東京23区内で最もレベル10企業があるのは「文京区」
スタートアップ企業は全国で都市部を中心にさまざまな振興策などが講じられているものの、現状として大多数は東京23区内に集積している。
そこで、東京23区のなかでSPモデルにおいて最も高い成長性が表れた“レベル10”を有する地域をみると、「文京区」が69.4%で最も高かった。
文京区にあるスタートアップ企業の約7割が高い成長性を見込まれていることを意味しており、東京大学の本郷キャンパスを中心とした活発な産学連携などが要因にあるとみられる。
他にも、多くの大学があり距離が近く、オープンイノベーションが期待できることから文京区を選ぶというスタートアップ企業の声も聞かれ、都心部にある好立地も要因のひとつであろう。
文京区としても先進的技術を有する団体等へ事業実施に向けた支援プログラムを用意するなど、サポート面も整備が進んでいる。
また、23区のなかでスタートアップ企業が最も集積している「渋谷区」では69.1%、「港区」では68.1%と続き、いずれも高い成長性が見込まれる企業が多数集まっている結果となった。
次いで、バイオ・ヘルスケアやライフサイエンス領域が多く集まる「中央区」は67.7%。都心部から近いことに加えて比較的土地が広く、ハードウェア系の研究開発拠点が多く集まる「江東区」(65.7%)も上位となった。
■スタートアップ企業の多くが高い成長性を予測、一方で倒産は増加傾向に
企業の成長性予測モデル「SP」を用いて分析した結果、分析対象企業の全体と比較してスタートアップ企業には成長が期待できる企業が多く存在していることがわかった。
特に「レベル10」は全体で6.87%にとどまる一方、スタートアップ企業では62.35%と高水準だ。なかでもモビリティなど注目の業種では高く、地域別では文京区がトップとなるなど、さまざまな特色が表れた。
さらなるスタートアップの創出に向けて、今後は国を挙げて支援策を加速させていくとみられる。しかし、サービスが軌道に乗る前に人件費や開発費などのコストが資金繰りを圧迫し、法的整理による倒産に追い込まれた事例も少なくない。
実際に、2023年1-9月期のスタートアップ企業倒産は前年から倍増近い32件となり増加傾向にある。過去にベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けた企業も含まれており、成長を期待されたものの事業が急に傾いたケースも見られた。
また、スタートアップ企業は倒産ではなく休廃業を選択するケースが多いとの声も聞かれ、実際に事業停止となった件数はさらに多い可能性がある。加えて、事業を継続しながらも大規模なサービス転換を行う「ピボット」は、設立から間もないシード期を中心に頻繁に見られる。
これまでにない革新的なビジネスモデルが最大の武器であるスタートアップ企業にとってはプロダクトマーケットフィット(PMF)の検証が常に必要となるため、大規模な方針の転換には注視が必要だ。
スタートアップ企業に携わる取引先などにとっては、高い成長性に期待しつつも、動向を細かくウォッチする体制が求められている。
倒産件数
関連情報
https://www.tdb.co.jp/index.html
構成/清水眞希