半導体の求人数は13倍に跳ね上がった
ラピダスの行く手を阻むものは数知れませんが、課題の一つとなるのが人材不足です。
リクルートは、半導体関連エンジニアに関する求人と転職の動向について調査しました。2013年1-6月の求人数を基準の「1」とすると、2023年1-6月は12.8倍と大幅に伸長しています。
※リクルート「「半導体関連エンジニア」求人、10年で12.8倍に増加」より
求人数の推移を地域別に見ると、ラピダスが本拠地を構える北海道エリアが5.36倍でトップ。次いで九州・沖縄が5.21倍と続きます。
※リクルート「「半導体関連エンジニア」求人、10年で12.8倍に増加」より
日本は海外の半導体企業が相次いで進出することを決めました。その一つがTSMC。熊本県に新工場を設立して2024年からの稼働を予定しています。九州・沖縄の求人数が2020年度を境に急増しているのはそのためでしょう。
岸田首相は今年5月にインテルやサムスン電子、マイクロン、IBM、Applied Materials、imecなど半導体の主要企業を首相官邸に呼び、意見交換会を開催しました。その内容は公開されていないものの、対日投資の拡大や補助金による支援などの考えを述べたのではないかと言われています。今後も海外のメーカーが日本に進出して人材の取り合いが激化する可能性があるのです。
マイクロンは広島工場に5,000億円を投じ、2025年以降にDRAMの開発・製造を行なうと発表。サムスン電子は神奈川県に研究拠点を設けるとの観測があります。
12月4日には、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOと岸田首相が面会。日本に開発拠点を設け、安定供給する体制を整えるなどの意向を引き出しました。
産業界には嬉しいニュースが飛び出る一方で、人材不足の加速懸念があります。
企業のニーズに合致したスキルを持つ人材を高専が育成
地域間の産学官連携による半導体人材の育成は進んでいます。その一つが九州の半導体人材育成等コンソーシアム。TSMCやソニー、ルネサスエレクトロニクスなどの企業が、大学や高専に人材ニーズを伝達。ニーズを踏まえる人材を供給するというもので、経済産業省や熊本県、文部科学省がそれを支援しています。
現在、九州や沖縄の9高専でエンジニアとプログラマーの創出に力を入れています。半導体分野における設計やプロセスインテグレーションに必要なスキルセットを整理し、それに合致した能力開発を行なっているのです。
熊本大学は半導体・デジタル研究教育機構を設置し、半導体分野の教育・研究を統括する体制を整えました。
半導体産業は、国策を担う人材の育成が急務となっています。
取材・文/不破聡