座りたい衝動に駆られるバスを見つけた。
いつものバスの座席の前にリアルモニターやハンドルが備え付けられ、足元にはブレーキとアクセルペダル。バスの運転席がそっくりそのまま再現されている。
こどもより大人の方が大興奮!
これは、新潟交通が今年10月から実施している「こども運転席」。実際に街を走るバスの一席を改造し、まるで運転士になったかのような気分を味わえるスペシャルシートだ。
約1年間にわたり、新潟市内のバス路線を走行するというこのシートは一躍SNSで話題になり「大人だけど乗ってみたい」と、こどもより大人の方が興奮しているコメントが多数見られた。
世代を超えてワクワクする企画はいかにして生まれたのか?新潟交通(株)乗合バス部・企画調整課の山田さんに話を聞いた。
――こども運転席誕生のきっかけを教えて下さい。
「きっかけは現場のバス運転士から「運転席の後ろの席にこどもが座りたがっていたが、大人が座っていて座れなくて残念そうにしていた」というエピソードでした。バス好きなこども達のために、またこれからバスに興味を持っていただくためにも、こどもたちの「特等席」を用意してみようと動き出しました」
――仕様もかなり本格的です。
「それもこだわりました。実際にバスに装備されている前方カメラのリアルタイム映像を特設モニター画面に映し出し、速度計などの「計器類」、ドアの開閉など運転士が乗務中に操作する『スイッチ関係』、アクセルやブレーキなどの「操作ペダル」も再現し、運転席に似た空間を表現いたしました。バスの動きに合わせてハンドルを握ることでアトラクション感覚でお楽しみいただくことも可能です」
現在、こども運転席を体験できるバスは1台のみ。県内の小学生を対象としたバスのラッピングコンテストの優秀作品で彩られた「こどもデザインラッピングバス」で夢の運転席を味わうことができる。
ラッピングバス自体は来年10月頃まで実施するとのことだが、こども運転席の設置期間は故障の場合を除き、無期限だとか。こんなワクワク感はいつまでも続いてほしい。
――お客さんの反応は?
「バスの動きに合わせてハンドルを触ったり、ブレーキペダルを踏んでみたり、『疑似運転体験』をしながら楽しんでいただいているようです。また、移動手段としてではなく、こども運転席を『目的』に乗車されるご家族連れも増えてきました。子育て世代はもちろん、『県外の孫が帰省したときに乗せてあげたいから運行スケジュールを教えてほしい』など様々な世代に認知されてきているように感じます」