アクセンチュアでは世界規模の最新調査「製造業におけるレジリエンス 」を実施。結果を図表とグラフにまとめて発表した。
この調査では、企業は地域のサプライヤーとの関係や生産施設を増強し、混乱に強い体制の構築に取り組んでいることが明らかになった。
また、2026年までに主要品目のほとんどを地域内のサプライヤーから購入する計画の企業は65%に上り、現在の38%から増加することも判明した。
2021年から2022年にかけて企業は年間1.6兆ドルの収益を逃した
アクセンチュア インダストリーX グローバル・エンジニアリング&マニュファクチャリングのリードを務めるセフ・トゥマ(Sef Tuma)氏は、次のように述べている。
「レジリエンスは単に生き残り戦略ではなく成長の機会です。この機会を活かすために、企業はエンジニアリング、供給、生産、オペレーションプロセスのデジタル化を推進すべきです。デジタルツインなどのソリューションや生成AIを始めとするテクノロジーを活用することで、企業は急激な変化に素早く適応し、データに基づいたリアルタイムな対応が可能になります」
本調査によると、企業は2023年に供給・生産設備のデジタル化、自動化、移転のために平均10億ドルを投資し、2026年にこの額は少なくとも25億ドルに増加すると予想されている。
続いてアクセンチュア グローバル・サプライチェーン&オペレーション・レジリエンシーのリードであるスニタ・スリヤナラヤン(Sunita Suryanarayan)氏は、こう話す。
「これまで企業は、コスト効率とジャスト・イン・タイムの納品体制を目指してグローバル規模の複雑な生産体制や供給網を構築してきました。大きな混乱の際に短期的な解決策を素早く施した企業も多くありますが、今こそサイロ化などのボトルネックを解決し、マルチソーシング実現のために生産体制や供給網を戦略的に再設計する時です。データとAIを活用して透明性と俊敏性を高め、持続的なレジリエンスを獲得するチャンスが到来しています」
持続的なレジリエンスの獲得は、多くの企業にとってまだ遠い先の展望だ。本調査の一環として、アクセンチュアはエンジニアリング、供給、生産、オペレーションのレジリエンスを0~100の尺度で測定するモデルを開発。その結果、平均スコアはわずか56という結果になった。
企業がレジリエンスを強化するために注力すべき3分野
本調査では、企業がレジリエンスを強化するために注力すべき3分野を挙げている。
1. 可視性の向上
企業はサプライチェーンや生産プロセスをより一層予測可能で自律的にする必要がある。例えば、サプライチェーンを一気通貫したスマートなコントロール機能でプロセスを監視し、さまざまなシナリオをリアルタイムで分析することで問題を早期に発見し修正することが可能になる。
現在、リアルタイムに近いアラート機能を備える企業はわずか11%で、78%は影響を完全に把握するまでに少なくとも1週間を要している。
2. 設計におけるレジリエンス向上
初期の開発プロセスから可視化する活動を組み込むことで、企業は製品、プロセス、作業方法を最初から正しく把握することができる。
例えば、製品設計者やエンジニアはデジタルツイン(個々の組み立てラインや機械など物理的な生産設備をデジタル上で再現する技術)を使って、プロトタイプの問題や欠陥を早期に特定して解消。生産開始前に設計の修正が可能になる。
3. 新しい働き方の推進
企業は、データ、AI等のデジタル技術に関する社員のスキルアップを図ることで、予測・視覚化ツールを使い現場でデータ主導の意思決定を行なえるようになるだろう。
現在、幅広いスキルを持つ人材やデジタルリテラシーを備えた社員を抱える企業は17%にすぎず、68%が2026年までにそうした人材を確保する予定だと回答している。
調査概要
「製造業におけるレジリエンス 」調査は、エンジニアリング、生産、サプライチェーン、オペレーション部門の経営幹部1230人を対象に2023年1月から3月にかけて実施された。対象国は、日本、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、メキシコ、スペイン、スウェーデン、英国、米国。業種は、航空宇宙・防衛、自動車(OEM)、自動車(付帯設備・部品)、化学、消費財・サービス、ハイテク、産業機器、金属・鉱業、ライフサイエンス、石油・ガス(上流・下流)、公益事業。
関連情報
https://newsroom.accenture.jp/jp/news/2023/release-20231205
構成/清水眞希