米ハイテク株が繰り広げる壮絶なサバイバルゲーム
■愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
圧倒的なプレゼンスや近年の株高を見るにつけ「盤石」に見えるマグニフィセント・セブンだが、今後も高成長を期待してよいものだろうか。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」といったのはドイツ帝国初代宰相ビスマルクだが、米国株式市場のこれまでの歩みは栄枯盛衰の激しい「壮絶なサバイバルゲーム」の様相を呈している。
■IBMの勃興と衰退
コンピューターの黎明期である1970~80年代、メインフレームと呼ばれる大型コンピューターで世界を席巻したのがIBMだった。IBMはその成長性が評価され、当時「世界で最も尊敬される企業」と言われていたゼネラル・エレクトリック(GE)を株式時価総額で逆転、米国のトップ企業に上り詰めた。しかし、サーバーとパソコン(PC)をネットワークでつなぐクライアントサーバーの時代が到来すると、IBMの株式市場での存在感は急速に低下していた(図表2-1)。
■PC時代の到来とマイクロソフトの台頭
1990年代半ば以降、PCが本格的な普及期に入ると、PCのオペレーティングシステム(OS)で覇権を握ったマイクロソフトとPC向け演算処理半導体(CPU)でトップ企業となったインテルが市場の主役に躍り出る(図表2-2)。
また、1990年代後半のネットバブルの時代には、デジタルネットワーク機器を手掛けるシスコシステムズの株価が一時的に急騰し、並み居る大手企業を時価総額で追い抜き株式市場の主役に躍り出た。しかし、バブル崩壊後に同社株は低迷し、20年以上経っても最高値を更新できず今に至る。
■ゲームチェンジャー「スマホ」の登場
PC全盛の時代に市場を席巻したマイクロソフトやインテルだったが、「盤石」に見えた彼らの地位もけっして安泰ではなかった。2007年のiPhone登場をきっかけに、インターネット接続の主役がPCからスマートフォンへ移行すると、この2社は市場の主役の座から引きずりおろされることとなる。そして、アップルがハイテク株の主役の座に上り詰め今に至る(図表2-3)。
■プラットフォーマーの時代を揺さぶるAI革命
そして、2010年代半ば以降は、モバイル通信の速度向上とデータトラフィックの爆発的な増加から、検索エンジン、地図検索、通販、SNSなどのサービスを通じてビッグデータを押さえたGAFAが、プラットフォーマーとして君臨するようになる。
しかし、2022年に入ると、社名まで変えてメタバースへの巨額投資に走った旧フェイスブックはその戦略が投資家から疑問視され、株価は一時大きく下落した。また、2022年後半に生成AIブームが始まると、それまでAI開発で世界の最先端を走っていたはずのアルファベットは、気づけばチャットGPT擁するマイクロソフト・オープンAI連合に出し抜かれた格好となり、株価の面でもマイクロソフトなどに大きく水をあけられている。
■サバゲーで消えた猛者たちの共通点
こうした米国株式市場の栄枯盛衰、壮絶なサバイバルゲームを巻き起こしてきたのは、(1)テクノロジーの進化、(2)堅牢だったはずのビジネスモデルの経年劣化、そして、(3)成功体験や組織の肥大化・複雑化による自滅、といったところだろうか。そう考えると、今は圧倒的な存在感を誇るマグニフィセント・セブンについて、今後も例外的に繁栄を謳歌し続けると期待するのは、危険な賭けかもしれない。
グローバル小型成長株投資の世界
売上が1年で約3倍になったエヌビディアと比べると、今期減収減益予想のアップルなどGAFAの成長性には一時の勢いは感じられない。そうしたGAFAだが、企業としてここまで成長する過程では「青春」とも呼ぶべき株価急騰の時代があった。
1990年以降、GAFAの12カ月の株価騰落率が100%を超えた月は、アルファベットで7カ月、アップルで41カ月、メタで13カ月、アマゾンで45カ月あった。そして、こうした株価急騰局面は、一部の例外を除き上場間もない時期や、時価総額がまだ小さかった時期に集中している(図表3)。