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『ご清聴ありがとうございました』という表現は、言葉の意味と正しい使い方を理解した上で使用する必要があります。くれぐれも『ご清聴』と『ご静聴』を混同しないようにしましょう。言い換え表現や注意点、間違いやすい関連語を紹介します。
「ご清聴ありがとうございました」の意味は?
『ご清聴ありがとうございました』は、プレゼンテーションやスピーチなどで使われるフレーズです。どのような意味があり、どのタイミングで使うのがふさわしいのでしょうか?例文を挙げながら、活用シーンを解説します。
■聴衆への敬意と感謝を表す表現
『ご清聴ありがとうございました』は、聴衆への敬意と感謝を表す表現で、『話を聞いてくださってありがとうございました』という意味です。
『清聴(せいちょう)』とは、他人が自分の話に耳を傾けてくれることを敬う言葉です。さらに、接頭辞『ご』を付け、相手への敬意を示しています。
同僚や部下はもちろん、上司や取引先、お客さまに対しても問題なく使える表現ですが、ご清聴が単独で使われるケースはあまりありません。後には、お礼や感謝の言葉が続くのが一般的です。
■活用シーンと例文
聴衆に対して敬意と感謝を表す表現のため、主に以下のようなシーンで活用できます。スピーチの最後に使うことで、聴衆に話の終了を伝えられると同時に、好印象を与えられるのがメリットです。
- プレゼンテーション
- 講演
- スピーチ
- 結婚披露宴
【例文】
- 逆境に負けず、気概を持って取り組んでいきたいと思います。今後とも、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。
- 以上をもちまして、私のスピーチを終了いたします。皆さま、ご清聴ありがとうございました。
■英語ではどう表現する?
英語で感謝を伝えるときは、『Thank you for~』を使います。スピーチを締めくくる表現は複数ありますが、短い言葉でシンプルに伝えられるものをピックアップして紹介します。
- Thank you for listening.
- Thank you for your attention.
- Thank you for your time and attention.
- Thank you for your patience.
『Thank you for your attention.』の『attention』は注意・注目という意味で、直訳は『注意を向けてくださってありがとうございます』です。『your time and attention』としてもよいでしょう。
『Thank you for your patience.』の『patience』は忍耐や辛抱強さを意味します。最後まで話を聞いてくれたことに対する感謝の気持ちを伝えられる表現です。
使い方のポイントと留意点
『ご清聴ありがとうございました』は、使える場面が限られています。『ご静聴』と混同しやすいため、正しい使い方を事前に確認しておきましょう。TPOに合わせられるように、言い換え表現も覚えておくのが理想です。
■メールや手紙では使えない
清聴の『聴』には、耳で聴くという意味があるため、メールや手紙では使えません。文面では、以下のような表現を使いましょう。
- お読みいただきまして、ありがとうございました。
- ご高覧を賜り、大変光栄に存じます。
- お忙しい中、企画書をご清覧いただきましてありがとうございました。
『高覧(こうらん)』は、他人が見ることを敬う表現です。資料や企画書といった『自分が書いたもの』を見てほしいときは、『清覧(せいらん)』を使います。
なお、プレゼンテーション用の資料やスライドに『ご清聴ありがとうございました』と書き入れる人もいますが、書くだけでなく、しっかりと口で伝えるといいでしょう。
■「ご静聴」との混同に注意
ご清聴の同音異義語に『ご静聴』があります。『静聴(せいちょう)』とは、静かに話を聞くことを意味します。
会場がざわついている際、ゲストや司会者が注意を促す意味で使うのが一般的であり、話し手がご静聴を使うのは違和感があります。プレゼンテーション用の資料やスライドに表記するときは、くれぐれも間違えないようにしましょう。
【例文】
- 司会者:これより、スピーチコンテストを開催いたします。皆さま、ご静聴願います。
- 司会者:以上、〇〇先生のお話でした。皆さま、ご静聴ありがとうございました。
■言い換え表現も覚えておこう
『ご清聴ありがとうございました』の言い換え表現は複数あります。聞き手への感謝を伝えるのであれば、以下のような表現が望ましいでしょう。
- お聞きいただき、ありがとうございました。
- 耳を傾けてくださり、ありがとうございました。
- お時間をいただき、ありがとうございました。
上記の表現は、1対1の面談や私的な会話をした際にも使えます。講演会や披露宴では、「進行をお戻しします」や「どうぞご歓談ください」といった表現が適切な場面もあります。TPOを考えて、臨機応変に対応しましょう。
「清聴」と間違いやすい関連語
清聴と間違いやすい関連語には『傾聴』や『拝聴』があり、どちらも相手の話を聞くことに関連する言葉です。意味と使い方を見ていきましょう。
■傾聴
『傾聴(けいちょう)』は、相手の話に耳を傾け、熱心に聞くことです。ただ単に話を聞くのではなく、『深く丁寧に』『熱心に』というニュアンスが含まれています。
相手の本音を引き出すには、否定したり反論したりせず、共感の姿勢を示すことが重要です。傾聴は、言葉の背後にある真意や感情に配慮する聞き方であり、信頼関係を構築する第一歩といえるでしょう。『相手の話を傾聴するスキル』という意味で、『傾聴力』という言葉が使われる場合もあります。
【例文】
- 〇〇さんの話は、傾聴に値する。
- 専任のカウンセラーが人間関係の悩みを傾聴し、アドバイスをしてくれた。
■拝聴
『拝聴(はいちょう)』は『聴く』の謙譲語で、謹んで聞くことを意味します。相手を立てる表現のため、主に目上の人に対して使いましょう。日常会話はもちろん、手紙やメールでも使用できます。
謙譲表現なので、『ご拝聴』とする必要はありません。清聴と異なり、拝聴は自分の行為にしか使えない点にも注意が必要です。
【例文】
- このたびは先生の演奏を拝聴する機会をいただき、誠に光栄です。
- ご高説を拝聴し、大変感動しました。
『御高説(ごこうせつ)』とは、優れた意見を指す『高説』に、接頭辞『御(ご)』を付けた言葉です。
構成/編集部