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顕在化とは
心理学や社会学をはじめとする学問では、『顕在化』という言葉がたびたび使われます。仕事やビジネスシーンでも使われることが多いため、読み方や正しい使い方を覚えましょう。
■隠れていたものがはっきり現れること
顕在化(けんざいか)とは、隠れていたものが、表にはっきりと形として現れることです。なんとなくその兆候はあるものの、まだはっきりとした形で現れていないケースでは、顕在化は使いません。
『顕在』と接尾辞の『化』にはそれぞれ以下のような意味があります。
- 顕在:はっきりと形に現れて存在すること
- 化:形や状態などが別のものに変化すること
顕在と顕在化の違いは、変化の過程が含まれているかどうかです。顕在は『存在している状態』を指すのに対し、顕在化は『存在する状態になること』を意味します。
■対義語は「潜在化」
顕在化と対になる言葉は、『潜在化(せんざいか)』です。『潜在』とは、表面に現れずに内に潜んで存在することを指します。今まで隠れていたものが表に現れる顕在化に対し、内に潜んで見えなくなってしまうことが潜在化です。
顕在と潜在は同じ文脈の中で用いられる場合があります。「潜在的な病理が顕在化した」「潜在ニーズを顕在化する」「顕在リスクと潜在リスク」といった使われ方もするため、両者の意味を取り違えないようにしましょう。
顕在化の使い方と例文
顕在化は、心理学や社会学、ビジネスに関する書籍の中で多く登場します。仕事やビジネスシーンでも当たり前のように用いられるため、正しい使い方を覚えましょう。
■ネガティブ・ポジティブどちらでも使える
顕在化は、「課題が顕在化した」「顕在化リスクに対処する」など、ネガティブな意味合いで使われやすいですが、本来はネガティブ・ポジティブのどちらでも使えます。
そもそも、顕在という言葉自体には、良くないニュアンスは含まれていないため、「本来の才能が顕在化した」という表現をしても問題はありません。
- ネガティブなもの:問題・リスク・病理・損失・対立・被害など
- ポジティブなもの:才能・能力・強み・メリットなど
- ネガティブ・ポジティブに関係ないもの:意識・思考・ニーズ・需要など
■顕在化を使った例文
多くの場合、『顕在化する(した)』『顕在化させる』の構文で使われます。具体的な例文を見てみましょう。
<例文>
- トップの交代後、社内では派閥抗争が顕在化するようになった。
- オンラインショッピングの普及により、物流におけるさまざまな課題が顕在化した。
- 上層部は、社員の潜在的な能力を顕在化する方法を考えなければならない。
- AIの解禁により、多くの分野で倫理問題が顕在化しはじめている。
- 売り上げアップのポイントは、ニーズの顕在化である。
顕在化の類語・言い換え表現
顕在化は、『表面化』『可視化』『表沙汰』などの表現に言い換えが可能です。文脈やシチュエーションに応じて使い分けましょう。言葉の意味や使い方、例文を紹介します。
■表面化
『表面』とは、物事の表立つところです。『表面化(ひょうめんか)』とは、隠れていた物事が表に現れること、または公に広く知られることであり、顕在化とほぼ同じ意味で使えます。
あえて違いを挙げれば、顕在には『はっきりと形に現れて存在する』という意味合いが含まれています。誰の目にも明らかな状態になることが顕在化、表に現れて初めて人に認識される場合は表面化を使うと良いでしょう。
<例文>
- 日頃のフラストレーションが国民の暴動という形で表面化した。
- 本人や家族に自覚がなく、問題が表面化しにくいのが現状である。
- 結婚後、考え方の違いが表面化し始めた。
■可視化
顕在化と可視化は似ているようですが、意味や使い方が異なります。『可視化(かしか)』とは、人の目に見えにくい物事や事象を分かりやすく視覚化することです。手段として、映像・図表・グラフ・数値などが用いられます。
英語でいう『Visualization(ビジュアライゼーション)』であり、ビジネスシーンでは『見える化』と表現されるケースが多いでしょう。
<例文>
- 業務フローを可視化したおかげで、チームの生産性が大きく向上した。
- 先端技術により、宇宙から降り注ぐ粒子の可視化に成功した。
- スキル管理システムを活用すれば、社員の能力やモチベーションを可視化できる。
■表沙汰
『表沙汰(おもてざた)』とは、物事が世間に知れ渡ることです。顕在化はネガティブ・ポジティブの両方に使えますが、表沙汰は、不祥事・対立・問題・事件・内密にしたい関係性といった『知られたくないこと』『ネガティブなこと』に使われます。
<例文>
- 企業ぐるみの不正が表沙汰になり、社長は責任を追及された。
- 問題を認識していながらも、表沙汰にならないように隠蔽していた。
- 表沙汰にならないだけで、日本でも被害に苦しんでいる人がいる。
構成/編集部