世界三大広告賞ほか、国内外20以上のアワードを受賞した電通トップコピーライターの荒木俊哉さんは、「仕事ができる人とは、瞬時に言語化できる人である」と言う。
この言語化力とは、「どう言うか」ではなく、「何を言うか」という力であり、必要な時に必要な言葉が出てくるようになる力のことだと荒木さんは主張し、このほど独自の言語化力向上のメソッドを「瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。」(SBクリエイティブ刊、定価1650円)にまとめている。
コミュニケーション力と言語化力の違い
同じ伝えるという技術において、コミュニケーション力と言語化力は大きな違いがあると荒木さんは新刊書で述べている。そしてコミュニケーション本を読んでも、言語化力は身に付かないとも書いている。
「世の中のコミュニケーションの本のほとんどは、すでに言語化された言葉をどう言うかという、伝え方のスキルを学ぶ本です。
つまり、伝え方とは自分の言いたい言語化した後の工程のスキルなのです。いくら料理の調理法を学んだところで食材そのものの質を高めることはできないのと同じで、後工程である伝え方のスキルをいくら学んでも、前工程の言語化の問題は解決できないのです」と、言語化力こそが大切だと主張している。
言語化力は言う「内容を言葉にする力」のことなので、伝え方ばかり学んでも言語化力は身に付かない。荒木さんの言葉にハッとさせられる人は多いはず。確かに私たちは上手に伝えようとばかり考えていて、何を言うべきか、という点を見失っていたかもしれない。
どう言うかではなく何を言うかが求められる
荒木さんによると、何らかの意見を求められた時、緊張してたどたどしい答えになってしまったとしても、相手はその点において失望することはないと言う。なぜなら、上手な話し方を楽しみにしているわけではないからで、相手が求めているのはあなたが何を言うか、あなたの意見を楽しみにしているからだと言う。
人の心を打つのは、何を言うかといった内容である。薄っぺらい内容をいくら上手に伝えたところで、相手は瞬時に内容の薄さを感じてしまう。どんな稚拙な伝え方であっても、その人らしい意見や視点が含まれていれば、相手は必ず心を打たれるだろう。
ただしこの相手が求めている内容であるオリジナルな意見や、言いたいことを的確に言葉にすることは、ほんとうに難しい。同じ様に、会議で「どう思う?」と聞かれても、うまく答えられなかった人は多いだろう。
面接でその会社への「思い」を、うまく言葉にできなかった体験を持つ人や、企画書作成時に、ぼんやりとしたイメージはあるのに、いい言葉が思いつかないという体験がある人は、言語化力を高めるべき人だと荒木さんはアドバイスしている。