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「差し出がましい」とは?
仕事やビジネスでは『差し出がましい』という表現をしばしば耳にします。TPOに応じて正しく使えるように、読み方や意味を理解しましょう。
■読み方と意味
『差し出る』と『~がましい』という二つの言葉が組み合わさった表現で、それぞれの意味は以下の通りです。
- 差し出る:(身の程をわきまえずに)出過ぎた行動をする・出しゃばる
- ~がましい:~らしく見える・~の傾向がある
『差し出がましい』は「出しゃばっているように見える」という意味の形容詞です。『~がましい』は、動詞の連用形・体言・副詞などに付いて形容詞をつくる接尾辞の一種です。「言い訳がましい」や「恩着せがましい」といった表現は日常会話でもよく使われます。
■「おこがましい」との違い
類似する表現に『おこがましい(烏滸がましい・痴がましい)』があります。「身の程をわきまえない・ばかげている・生意気だ」という意味で、本来の語形は『をこがまし』です。
『をこがまし』の「をこ」には、「愚かなこと・ばかげたこと」という意味があり、『差し出がましい』とは若干ニュアンスが異なります。
- 差し出がましい:おせっかいや余計なこと
- おこがましい:身の程知らずな(みっともない)こと
また、おこがましいは自分の言動にしか使えない点にも注意しましょう。
ビジネスシーンでの使い方
ネガティブな意味の言葉は、使う相手やシーンをしっかりと見極めなければなりません。仕事やビジネスシーンでの使い方を解説します。
■目上の人に対するクッション言葉として使う
『差し出がましい』を目上の人に使う場合は、クッション言葉として言うのが一般的です。クッション言葉は後に続く話の印象を柔らかくする言葉で、代表的なものには「恐れ入ります」「残念ですが」「心苦しいのですが」などが挙げられます。
例えば、上司に進言や反論をする場合、自分の主張をストレートに伝えると角が立つ可能性があります。無礼を承知で意見を述べなければならないシーンでは、『差し出がましいことを申しますが』を添えると、丁寧な印象を与えられるでしょう。話し言葉(口語)と書き言葉(文語)の両方に使えます。
■謝罪や部下の行動をたしなめるときにも使える
『差し出がましい』は、出過ぎたまねをしたときの謝罪や、部下の行動をたしなめるときにも使えます。例えば、会社の重役やお客さまの前で部下がずうずうしい発言をした場合、「差し出がましい発言をするのはやめなさい」と注意できます。
また、立場的にふさわしくない言動を取ってしまった際は、「差し出がましい口を利いてしまいました」と表現しましょう。「申し訳ございませんでした」という謝罪の言葉と一緒に使えば、相手に反省の気持ちを示せます。
「差し出がましい」を使った例文
相手の行動を注意したり、いさめたりする使い方もありますが、仕事では、クッション言葉として活用されるケースが多いでしょう。相手を気遣い、コミュニケーションを円滑にするための表現を紹介します。
■差し出がましいこととは存じますが
仕事では、目上の人やクライアントにも、はっきりと意見を伝えなければならないシーンが多くあります。ストレートに伝えると、相手の面目をつぶしてしまったり、角が立ったりする恐れがあるため、提案・進言・反論・忠告の際には、『差し出がましいこととは存じますが』と添えるのが賢明です。
『存じます』は、「思う・知る」の謙譲語『存ずる』に、丁寧語の『ます』を合わせた敬語です。謙譲語は、自分がへりくだることで相手を高める表現であり、基本的に目上の人に対して使います。
【例文】
- 差し出がましいこととは存じますが、私から一つ提案してもよろしいでしょうか
- 差し出がましいことを申しますが、顧客ニーズを捉えきれていないのではないでしょうか
■差し出がましいお願いでございますが
『差し出がましいお願いでございますが~』は、目上の人に要求や依頼をする際に使います。相手への配慮や申し訳ないという気持ちを示せるため、堂々とお願いをするのがはばかられるときに役に立ちます。
【例文】
- 差し出がましいお願いでございますが、15時までにチェックを完了していただけますでしょうか
- 差し出がましいお願いでございますが、お取り計らいのほどよろしくお願い申し上げます
以下のように、相手にお願いをする際のクッション言葉にはさまざまなバリエーションがあります。相手やシーンに応じて使い分けましょう。
- もし可能であれば
- お忙しいところ恐縮ですが
- ご多忙中とは存じますが
- お手数をおかけいたしますが
- お手間を取らせてしまいますが
「差し出がましい」の言い換え表現は?
同じ表現を繰り返し使っていると、定型文のようになって相手に気持ちが伝わらなくなります。類語や言い換え表現を覚え、TPOに応じて使い分けましょう。
■厚かましい・出しゃばった
『差し出がましい』は、『厚かましい』や『出しゃばった』に言い換えが可能です。『厚かましい』とは、ずうずうしく、遠慮がないことを意味します。『出しゃばる』は、不必要な手出し・口出しをすることです。
どちらも直接的な表現のため、相手に柔らかい印象を与えたい場合やビジネスシーンでは、あまりふさわしくないかもしれません。
【例文】
- 出しゃばるのもいい加減にした方がいい
- 厚かましいお願いで申し訳ございませんが、ご検討のほどよろしくお願いいたします
■僭越ながら
『僭越(せんえつ)ながら』は、目上の人の前で意見を述べる際や、大役を任された際に使う表現です。『僭越(せんえつ)』とは、身分不相応の振る舞いをすることです。
「立場に合わないのは承知していますが、どうかご理解ください」という意味があり、上司や役員に意見する際や、式典のあいさつ・スピーチで使われるケースが多いでしょう。他人の言動には使えない点に注意が必要です。
【例文】
- 僭越ながら、同好会を代表して活動への思いを述べさせていただきます
- 誠に僭越ながら、私の意見を申し上げます
構成/編集部