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プラチナバンドを手に入れた楽天モバイルはどう変わるのか?

2024.01.17

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、楽天モバイルのプラチナバンド獲得と、各通信キャリアへの影響について会議します。

※房野氏はオンラインにて参加

楽天モバイルの700MHz帯開設計画に突っ込み

房野氏:楽天モバイルに700MHz帯、770MHzから773MHz以下の周波数が割り当てられ、その認定書が授与されました。楽天モバイルがとうとうプラチナバンドを獲得しましたね。

房野氏(※オンラインにて参加)

石野氏:おめでとうございます!

石野氏

石川氏:世間的には、これでつながりやすくなると言われているけれど、とはいえ色々と課題はあるだろうなと思います。ソフトバンクの宮川さんは、先日の第2四半期決算会見で質問した時には「プラチナバンドがあるとないとでは大違い」とおっしゃっていました。3MHz幅あれば全国的にもカバーできるし、それによってネットワーク品質が上がるだろうと。ただし、基地局開設の計画内容が控えめ過ぎるとも言っていた。認定の有効期間10年間で、設備投資額は544億円、それで約1万局建てる、これはありえない話なんじゃないかと、宮川さん、KDDIの髙橋さんが言っている。計算すると1局あたり544万円しか使わないことになるので、それは違うんじゃないかっていう話なんです。

 大手3社と楽天モバイルのプラチナバンドに対する考え方に乖離がある感じがします。大手3社はプラチナバンドの場合、でっかいアンテナを高い所に置いて、一気に広い範囲に電波を吹く。そういうやり方がプラチナバンドの特性を活かせるアンテナ設置だと考えている。だからこそ丈夫な鉄塔やそれなりの場所が必要で、お金がかかるよねって話になる。一方、楽天モバイルは「ウチは今までのアンテナにちょこっと700MHz帯の無線機をつけて、マルチアンテナに変えれば全然OKですよ」という感じの説明をしている。だから設備を置く場所も新たには必要ない、今まで使っている場所を活用すればいいと。「部品の取り替えぐらいだけで済むので、1局当たり500万円ほどで大丈夫です、むしろお釣りがきますよ」という言い方をしている。はてはて、これはどうなんだろうと。

 たぶん、楽天モバイルとしては、すぐには本気でプラチナバンドの基地局を打ってこないと思います。新ローミング契約を結んだKDDIとの関係もあるので、とりあえず今はKDDIに甘えておいて、KDDIが対応してくれないところだけ自分たちで基地局を打ってくる感じにして、極力設備投資を抑えるやり方にするんじゃないのかなと思います。

ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一氏

KDDI株式会社 代表取締役社長 髙橋 誠氏

石川氏

房野氏:ローミングに払う費用と基地局建設、どっちが安いんでしょうか。

石川氏:うーん……

法林氏:期間によるかな。ずっとローミング費用を払い続けていくのは、当然つらいこと。できれば自前でやった方がいいのは明白なんですけれど、自前でやるには当然、お金がかかるので、そこのバランスを考えていると思う。楽天モバイルが携帯電話事業を始める時には、設備投資に6000億円って言ってたっけ。

法林氏

石川氏:そうですね。でも結局1兆円を超えていますから。

法林氏:かなりどんぶり勘定なのは間違いない。ということは、やっぱり今回も2倍くらいかかるよねって思うし、ちょっとしんどいと思う。

 僕は認定式後の囲み取材の時に、どういう風に700MHz帯を活用するのかを楽天モバイルの鈴木和洋代表取締役 共同CEOと矢澤俊介代表取締役社長に質問した。つまり、ルーラルエリアを含めた電波が届かない場所に届けるようにするのか、それともローミングで貸してもらえない、もしくは混雑していて、通信が制限されちゃうところを自分たちで対応するようにするのかとう質問ね。でも、それに対して「それは技術陣が検討します」という回答だった。ちょっとどうかな、ちゃんとわかっているのかなと疑問に思った。

楽天モバイル株式会社 代表取締役社長 矢澤 俊介氏

石川氏:技術陣に聞いても「検討中です」という回答でした。

法林氏:なんだろうな……サービスのバリューを上げるためにプラチナバンドを獲得したように見えてしまうのが、ちょっと残念かな。「このタイミングから、こんな事業展開にします」といった計画を明確に言えないのは、ちょっとマズイって感じがする。

房野氏:今、楽天モバイルって赤字額がだいぶ減ってきたと言われていますよね。

法林氏:でも来年から社債の償還がある。

石川氏:先日の決算発表会では、楽天モバイル単体で黒字化されるのは800万から1000万件ぐらいの契約が取れた時という言い方をしています。直近では月間で20万契約ぐらい伸びているので、そのペースが続けば2024年末ぐらいには達成できるだろうと言っている。

石野氏:社債の償還はキャッシュアウトですけれど、借金を返しているだけなので、赤字、黒字とは関係はないけれど……

法林氏:借金は返さなきゃいけないね。

石野氏:それはもちろん。借金は返さなきゃいけないけれど、営業赤字にはならない。

房野氏:プラチナバンドの基地局に544億円で1万局建てるというのは、数的にはどうなんでしょうか?

石野氏:1万局って少ないんですよ。各社、プラチナバンド1波で全国に6万とか7万局ぐらい持っている。楽天モバイルの計画では、その6分の1とか7分の1ということですよ。石川さんがおっしゃったように、鉄塔を建てるという考え方は、楽天モバイルにはあんまりないような感じはするんですけれど、だったら逆にもっと基地局数が多くなるはず。それなのに少ないので、本当に大丈夫なのかなって、心配になります。

石川氏:そもそも、楽天モバイルはまだトータルでも6万基地局しかない。他社は20万とか30万局ある。とはいえ、他社はソフトバンクでもスマホだけで3000万契約。楽天モバイルは500万契約しかない。持っている周波数帯の幅もかなり違う。楽天モバイルはそもそも、設計がコンパクトなんだろうけれど、ただし、三木谷さん(楽天グループ 会長兼社長 三木谷浩史氏)も言っていたけれど、1000万契約までは今のネットワークで行けるけれど、それを超えると……

楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長最高執行役員 三木谷 浩史氏

石野氏:このペースだと、1000万契約はすぐ超えますよね(笑)

石川氏:まぁ、このまま月間20万件ペースで増えるとは、ちょっと思えない気もするけれど……

法林氏:その前に、グループ他社のサービスでお客さんが減る可能性がある。現に楽天カードをやめる人が今、多いからね。

プラチナバンドは絶好のマーケティング材料

石野氏:ここ1、2年、楽天モバイルはプラチナバンドをあまり稼働させる気はないんだと思うんですよ。決算資料にも、投資の500数十億円は、10年計画のうちの後半に集中するみたいなことが書いてあった。ここ2、3年は、まずローミングだと。しかもローミング契約は更新したばかりなので、ここでまたローミングをやめますって言ったら、KDDIの高橋さんが「おいおい、ちょっと待ってよ」みたいな感じになっちゃう。プラチナバンドを獲れたからといって、急に基地局を打つことはないし、ぶっちゃけKDDIのローミングの方が帯域幅も広い。もちろん、KDDIユーザーとシェアしないといけないので、実質として広いかどうかは微妙なところですけれど、少なくとも5MHz幅あるので、ちゃんと使える。で、対応エリアも特定しているので、そういう意味では3MHz幅の自社のプラチナバンドに頼るつもりは、今はあまりないのかなっていう感じがします。

法林氏:KDDIとのローミング契約を見直すタイミングである2026年までに、基地局を建設するペースを上げられる体制を作りたいという考えだと思います。

石川氏:楽天モバイルはこの1、2年はガンガン営業して、法人客を獲得して、お客さんを増やす方向にしないと。

石野氏:そうですね。だから、プラチナバンドは営業トークの材料というか……

石川氏:「楽天モバイルは、プラチナバンドを持っていますよ」……ってセールスできるので、マーケティング材料としてはめっちゃいい。

法林氏:「人口カバー率99.9%です」と言っている上に、「プラチナバンドを獲得しました」となれば、「つながるか」とみんな思うので。

石野氏:少なくとも最初の2年間はマーケティング要素なんですよ。マーケティング材料としてプラチナバンドと言いたいだけなんですよ。

石川氏:実際にやるのはKDDIのローミング。プラチナバンドの電波を吹いた時に、本当にそれで今まで通りの品質が保てるかというと、微妙だと思う。

石野氏:そう。だって、この契約者数増加ペースだと、2026年には1000万契約を超えているじゃないですか。というか、超えていないとヤバい。ただし、そのユーザー数に対して3MHz幅だと足りないんですよね。

石川氏:NTTドコモの試算だとそれくらいが限界だった。

法林氏:3MHz幅のプラチナバンドと、楽天モバイルが持っている1.7GHz帯を束ねるキャリアアグリゲーションって、まだ3GPP(携帯電話システムの国際標準化仕様を策定する組織)で標準化されていないんだよね。今はまだ束ねられないんですよ。だから、3GPPに対して標準化を提案して、それができる仕組みを作っていく必要がある。まぁ、束ねるだけだったら別にできなくはないだろうけれど、3GPPに定義されてないものはできないので。それもいつになるの? 来年? みたいな話。

石野氏:3GPPでの標準化活動も周波数割当ての条件に入っていましたね。いざとなれば、ドコモ様の力を頼ればなんとかしてくれるんじゃないかな(笑)

法林氏:3社は保有しているプラチナバンドを楽天モバイルに渡したくないから、ドコモが頑張って700MHz帯から3MHz幅を見つけてきたって感じにどうしても見えちゃう(笑)

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