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プラチナバンドを手に入れた楽天モバイルはどう変わるのか?

2024.01.17

干渉が問題になる可能性

房野氏:この周波数帯はどこから見つけてきたんですか?

石野氏:ITSという高度交通システムと特定ラジオマイクが使っている周波数帯との間のガードバンド、混信を防ぐためのガードバンドがあるんですけれど、ドコモはそこを削れる、狭くできると指摘したんですよ。そこを削ると、携帯電話で使える部分ができると。

房野氏:電波が干渉する心配がありますよね。

石野氏:干渉がないかどうかのテストで、出力を抑えれば大丈夫だってことになった。

法林氏:免許を与える時に、楽天モバイルに対して「それ以上の出力はダメ」って制限はできるんですよ。その条件で700MHz帯の電波を吹き、1.7GHz帯ではちょっと強めに吹いて、この2つをキャリアアグリゲーションして使う時に、ちゃんとできますってことを、楽天モバイルが3GPPの標準化に当たって、明らかにしていかなきゃいけない。

房野氏:その手続きはキャリアがやるものなんですか?

法林氏:基本的には。

石野氏:まぁ、ほかの海外のキャリアが提案する可能性もある。

法林氏:海外のキャリアが「ウチがやります」って言ったら標準化されるかもしれないけれど、それはちょっとわからない。でも、3MHz幅というのは珍しい周波数帯域の幅だそうで、あまり使われていない。

房野氏:iPhoneは対応できますか?

石野氏:周波数の帯域自体は対応しているので、端末のアップデートなく使えるようにはなるらしいですけれど、うーん……

石川氏:色々と面倒くさいから先送りしたいっていうのが、楽天モバイルの正直なところなんじゃないかな。

石野氏:干渉が1番やっかいですよね。ガードバンドを削って捻出しているので。

房野氏:700MHz帯はプラチナバンドですから、ちゃんとやればつながりやすくなる可能性は大きいですよね。

石野氏:ちゃんとやればというか、逆に電波が飛びすぎちゃうんですよ。飛びすぎて干渉する可能性があるので、出力を抑えなさいという話になっているんです。ただし、基地局側からの出力は楽天モバイルが基地局のパラメータを調整すれば抑えられるんですけれど、端末側からの電波が抑えられないんですよ。遠くの基地局につながろうとすると、端末は勝手に出力を上げるため、周りのITSや特定ラジオ無線局に干渉する可能性がある。なので、端末が強い電波を出ないように、基地局を稠密に配置することが条件になっていて、それもまた面倒くさいというか。

房野氏:基地局までの距離が問題になりそうなんですね。

石野氏:あまり鉄塔で吹いちゃいけないような感じですよね。

房野氏:都市部で細かく基地局を配置する感じでしょうか。

石野氏:今のところの計画だと、そんな感じ。

石川氏:ただし、それはプラチナバンドなのかと言いたくなる。

法林氏:だから、認定式後の囲み取材で、活用方法に対する記者からの質問に答えないっていうスタンスが、ダメなんですよ。もっと遡ると、この3MHz幅は誰が探してきたのかって話もそうだし。

石野氏:第2四半期の決算説明会で、ドコモの井伊社長がついに「自分が探させた」みたいに言っていましたね。「このままだと持っている周波数を獲られちゃうから」みたいに(笑)

株式会社NTTドコモ 代表取締役社長 井伊 基之氏

石川氏:3社としては、周波数を剥がして楽天モバイルに渡さなきゃいけない、その工事費に何千億円も払わなきゃいけないって事態を回避できたので万々歳。

石野氏:井伊さんもにんまりしていましたよ。

房野氏:干渉のリスクがあるってことは、ドコモもわかっていたんですよね?

石野氏:それは当然、わかっていたと思いますよ。でもそこしか空いていなかった。

法林氏:干渉については2.1GHz帯の時もそうだし、PHSのところもそうだし……

石野氏:今の700MHz帯もそうですよね。

法林氏:みんなそうなんです。やっぱり無線通信技術が変わってきている。第二世代のPDC方式を経験した人なら、わかるだろうけれど、当時はケータイから着信音が鳴る数秒前に、近くに置いてあるオーディオ機器のスピーカーがブーンと鳴ってから着信していた。今はそうならないわけで、当然、電波の漏れとか周りの干渉とかの影響は、通信方式が進化すると、どんどん変わってくる。導入してみないとわからない部分はあるけれど、実証試験で色々テストをして、大丈夫ですというところを見つける。一応、ドコモもその情報を出したのかな? 

石野氏:そうですね。試験にはドコモが協力しています。

法林氏:でも、わざわざドコモが他社のために試験してくれるのはなぜ? みたいな疑問がある。

石野氏:ドコモは優しい会社ですねぇ(笑)

房野氏:楽天モバイルに、その技術はあるんですか?

石川氏:いやいや、あったら最初から楽天モバイルがやりますよ。

法林氏:自社のユーザーが移動した時に、どのようにして電波を掴んで、どのようにして通信が可能になるか。効率が良くなるか、電波の掴みが良くなるかっていうことは、楽天モバイル自身がちゃんと研究して、その方向に設定していかなきゃいけない。でも、ちゃんと自社でできるの? って話がある。ローミングエリアの混雑しているところに基地局を建てて、自社エリアに置き換えていく方針なのか、郊外や山間部など、自社エリアの足らないところをカバーするために使うのかと質問した時に、技術陣で検討しますと言うから、「今の段階で検討かよ」って僕は思ったんですよ。

プラチナバンドを獲得しても大変さは変わらない

房野氏:楽天モバイルは、既存の周波数で鉄塔を増やした方が、つながりやすいんじゃないかと思ってしまいますが。

石川氏:1.7GHz帯ではやっぱり限界がある。ビルの中とかでつながらないので、プラチナバンドが必要だということになる。

法林氏:また古い話をすると、第二世代携帯電話の時代、ドコモとau(当時はIDOとDDIセルラー)はビルの中でも結構、つながったんですよ。でも、J-フォンはつながらないことが多かった。ツーカーも建物内は苦戦した。なぜなら、J-フォンやツーカーは1.5GHz帯のみだったから。その後、ツーカーはKDDI傘下になり、吸収合併された。一方、J-フォンはボーダフォンに変わり、ソフトバンクが買収したんだけど、孫さんが「ソフトバンクにプラチナバンドがないのは不公平だ! 割り当ててくれないと……」と大騒ぎしたので、900MHz帯が割り当てられてつながるようになってきたという経緯がある。

ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員 孫 正義氏

房野氏:低い周波数帯を最初から、楽天モバイルに割り当てていれば、もっとつながりやすかったはずですよね。

法林氏:1.7GHz帯の免許を楽天モバイルに割り当てた時に、「1.7GHz帯しかないけれど、それで戦っていけるの?」っていう議論は、『@DIME』のこの会議で散々してきました。でも、楽天モバイルは「大丈夫です」と言い続けてきた。

石川氏:たとえプラチナバンドを持っていても、ちゃんとつながるまで苦労することを一番よくわかっているのが、ソフトバンクの宮川さん。先日の決算会見で「楽天モバイルが希望するなら、ウチの基地局の場所を分けてもいいよ」とか「バックホール回線につないでもいい」と言っていた。

 2012年にソフトバンクがプラチナバンドをもらった時、すぐにつながりやすいネットワークを構築できたかというと、そうでもなかった。細かなチューニングに苦心して、しかもお金をいっぱい使って……3年間で2兆円使って、ようやく今、10年かかって日本でナンバーワンのネットワーク品質になったという感じだと思うので、「プラチナバンドがあったとしても、使いこなすのは大変だよ」っていうのが、宮川さんのコメントの真意だと思います。

房野氏:ソフトバンクが900MHz帯をもらった当初は、どういう施策でしたか?

石川氏:山間部とかルーラルエリア、つながりにくいところに基地局をどんどん建てていった。

房野氏:楽天モバイルの計画には、そういうことは書かれていないんですか?

石川氏:1万局作るとは言っているけれど、それを山間部に置くのか、どこに置くのか……

石野氏:決算で見せた1.7GHz帯の基地局に併設する方法だと、山間部には置けない感じ。

法林氏:無理ですね。

石川氏:そうそう。そもそも山間部に1.7GHz帯の基地局はなさそうだし。置こうと思ったら、ドカーンと高い基地局を建てないといけないし、そうしたらお金がたくさん必要だしって話になる。

法林氏:サービス開始した頃からそうですけれど、楽天の悪い癖で、業界の人や専門メディアが「これ、ダメじゃないですか?」って指摘すると「いや、大丈夫。この方向で正しい」と言うんだけれど、結局、だいたい業界の人が言っている方向に転換せざるを得ない状況になる。

石川氏:僕たちが言っていること、結構当たってますよね?(笑)。500万契約到達は難しいんじゃないかという予想は外しましたけれど。でも、超えたけれど、これからどうなるかわからないしなぁ。

房野氏:楽天モバイルが700MHz帯をもらって、まずやるべきことは何でしょうか。

石川氏:「何もしない」ですよ。

石野氏:今のやり方は正しいとは思いますよ。

房野氏:でも、周波数をもらった意味がないことになりませんか?

石川氏:10年間かけてやればいいんですよ。開設計画上は10年で1万局。

法林氏:四半期ごとにレポートを出せとは言われているけれど……

石野氏:サービス開始は2026年からになっている。

石川氏:できるだけ引っ張る。だって、一応、ネットワークの改善はKDDIでやっているので、それでいいんでしょうって感じですし。唯一、KDDIが対応してくれないトラフィックが多い場所で、どうしてもつながらない場所に関しては自分たちで基地局を打っていくでしょうけれど、それ以外の場所は急いでやる必要は全然ないのかなと思います。

石野氏:KDDIも、トラフィックの多いエリアは、ローミングで貸したくないと言っているようなので。それでローミングの開始が遅れているエリアもあるみたいです。

法林氏:楽天モバイルがサービスを開始した頃、沖縄の県庁前は圏外だった。そこは本来、KDDIがローミング提供する場所だったはずなのに、なぜ貸さないのかをKDDIに聞いたら、「県庁前はトラフィックが混雑するエリアだから貸せないんですよ」という答えだった。今回のローミング協定でも同じような調整があると思う。でも、どちらかというと、楽天モバイルは郊外、ルーラルエリアが弱いとずっと言われ続けている。今はローミングでなんとか逃げ切っているけれど、これをどうするのかな。

……続く!

次回は、楽天「SPU(スーパーポイントアッププログラム)」について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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