筆者は今、訃報に震えている。
11月25日、三井住友FGの太田純社長が死去した。享年65歳。膵臓癌とのことだが、調べてみたら筆者の母親と同学年ではないか!
あまりに早過ぎる、としか筆者は考えられない。太田社長が送り出した革命的な金融アプリはようやく巷に認識されたばかりで、新ポイントサービスの始動は来年である。
この人物がいなければ、我々の国の「金融近代化」は20年遅れていたに違いない。
パンデミック以前の状況
読者の皆様には、パンデミック前の光景を思い返していただきたい。2019年あたりは「日本はキャッシュレス後進国」と呼ばれ、登場間もないPayPayは「本当に普及するのか?」という見方をされていた。
実は筆者もPayPayが普及するかどうかは確信が持てず、今現在のような自治体がPayPayのポイント還元キャンペーンに参画するということはまったく予想できなかった。
「スマホアプリを使って買い物をする」という概念自体が、今より広く浸透していなかったのだ。
これが首都圏ではない地方都市なら尚更で、クレジットカード以外のキャッシュレス決済を信頼する人が少なかったほど。静岡市在住の筆者は「そんな得体の知れないサービスにお金を預けて、そこが潰れたらどうするの?」と言われたこともある。
銀行や信用金庫には盤石の信頼を置くが、キャッシュレスサービスは全く信じない。そんな状態が続いていた。
それが今では状況がガラリと変わった。これはCOVID-19によるパンデミックも大きなきっかけとして関連しているはずだが、きっかけはあくまでもきっかけである。その機転を利用し、新しい仕組みを整備する人間がいなければ何も起こらない。
あらゆるカードを1枚にまとめた『Olive』
今年3月に登場したモバイル統合型金融サービス『Olive』は、カードとスマホアプリを連携することで「カード1枚に複数の役割」を持たせることに成功した画期的な仕組みだ。
キャッシュカード、ポイントカード、クレジットカード、デビットカードをたった1枚に集約し、アプリでその都度機能を切り替えて活用する。これはカードがナンバーレスだからこそ成せる業でもある。
さらにOliveは、Apple PayやGoogle Payとの紐づけも可能。SBI証券の口座をOliveと連携させることもできる。
あらゆる資産の現況をひとつのアプリで閲覧・管理できるようにしてしまおう、というコンセプトのOlive。これは太田社長会心の一手だった。
巷のキャッシュレス化の加速により、むしろ日頃持ち歩いているクレカやデビットカードが増えてしまったという人は少なくない。決済銘柄の乱立は、そのような問題も引き起こしている。無論、これは日本のみならず世界各国で見られる現象である。
その問題の解消に、Oliveは他に先駆けて乗り出したのだ。