本経営が求められ、企業の人材戦略が大きく変化
Q.皆さんは統合HCMソリューションの提供、コンサルティングなどさまざまな形で企業の人事部門と接点をお持ちです。人事部門が抱える課題として、共通項はありますか?
山田:どの企業も「生産性が上がらない」「研修の効果が分からない」「異動配置が属人的になっている」「内定の歩留まり率が見えない」など、さまざまな人事課題を抱えています。こうした課題に対し、これまでは人事部門が属人的に対応してきましたが、昨今はビッグデータ分析やAIによるデータドリブン人事に注目が集まっています。ただ、表面的にデータを分析しても、的を射た人事施策は打ち出せません。「今の人事制度の在り方で本当にいいのか」「データの取り方はこれでいいのか」とコンサルティング領域まで落とし込んでいく必要があると感じています。
福井:外的要因としては、上場企業を中心に2023年度から人的資本の情報開示が義務化されたことも大きな課題です。これは、簡単に言うと「経営戦略と連動し、人材戦略を投資家やステークホルダーに開示しなさい」「オペレーショナルに人事制度を運用するだけでなく、これからは戦略的に改善していく姿勢を示しなさい」ということ。とはいえ、オペレーション人事に注力していた企業は、何をどうすればいいのか分かりませんよね。「HUMAnalytics」は、こうした課題にも対応しています。
二ノ宮:クライアント企業さまに足を運んでいると、オペレーショナルな領域を担う人材よりも、人事の企画・戦略に携わる方々の比率が少しずつ上がってきているように感じます。人事制度を策定でき、なおかつITの知見を持ち合わせた人材が人事部門に必要だと浸透してきたからかもしれません。ただ、まだまだそういった人材が少ないのが各社の課題ではないかと思います。
Q.人事は専門職ですが、“人事のプロ”はなかなかいないということでしょうか。
福井:というより、ここにきて、人事部門に求められるものが変わり始めているのだと思います。「オペレーショナルな人事領域」というと、ただ制度を運用しているだけのように聞こえるかもしれませんが、人事は専門性が高く、非常に重要なポジションです。採用面接も限りなくヒューマンスキルが求められる仕事ですし、労務に関しても人間関係とルールの間でうまく折り合いをつけなければなりません。そもそもオペレーショナルな領域をしっかり対応できるという時点で、その人材は非常に高い専門性を発揮しています。
ただ、昨今はデータドリブン人事への変革に取り組む企業が多く、従来の業務にプラスしてデータ活用や人事施策の提案が求められるようになっています。もともと専門性の高い部署でしたが、“攻めの人事”にシフトしようとしている過渡期に差し掛かり、経営戦略などにも目を向ける必要性が生じてきたのです。
私たちがコンサルティングをする中でも、多くのクライアント企業さまから「プロ人事がいない」「“攻めの人事”をしたいけれど、社内にはそれができる人材がいない」「新たに採用しようとしても、ほとんど見つからない」というご相談をいただきます。人事系のプロフェッショナル人材の需要が高まっているにもかかわらず、これまでオペレーショナルな、いわば“守りの人事”を重視してきた文化があるため、そういった人材が不足しているのではないかと感じます。こうした課題をお持ちの企業に対しても、お力になれればと思います。
他部門も巻き込んだ横断的な人事改革が必要
Q.人事部門が変革を迎えているということは、このソリューションのターゲットも人事担当者とは限らないのでしょうか。どんなイメージを抱いていますか?
二ノ宮:ISIDもそうですが、今、人事部門と事業部門が連携して取り組みを進めている企業は増えているのではないでしょうか。採用や育成、人材の配置などは、今や人事部門だけでは決められません。事業部門も巻き込まなければなりませんし、経営戦略も絡んでくるため経営企画部門も関わってきます。関係する部門は確実に広がっていると思います。
山田:人的資本情報開示の義務化となれば、IR部門も関わってきます。フェーズにもよりますが、人事部門に限らず、経営企画部門、事業部門も巻き込んで人事施策を立てるようになっていくと思います。
Q.今後、「HUMAnalytics」をどのように進化・普及させていきたいですか?
山田:現状では、ISIDの統合HCMソリューション「POSITIVE」を導入済みのクライアント企業さまのご意見を伺いつつ、幅広い人事課題をサポートできたらと考えています。将来的には、さらにコンサルティング領域を強化し、今以上のフレームワーク化も検討していきたいですね。
二ノ宮:まさに今、クライアント各社さまと商談を進める中で、その課題がどの企業にも共通しているのか、それとも個別の課題なのか、模索している段階です。共通している課題については、テンプレート化やプロダクト化を検討していきたいですし、個別の課題についても私たちのソリューションの範囲を広げたり、変化をさせながらアジャイルに対応していけたらと思います。
福井:先ほども話に上がったように、今は人事の在り方が変化しつつあるタイミングです。こうした変化の中で、クライアント企業さまが本当に求めているのは何なのか、どんな悩みがありどのようなソリューションが求められているのか。まずはそれを見極めていくことが、直近のゴールだと捉えています。その先に、山田さんがお話されていたような新しいフレームワーク化が実現できたらと思います。
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上場企業に対する人的資本開示の義務化など、人事を取り巻く環境は今、大きく変わりつつある。「人事の課題をあらためて見直したい」「採用・育成・配置・評価など幅広い領域でデータを活用したい」など、企業によって直面している問題も大きく異なるだろう。「HUMAnalytics」のようなサイクルを通じて企業価値向上につなげることができるトータルHRソリューションを導入することが、課題解決の一助となるかもしれない。
※本記事の記載内容は2023年11月取材当時のものになります。
※引用されたデータや状況、人物の所属・役職等は本記事執筆当時のものです。
※こちらの記事はビジネスを成長させる「変革のヒント」をお届けするマーケティング情報サイト「Transformation SHOWCASE」からの転載記事になります。
(C)Transformation Showcase.