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「吹聴」の読み方と意味
『吹聴』は難読漢字の一つです。読み方が難しいだけでなく、言葉の意味が想像できない人も多いのではないでしょうか?読み方や意味、使い方を例文とともに解説します。
■「すいちょう」「ふうちょう」は誤り
吹奏楽(すいそうがく)や吹田市(すいたし)など、『吹』は音読みで『すい』と読みます。吹聴を『すいちょう』と読んでしまいがちですが、正しい読み方は『ふいちょう』です。
実際、吹を『ふい』と読む用語はほとんどなく、読み方を間違える人は少なくありません。火力を強めるための送風装置の一種を『吹子(ふいご)』といいますが、なじみがない人が多いのではないでしょうか?
吹聴は、周囲に言いふらしたり、広めたりすることを意味します。吹という漢字からも、話をあちこちに広めて回る様子を想像できるでしょう。
■皮肉を込めて使われる
彼女は気晴らしのために他人の悪口を吹聴している」という表現は、皮肉を込めて使われることがあります。ただし、「吹聴」には「広く多くの人に知らせる」という本来の意味があります。内容としては、うわさ話や他人の悪口、自慢話などが含まれることもあります。
「ほらを吹く」という表現は、でたらめ話を大げさに語ることを意味し、「吹聴」の「吹」とは異なるニュアンスがあります。
「山田さんがミーティングの日程を吹聴している」や「先生が無農薬の重要性を吹聴している」といった文脈では、「吹聴」は事実や実務の伝達として正しく使われています。
■「吹聴」の例文
吹聴は日常的にあまり見聞きしない言葉なので、使い方が分からない人も多いでしょう。一般的には『吹聴する』『吹聴される』『吹聴して回る』などの動詞表現で用います。日常会話で使われる機会は少なく、新聞や公文書、書籍などの文面で多く登場します。
<例s文>
- 同僚に事実無根のうわさ話を吹聴され、会社に居づらくなった
- 他人の悪口を吹聴する人は、人として信用できない
- 吹聴した内容によっては、解雇につながる可能性がある
「吹聴」の類義語・似た表現は?
吹聴の類義語・似た表現には、『喧伝』『流言』『暴露』『触れ回る』などがあります。それぞれ言葉の意味が若干異なるため、場面に応じて使い分けましょう。
■喧伝
『喧伝(けんでん)』とは、盛んに言いはやして、世間に広めることです。『喧噪(けんそう)』や『喧嘩(けんか)』という言葉があるように、『喧』には、騒がしい・やかましいという意味があります。難読漢字の一つであり、『せんでん』と読み間違える人が多いようです。
吹聴は、うわさ話や悪口をひそひそと言い回るのに対し、喧伝は『世間に言いはやす』のが特徴です。いくつか例文をチェックしましょう。
<例文>
- ネットでは、2年後に大規模な地震が起こるといううわさが喧伝されている
- 新聞を通じて、〇〇会社の不祥事は大々的に喧伝された
■流言
『流言(りゅうげん・るげん)』の意味は、根拠のないうわさ話を言いふらすこと、またはそのうわさ・デマです。
大規模な災害や戦争が起こった後は、根も葉もないうわさが広まりやすく、情報に振り回される人が続出します。流言は、ネガティブな社会現象として捉えられる傾向があります。
<例文>
- 「動物園から猛獣が脱走した」という流言が広まり、人々はパニックに陥った
- 流言蜚語に惑わされず、真実を見極める必要がある
『流言蜚語(りゅうげんひご)』とは、事実とは異なる伝聞を意味する四字熟語です。『流言』と『蜚語(飛語と表記する場合もあり)』は、世間に飛び交う根拠のないうわさ話を指します。
■暴露
『暴露(ばくろ)』とは、秘密や悪事を暴いて明るみに出すこと(出ること)を意味します。吹聴と異なり、話を人々に言い広める意味は含まれていません。一般的に、物事が暴露された後は、人々によってうわさ話が吹聴されます。
暴露の対象は主に、悪事・不正・秘密・恥・弱点・関係性などの『人には知られたくないこと』です。
<例文>
- メディアによって、宗教団体と政権との深いつながりが次々と暴露されている
- 本人が嫌だと言っているのに、他人の秘密を勝手に暴露してはならない
■触れ回る
『触れ回る(ふれまわる)』は、うわさ話などを方々に言いふらしながら歩くことです。吹聴と同じくネガティブなニュアンスがあり、皮肉を込めて使われるのが一般的です。また、あちこちに告げ知らせて回ることを『触れ歩く(ふれあるく)』とも表現します。
<例文>
- 彼は学校中に私のうわさ話を触れ回っている
- 誹謗中傷とは、ありもしない嘘やうわさ話を触れ回り、他人を傷つける行為である
なお、触れ回るには、触れを伝えて歩くという意味もあります。『触れ(ふれ)』や『お触れ(おふれ)』とは、官府から一般民衆に出す命令や通達です。現代ではほとんど耳にしない言葉でしょう。
「吹聴」を使うときの注意点は?
吹聴はネガティブなニュアンスがある言葉だけに、使い方には十分注意する必要があります。「吹聴している」と軽々しく口にすると、人間関係のトラブルが生じる恐れもあるでしょう。
■使う相手とシーンの見極めが必要
吹聴は、第三者の行為を皮肉るマイナスの表現です。例えば、会社で「彼女は自分の営業成績を偉そうに吹聴している」などと周囲に漏らせば、自分自身も人のうわさ話や悪口を吹聴していることになってしまいます。
本人の耳に入って人間関係に亀裂が生じたり、周囲に『陰口を言う陰湿な人』という印象を与えたりする恐れがあるため、人前で吹聴という言葉を軽々しく使わないように気をつけましょう。
また、吹聴はあくまでも第三者の行為に対して使う表現で、本人に「あなたはよく吹聴する人だ」という言い方はしないのが一般的です。批判的な意味合いが強く、敬語表現はありません。
構成/編集部