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今年7〜9月期の小売・流通業界における転職求人倍率は0.53倍、前期から0.04ポイント上昇

2023.12.09

パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」から、2023年7〜9月期の小売・流通業界の転職求人倍率や転職市場動向をまとめた「業界版doda転職市場動向レポート」が発表された。本稿では、転職求人倍率の動向など概要をお伝えしていく。

2023年7〜9月期の概況/企業の採用難易度はさらに高い状態に

2023年7-9月期の小売・流通業界の転職求人倍率は、0.53倍となった(表1)。また求人数は前期比106.4%、前年同期比142.7%と5期連続で増加し、2019年1-3月の調査開始以来、過去最多を更新した(図1)。

転職希望者数は前期比98.6%、前年同期比111.5%だった。例年7〜8月は、夏季休暇の影響で転職希望者数は減少傾向にあり、今期も前期から微減した。

求人数は増加し、転職希望者は減少したため、転職求人倍率は上昇している。

転職求人倍率は0.53倍と未だに1倍を切り、一見すると買い手市場のように見えるが、小売・流通業界は、他業種への転職を希望する人も多いことから、転職求人倍率以上に採用難易度は高い状況だ。

例えば、転職サービス「doda」のデータでは、2023年1〜6月に転職した小売業界経験者のうち、94%が異業種に転職している。

一方で、小売業界未経験者のうち、小売業界に異業種転職した人の割合はわずか1.8%に留まった。そのため、今後も小売系企業は、人材確保に苦戦する状態が続くと予想される。

2023年7〜9月期の動向/コロナ禍で打撃を受けた鉄道業界は人流回復で人材不足

緊急事態宣言や在宅勤務推奨の影響で急激に利用者が減少するなど、コロナ禍で打撃を受けた鉄道業界。コロナ禍で、企業が新卒・中途ともに採用を控えたことに加え、先行き不安から異業種へ転職する個人も目立ち、業界内のはたらき手はさらに減少した。

今年はコロナが5類に移行し、出社回帰の動きが顕著となり、国内旅行ニーズやインバウンド需要も急回復。結果、人材確保が急務になり、2023年7-9月期の「鉄道業」の求人数は前期比で168%、前年同期比で247%と、大幅に増加した(表2)。

近年相次ぐ新線建設や延伸を受け鉄道業界では、特に電機系技術職の採用ニーズが高い状態だ。

しかしながら電気設備のメンテナンスなどを行う本職種は、専門性や希少性が高く、採用が難航している。そのため企業は、理系学部出身者を対象に未経験採用にまで間口を広げ始めた。

安全な運行に必要不可欠な電機系技術職の採用優先度は高く、今後も入社後の育成を前提とした未経験採用の動きが続くと予想される。

■コンビニエンスストア業界は、エンジニアや商品開発などの専門性が高い即戦力人材の採用にシフト

2023年7〜9月期の「コンビニエンスストア」の求人数は、前期比の増加率が「小売」のなかで最も高く、129%増だった。

また、前年同期比でみても165%増と伸長している(表2)。これには大きく2つの要因が考えられる。

1つ目は、DX推進に伴うIT人材の採用強化だ。コロナ前は、店舗の売り上げ管理やサポートを行うスーパーバイザーの求人が多くみられた。

しかし店舗数が伸び悩み、飽和状態が続いていることから、省人化や業務効率化に重きを置き、即戦力となるIT人材の採用を強化する動きが強まっている。

具体的には、セルフレジなど店舗のオペレーションを効率化させるシステムや、SCM(サプライチェーンマネジメント)・物流の業務効率化につながるシステムを開発・構築するITエンジニアのニーズの高まりが顕著だ。

2つ目は、PB(プライベートブランド)強化のための商品開発部門の増員だ。近年、比較的利益率が高く、他店舗との差別化が図れるPB商品の開発に力を入れることで、顧客体験価値の向上や来店頻度アップを狙う動きが各社で目立ってきた。

そのため、商品開発の経験を有する即戦力人材の確保に力を入れる企業が増加傾向にあるのだ。

しかしながらエンジニアは業界問わず引く手あまた、経験者採用が基本となる商品開発はそもそもの母数が少なく転職市場に出てこない傾向にあることから、採用難易度が非常に高い状態が続いている。

一部の企業では、スキルや経験を有する人材に好条件のオファーを出せるよう人事制度を改定したり、採用ブランディングに力を入れるなどの工夫も見られる。

現時点では未経験採用に間口を広げるなど条件緩和の動きは見られず、今後も即戦力人材を求める状況が続く見込みだ。

関連情報
https://doda.jp/

構成/清水眞希

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