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ファクタリングは中小企業の救世主となるか?スタートアップが請求書買取サービスで挑む金融サービス革命

2023.12.18

「完璧」を目指さず、実行しながら一次情報を取りに行く

ペイトナーファクタリングの事業モデル。

当然、仮説の前提となる情報に間違いがあれば、事業は誤った方向に進んでしまう。そこで仮説の精度を高めるために行なったのが、リサーチの段階では間接的な情報ではなく一次情報に当たること。金融機関での審査ロジック構築経験のある有識者やユーザーなどから直接ヒアリングをするなど、現場に近い情報を取得した上で判断することを徹底した。

その結果として、従来はお客様が実際に実在しているかどうかを確認する目的で、ハガキを送付したり電話をかけたりしていたが、それをより簡単に早く確認できるSMS認証に代替。質に多少の差はあるが、目的を達することができる。また、提出書類に関しても、従来のファクタリング事業者の「請求書を送ってきた取引先からのメール」「決算書類」「契約書」といった膨大な資料を求めることなく、「請求書」「本人確認書類」「銀行の口座履歴」の3点のみに集約した。

「とはいえ仮説は仮説であり、クリティカルな一次情報が見つかると大きく方向性が変わることもある。デスクワークでリサーチや計画に時間をかけ過ぎてはスピード感をもって事業を成長させることはできないと痛感しました。そこで僕らが指針としたのは、Meta(旧Facebook)社のスローガンとして知られ、ペイトナーのバリューにも拝借した〝Done is better than perfect(完璧よりも完了を目指せ)〟という言葉です。

仮説を立てて実際にやってみると、その結果から新たな一次情報が得られるため、そこからより良い方向性が見えてくる。ですから熟慮して完璧な対策を目指すのではなく、とにかく一度やってみる。このサイクルは有効だったと思います」

■ペイトナーファクタリングの強みとは?

こうして既存の常識を疑い仮説検証と軌道修正を繰り返す中で、ペイトナーファクタリングは他社のサービスと比べた時に3つの強みを実装した。

(1)シンプルな審査

1つ目は、前述のとおり審査が圧倒的に簡単なこと。先の例で示したように他社のサービスで見られるような電話確認やWEB面談などを必要とせず、提出書類も、請求書、免許証などの本人確認書類、銀行の口座履歴の3点のみでいい。

(2)入金までのスピード感

2つ目に、審査から入金までが早いこと。他社には審査通過後、入金が翌日になるようなサービスもあるが、ペイトナーファクタリングは30分以内の審査完了・入金までをひとつの指標としており、審査完了と同時に入金が行われる。

(3)手数料の明示

そして3つ目は、安心して利用できること。ファクタリング業者の中には、手数料があらかじめ明確でなく、後から高額の手数料がかかるようなケースもある。それに対してペイトナーは、手数料を「債権の10%と振込手数料250円」とあらかじめ明示することで、利用者
の不安を取り除いている。

キャッシュの「入」と「出」を押さえ、「お金のストレスがなくなる」世界へ

ペイトナーのメンバー。野呂さん(左上)、代表の阪井さん(右上)。

顧客アンケートにおいて「他の人にすすめたい」と回答された割合で計測を行うNPS(Net Promoter Score=顧客ロイヤルティ)も、銀行業・クレジットカード業などではそれぞれの業界平均が−40ポイント程度であるなどマイナスが当たり前の中で、継続して+30ポイント超という数字を叩き出し、リピーターも多い。

■「ファクタリングを〝卒業〟してほしい」という思い

事業としては望ましい状況だが、「利用者のみなさんには、いつかはファクタリングを〝卒業〟してほしい。融資でキャッシュフローが回るなら、そのほうがビジネスとしては成長しやすい」と野呂さん。

ファクタリングは、資金繰りの急場を凌ぐためのサービスであり、経営者や個人事業主にとっては手数料の負担の観点では決して常に良い選択肢とは言えないからだ。

■目指すのはお金のストレスをなくすための提案

「ペイトナーファクタリングの利用者にヒアリングしてみると、そのうちの一定数がリアルなキャッシュフローについて把握する方法として使っているのは『銀行口座の残高の推移』だけで、未来の資金が不足するタイミングまで把握できていない実態があることもわかりました。

この状況を解決するために、今後僕らのほうでお金の『入』と『出』の情報、つまり顧客のキャッシュフローを推測できるデータを利用者の日常業務の中で自動的に集めて、『この時点でこれだけ不足するので、こんな方法で資金を準備すべきです』と提案できるようなサービスを提供したいと考えています」

それを実現するためのひとつのステップとして、2022年9月にはユーザーが仕入れ先などから受け取った請求書を送付するだけで、手間のかかる経理処理や振込を自動化できる「ペイトナー請求書」というサービスを開始した。

同サービスは取引先への振込を行う口座を、サービスが連携するGMOあおぞらネット銀行に切り替えるだけで、月額0円・振込手数料1件300円と場合によっては実質的に振込手数料が安くなった上で業務効率化できる。短期的に自社の売上に貢献する事業モデルではないが、これもまたお金のストレスをなくすことから逆算した結果だという。

あくまでもビジョンドリブンでユーザー起点のサービスをとことん追求する姿勢を崩さない。「もう少し時間がかかりますが、最終的な姿はとても魅力的だと信じることができています」という、その今後の動向にも注目したい。

野呂祐介(のろ・ゆうすけ)氏
ペイトナー株式会社
共同創業者
最高執行責任者(COO)
1993年、愛知県生まれ。南山大学経済学部卒業後、株式会社NTTドコモ入社。 地方自治体をはじめとした法人向け営業職を経て、IoT領域の製品企画・販売促進・アライアンス業務に従事する。2019年7月にペイトナーへ参画。プロダクトマネジメント、事業開発、マーケティング、財務経理など事業に関連する業務を統括する。Forbes 30 UNDER 30 ASIA 2023 選出。

取材・文/稲本 圭

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