半導体は、日本の経済の行く末を左右する極めて重要な産業となりました。
11月29日に可決した2023年度補正予算の歳出総額はおよそ13兆2,000億円。そのうちの1割に当たる1兆5,000億円を半導体の生産能力増強に充当する計画です。
巨額支援の中心にいるのがラピダス。ラピダスは2022年8月、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社の共同出資しによって設立された先端半導体の国産化に向けて設立された企業です。IBMが製造技術を持つ2nmのロジック半導体の大規模生産を行ないます。
ラピダスの目指すべき姿ともいえる会社TSMCの業績は好調。ラピダスは日本の将来を担っているといっても過言ではなく、決して失敗はできません。
ポイントとなるのは、半導体人材不足の解消です。
半導体人材の育成はどうなる?
2nmロジック半導体開発の何がすごいのか?
半導体は、ロジック半導体やメモリ半導体、パワー半導体などに分けられます。
日本企業が強みを持つ領域がパワー半導体。日本はこの領域で25%程度のシェアを持ち、三菱電機や富士電機、ルネサスエレクトロニクスなどが参入しています。自動車や電車、太陽光発電装置など、人々の生活を支える様々なものに使われています。
ラピダスが大量生産化を目指しているのはロジック半導体。スマートフォンやパソコンの中央演算処理装置として搭載されるもので、超最先端技術が要求される領域です。ロジック半導体の生産には工場一つ当たり、1兆円以上の巨額の投資が必要だと言われています。
半導体は設計するファブレスと、大量生産するファウンドリーに分かれます。ラピダスは大量生産を担うファウンドリー。現在、2nmの半導体を大量生産する会社はありません。
サムスンは4nm、インテルが7nm、日本は40nm程度です。いち早く3nmの量産体制を確立したのが台湾のTSMC。ファウンドリーにおいてシェア50%を超える企業で、TSMCなしに半導体産業を語ることはできません。ラピダスはこの牙城を崩そうとしているのです。
従業員を6万人以上抱える超巨大企業が営業利益50%
大量生産化に漕ぎつけることができれば、凄まじい利益をもたらすのは確実。
TSMCの2023年7-9月期の売上高は5467億台湾ドル。日本円でおよそ2兆5000億円です。2022年の通期売上高は2兆2,638億台湾ドルで、9兆7,500億円に及びます。
売上高もさることながら、稼ぐ力も驚異的。営業利益率は50%程度もあるのです。
日本の企業だと、工場のオートメーション化に必要な製品を提供するキーエンスが営業利益率50%を超えていますが、この会社は工場を持たないファブレスであり、営業がメインの会社。設備投資を僅少に抑えているため、高利益体質を維持しています。
その一方で、TSMCは工場に巨額の投資を行ない、全世界で6万を超える人々を雇用しています。
Appleやクアルコム、NVIDIAなどの名だたる会社と取引し、どれほど複雑な半導体を設計しても、TSMCであれば実現してくれると言われています。
スマートフォンなどの生活に欠かせない製品に必要なものだけでなく、AI技術を支えるGPUを生み出す上でもTSMCの技術は欠かせません。他社には真似できない技術力が高収益体質の源泉です。
ラピダスは台風の目となる可能性を持った超期待の存在なのです。