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『精進してまいります』は、目上の人に自分の意気込みを伝えるのにふさわしい表現です。仕事やビジネスはもとより、年賀状のあいさつやスピーチでも使えます。精進の意味や使い方の注意点、言い換え表現などを解説します。
「精進してまいります」とはどんな言葉?
ビジネスシーンや就職・転職活動では、自分の意気込みや決意を示すシーンが多々あります。『精進してまいります』は、一生懸命に努力する気持ちを示せる表現の一つで、相手にプラスの印象を与えます。シチュエーションに応じて適切に使えるよう、言葉の意味を正しく理解しましょう。
■向上心や前向きな決意を示す敬語表現
『精進してまいります』は、ビジネスシーンや学業などでよく使われる敬語表現です。上司や先生といった目上の人に激励の言葉を掛けられた際、「一生懸命頑張ります」「努力します」と答える人がほとんどではないでしょうか?
頑張る・努力するという表現でも問題はありませんが、向上心や前向きな決意を示したいときは、『精進してまいります』を使った方が相手に敬意が伝わります。ビジネスシーンはもちろん、就職・転職活動や新年のあいさつにもふさわしい表現です。
■「精進」の意味
『精進してまいります』の精進は、『精神を集中して一つのことに励む』という意味です。精進には、複数の意味があります。
- 雑念を取り去り、仏道修行に励む
- 一定期間、行いを慎んで心身を清らかに保つ
- 肉を断ち、菜食にする
- 精神を集中して一つのことに励む
精進は仏教用語の一つであり、『勇敢さ』の訳語であるサンスクリット語「virya(ヴィーリヤ)」が語源とされています。『勇者のような気概で仏道を歩む』という本来の意味も覚えておきましょう。
■「まいります」の意味
『まいります』にはいくつかの意味がありますが、よく使われるのは以下の二つです。
- 行く・来るの謙譲語(動詞)
- ~ていく・~てくるの謙譲語(補助動詞)
『謙譲語』とは、自分がへりくだることで相手や話中の人物を立てる敬語表現の一つです。『精進してまいります』の『まいります』は、動詞の後に付いて文法的機能を果たす『補助動詞』で、~ていく・~てくるの謙譲語に当たります。
『精進して参ります』と表記する人もいますが、補助動詞は平仮名表記、動詞は漢字表記とするのが基本です。
- 上司に確認してまいります(補助動詞)
- 私が明日、御社へ参ります(動詞)
「精進してまいります」の使い方
さまざまなシーンで使える使い勝手の良い表現ですが、使う相手とタイミングや頻度を間違えると、相手に違和感を与えてしまいます。正しい使い方と注意点を解説します。
■目上の人に対して使うのが基本
基本的に、部下や後輩といった目下の相手には使いません。自分の意欲や努力をアピールする表現であるため、目上の人やクライアントなどに使うのが基本です。
謙譲語は、自分の立場を低くすることで、相手や話中の人を高める敬語です。上司に「これからも精進してまいります」と言われた部下は、違和感を覚えずにはいられないでしょう。
また、目上の人に対して「精進されていますね」「精進されてください」と表現するのは不適切です。上司を応援するつもりが、上から目線な印象を与えてしまいます。この場合、「ご活躍をお祈りしています」と表現するのが望ましいでしょう。
■使い過ぎには注意が必要
前向きな意欲を伝える表現ではあるものの、使い過ぎると言葉に重みがなくなります。単なる定型句と思われないように、使用する頻度とタイミングに注意しましょう。
また、精進という言葉を使うからには、有言実行を心掛けなければなりません。相手も何らかの行動を期待するため、言葉を裏切らないようにする必要があります。努力をしない・行動を起こさない・結果が出ないという状態が続くと、口先だけと思われてしまうでしょう。
■返答・返信の仕方も覚えておこう
自分の部下や後輩に「精進してまいります」と言われた際は、どのように返答・返信すればよいのでしょうか?
- 何卒、お励みください
- 成功をお祈りいたします
- 良い結果を期待しています
- 陰ながら応援しています
- 全てがうまくいくことを願っています
- プロジェクトのスムーズな進展をお祈りしています
言い方はさまざまですが、相手を応援する気持ちを伝えるのが基本です。相手が直属の部下であれば、「期待しているよ」というニュアンスの言葉を掛けるのもよいでしょう。
「精進してまいります」を使った例文
言葉の意味や使い方のルールを理解したからといって、適切なタイミングですぐに使えるとは限りません。実際の例文を見ながら、『精進してまいります』がどのように使われているのかをチェックしましょう。
■ビジネスシーンで使う場合
ビジネスシーンでは、目上の人に激励されたり、褒められたりした場合に使います。プレゼンテーションの締めに使えば、コミットメントへの意欲をアピールできます。新年のあいさつや年賀状に使っても問題ありません。
<例文>
- これからも初心を忘れずに、日々精進してまいります
- 企画部で得た学びを糧に、さらなる成長を目指して精進してまいります
- 旧年中は大変お世話になりました。今年も精進してまいりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます
『ご指導ご鞭撻』とは、自分を指導してくれる目上の人に対して、『未熟な自分を教え導いてください』という気持ちを示す表現です。
■謝罪で使う場合
仕事のミスやトラブルを謝罪する場面でも使えます。上司やクライアントなどに対し「同じ過ちは二度と繰り返さない」という強い意思と責任感を示せるでしょう。前述の通り、精進するという表現を使うからには、言葉に行動が伴わなければなりません。
<例文>
- 私の不注意で、皆様に大変なご迷惑をおかけしましたことを心からお詫び申し上げます。今後はこのようなことがないように、自らを戒め、精進してまいります
- ご無礼がありましたこと、誠に申し訳ございませんでした。ご指摘を真摯に受け止め、より一層精進してまいります
■履歴書で使う場合
就職・転職活動においては、履歴書の志望動機や自己PRの締めに使われます。志望する会社から内定をもらった際は、内定への感謝と入社への意気込みを伝えましょう。
<例文>
- 貴社の介護職に応募した理由は、前職で培った経験と能力を生かし、入居者により快適なサービスを提供したいと思ったためです。貴社に必要とされる人材になれるよう、自分の強みを生かしながら精進してまいります
- このたびは採用内定の通知をいただきまして、誠にありがとうございます。入社後は、1日でも早く戦力となれるように精進してまいります
「精進してまいります」の言い換え表現
精進してまいりますは、『一生懸命頑張ります』と同じ意味です。ただしビジネスシーンでは、頑張るという言葉がふさわしくないシーンも多いでしょう。相手への敬意が伝わる言い換え表現を紹介します。
■邁進してまいります
『邁進してまいります』は、『精進してまいります』と同じようなシチュエーションで使えますが、邁進(まいしん)と精進には以下のような違いがあります。
- 邁進:恐れずに突き進む
- 精進:一つのことに集中して励む
「ひたすら前に進んでいく!」というやる気をアピールしたいときは、精進よりも邁進の方がふさわしいでしょう。
<例文>
- 弊社では新しいプロジェクトを立ち上げることになりました。過去の成功や慣例にとらわれず、オリジナルのコンテンツを制作するべく邁進してまいります
- このたび、チームの代表に就任した〇〇と申します。AIと人の協働に向けて邁進してまいりますので、ご支援・ご協力のほどよろしくお願いいたします
■努力してまいります
『努力』とは、ある目的を達成するために、力を尽くすことです。精進という表現がやや硬く感じる場面では、『努力してまいります』が適しているでしょう。親しい上司や先輩に対しては、精進よりも努力の方がふさわしいかもしれません。相手やシーンに応じて使い分けましょう。
<例文>
- 〇〇という大役に抜てきしていただき、誠に光栄です。皆さまの期待にお応えできるよう、精いっぱい努力してまいります
- 次回のコンペでは最優秀賞を獲得できるよう、一層努力してまいります
期日を過ぎてしまい大変申し訳ございません。これからはもっと早く仕上げられるように努力してまいります
構成/編集部