特定小型原付区分の電動キックボードは、新しい乗り物である。それ故に、今の時点においても任意保険の数が充実していない。
このあたりで電動キックボードはまだまだ安全な乗り物ではない、という見方もできてしまう。
二輪車に乗る筆者が毎年のように家族から口うるさく言われているのが、「任意保険の更新は済ませたか?」ということだ。
日本の二輪車任意保険加入率は5割を切っているというが、我が家では任意保険未加入での運転は許されていない。
現実問題、モーターのついた乗り物には任意保険がないと心許ないだろう。
既に存在する電動キックボード専用任意保険
保険商品の開発とは、「データの収集・分析」と同義である。
その乗り物に関連する事故が何件発生しているのかを徹底的に調査し、それを基に保険加入額を算出する。言い換えれば、保険とは発案からすぐに商品化できるものではないということだ。
もちろん、最近ではビッグデータを駆使して迅速に保険商品を開発する手も出てきた。それは電動キックボード用保険にも生かされるはずだ。
さて、今年8月にNECファシリティーズが三井ダイレクト損害保険を引受会社とする「電動キックスクーター向けバイク保険」を開始した。
本保険は、電動キックスクーター等の種類・メーカーを問わず申し込むことができます。申込時には、車体を特定できる車台番号、登録番号(ナンバープレート情報)が必要となりますが、最短30分程度で手続きが完了します。補償内容は、対人賠償・対物賠償:無制限のみのプランと、対人賠償・対物賠償:無制限に搭乗者傷害200万円を加えたプランの2つがあります。
(NECファシリティーズ公式サイトより)
対人・対物無制限とは、要は自賠責保険で賄い切れなかった額を「電動キックスクーター向けバイク保険」で賄うということだ。
では、ここで改めて自賠責保険の補償内容を見てみよう。
死亡による損害:最高3,000万円
後遺障害による損害:最高4,000〜75万円(後遺障害等級による)
障害による損害:最高120万円
(国土交通省公式サイトより)
自動車を全く運転したことない人は「これで十分じゃないか?」と思ってしまうかもしれないが、とんでもない。相手の死亡に対して3,000万円、これはまさに「微々たる額」である。
人力走行の自転車による死亡事故ですら、1億円に迫る賠償額が言い渡されているのだ。故に近年では自転車保険に加入する人が増えているが、モーターのついた電動キックボードであれば尚更のはず。現に電動キックボードと歩行者の接触事故も発生している。
しかし一方で、筆者の見た限りでは電動キックボード専用任意保険は未だ数が出揃っていない。「特定小型原付区分の電動キックボードでも加入できる二輪車保険」はあっても、電動キックボードだけに向けた保険というのは現時点では充実していないのだ。